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輸出入規制品目を事前に確認するための調査手順

目次
はじめに:なぜ輸出入規制品目の事前調査が重要なのか
製造業において調達購買や国際取引を担当されている皆様にとって、輸出入規制品目の調査は避けて通れない業務のひとつです。
経済安全保障やグローバルサプライチェーンの複雑化が進む現代において、知らずに違反すれば多額の罰金や企業活動の停止といった重大なリスクを伴います。
特に、昭和の時代から続くアナログな業界風土の中では、「なんとなく以前も大丈夫だった」「通関業者に任せればいい」といった思い込みが根強く残っていますが、この油断が今や大きな落とし穴となります。
本記事では、20年以上にわたり製造業の現場で調達〜管理職を経験した著者が、現場の肌感覚を加味した上で、バイヤー・サプライヤー双方に役立つ輸出入規制品目の調査手順を実践目線で詳しく解説します。
輸出入規制品目調査の具体的な手順
1. 輸出入に関連する法規制を俯瞰する
まず最初に、日本国内外で適用される輸出入規制の全体像を整理することが重要です。
主な法規制としては、
– 外国為替及び外国貿易法(外為法)
– 輸出貿易管理令/輸入貿易管理令
– ワッセナー・アレンジメント等の国際レジーム
– 化学物質に関するREACH規制やRoHS指令
– 特定国との経済制裁・制限措置
が挙げられます。
製品や部品によっては複数の規制が重複適用されるケースもありますので、抜け漏れのない網羅的なチェックが求められます。
2. HSコード(統計品目番号)での分類:社内品目情報の整理が肝
多くの規制は、HSコード(Harmonized System code)を基準に適用されています。
したがって、輸出入予定の物品の
– 機能
– 材質
– 用途
に応じて、正確なHSコードを割り出すことが最優先です。
この作業には、財務省・税関の「輸出統計品目表」や「タリフ」「輸入関税率表」などの一次情報を活用し、時には型式図面や仕様書を添えて詳細な製品情報を整理しましょう。
社内に長年の暗黙知で流通している品番や呼称が、HSコード分類と齟齬しやすい点にも注意が必要です。
3. 規制該否性判定:通関士頼み、業者丸投げは危険
品目ごとに、以下の観点で規制該否を確認します。
– 外為法の「キャッチオール規制」対象か
– 輸入・輸出承認を要する品目か(技術・ソフトウェア含む)
– 特殊材料や化合物、軍事転用可能性の有無
– 定められた認可・許可が必要かどうか
外部の通関業者や専門家に「お任せ」したい気持ちも分かりますが、最終的な責任は自社に残ります。
見落としがちなポイントとして、過去には問題なかった品目でも、法改正やリスト更新によって規制対象となるケースも多いため、都度最新情報をチェックする姿勢が肝要です。
4. サプライヤー・顧客との情報連携とデータ管理
現場の調達では、サプライヤーに「対象外でしょうか」と安易に伝えてはいませんか?
