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電子部品のBOM標準化で共通抵抗値とフットプリントを統一する手順

目次
はじめに:なぜ電子部品のBOM標準化が必要なのか
電子部品を扱う製造業現場では、BOM(部品表)の標準化が近年ますます重要視されています。
部品の共通化やフットプリント(パターン設計)の統一がなされていないと、調達も生産も、さらには品質管理の各プロセスでも無駄や混乱が生じがちです。
特にアナログ思考が今なお根強い昭和型の現場では、「昔から使っていたから」「前例がないから」といった理由で、BOM標準化への取り組みが遅れがちというのが実情です。
この記事では、電子部品のBOM標準化について、共通抵抗値やフットプリント統一の具体的な手順やメリット、現場で起こりがちな課題とその解決法に至るまで、20年以上現場に身を置いた管理職の視点から解説します。
BOM標準化のメリットと業界トレンド
コスト削減と調達リスクの低減
BOM標準化の最たるメリットはコストダウンと調達リスク低減にあります。
同じ規格の抵抗、コンデンサ、ICなどを設計段階から多くの機種で共通化することで、購入量をまとめられ、価格交渉力が上がります。
また、市場で汎用的に入手しやすい部品に絞り込めば、特定メーカーや型番が入手困難になっても代替調達がスムーズです。サプライチェーン混乱の影響を抑え、不測の在庫不足を未然に防げます。
有事の生産柔軟性・後工程の効率化
標準化された部品・フットプリントは、急な工程変更や短納期への対応をしやすくします。
現場担当者によるアドホックな判断や“裏技”運用が減り、量産ラインの切替えや棚卸も圧倒的に楽になります。
さらに部品共通化が進むことで「標準治具化」「標準工程化」も容易になり、生産・検査・品質管理それぞれで歩留まり向上や工数削減、人手不足への対応にもつながります。
世界的なDX・デジタル化とBOM標準化の関係
近年、デジタル製造(スマートファクトリー)、PLM(Product Lifecycle Management)、ERPといった統合システムの普及により、BOMデータのデジタル化や標準ID化が求められる流れが加速しています。
グローバル調達時や業者間連携でも標準化されたBOMは必須であり、アナログなExcel管理や「現場の勘頼り」から抜け出すためにも、いまこそBOM標準化への