多くのサプライヤーもまた正しい知識を持たず「ウチは問題ありません」と返答しがちです。
真に輸出入規制へのコンプライアンスを徹底するには、バイヤー自らが製品の仕様と規制該否を確認し、サプライヤーと
– 仕様情報の資料化・記録
– リスト更新時の定期レビュー
– 万一の違反時の連携手順
等を合意形成しておく必要があります。
IT化が遅れている業界では、エクセル管理や紙書類の流用が根強いですが、昨今のサプライチェーンリスクに備えた見える化・電子化の仕組み化も必須となっています。
5. グローバル動向・最新事例を踏まえたアップデートの必要性
輸出入規制は、国際情勢や政変、国際合意によって日々アップデートされます。
特に、半導体や先端素材・バッテリー関連部材などは、中国・米国・EU等で法改正や新たな制裁・輸出管理が頻発しています。
そのため、経産省・財務省の公式サイトやJAPAN External Trade Organization(JETRO)、各国の税関当局の最新発表にも目を通し、自社としてタイムリーな情報アップデート体制を整えることが競争力維持の鍵となります。
6. 現場目線での注意点と“昭和的落とし穴”
筆者が長年現場で体験してきた課題として、「誰かが何とかしてくれるだろう」「前任担当がOKだった」のような属人的な対応が大きなリスクです。
法規制違反は、サプライヤーも巻き込んでペナルティ・信用失墜に繋がるため、
– 標準化された調査フローのマニュアル化
– 変更履歴の管理
– 品目ごとの危険度ランク付け・優先業務化
の3点を徹底しましょう。
また、「すでに輸出・輸入実績がある品目だから大丈夫」と安易に思い込まず、
– リストの定期的な棚卸
– 監査部門との情報共有
– 法改正時の臨時確認会議
などの工夫も非常に有効です。
バイヤー、サプライヤー双方が意識すべきポイント
バイヤーの心得:能動的な情報収集とベンダーマネジメント
バイヤーは、自社のみならずサプライヤーにも規制情報の遵守を促すベンダーマネジメント力が必要です。
単なる“御用聞き”ではなく、自社の責任が問われる場面を常に意識し、
– 契約書に規制該否に関する表明保証条項を盛り込む
– 不明事項を積極的に行政・専門機関に相談する
– グローバル調達の場合は、現地法制もカバーした体制づくり
といった対応が、今や基本となっています。
サプライヤーの視点:バイヤーの本音と期待を知る
サプライヤー側は「規制対象品目について問われると面倒だ」と感じるかもしれません。
しかし、現実には
– 正確な情報開示
– 規制改定時の早期連絡
– 記録管理の体制明示
をバイヤー側は強く求めています。
そこで、
– 製品ごとのHSコード・規制該否一覧表の整備
– 仕様変更時の速やかな通知
– 品質保証部門・法務部門との社内連携
など、付加価値の高いサプライヤーとなることで、他社との差別化や、継続的な取引強化に繋がります。
現場実践で活きる調査例・ケーススタディ
化学品の調達・輸出時に起こりがちな事例
たとえば、ある工場で新規に調達する樹脂成型用の添加剤がありました。
過去に日本国内で流通実績があるとのことで、担当者はそのまま輸入を進めようとしましたが、実際には国外製造メーカーの製法変更により、一部の成分が新たに国際規制対象物に該当していたことが発覚しました。
工場出荷直前で発覚し、現場は大混乱。
このようなケースは、化学業界では特に多く、リスクを未然に察知するためには、品目仕様書・SDS(安全データシート)の最新バージョン取得、メーカーへの直接確認、「何がどう変わったのか」を常にフォローアップする姿勢が欠かせません。
電子部品・半導体分野での規制事例
また、半導体機器や電子部品の場合、軍事転用可能性(デュアルユース)規制に対する審査が厳しくなっています。
たとえば、一般的な抵抗器やコンデンサ、ICチップでも、規格の閾値や用途次第で急に規制対象になることも。
設計部門〜調達購買までが密に情報連携し、「どのようなスペックだと条項に該当するのか」を社内で勉強会するなど、組織としての知見蓄積も重要なポイントです。
まとめ:安全・効率的な国際調達を実現するために
輸出入規制品目の調査は、常に現場と法規、そして国際動向の三位一体で考えるべき課題です。
– 古い慣習のまま放置せず
– 自ら法規制動向をウォッチし
– サプライヤー・顧客と双方向の信頼関係を築き
– データ・証跡をしっかり記録管理する
この地道な積み重ねが、今後グローバル競争で生き残るメーカー・バイヤーの条件となります。
昭和の時代から続く「なんとなく」「丸投げ」から脱却し、全員が高い業界水準でコンプライアンスを実践する新たな地平線をともに切り開いていきましょう。
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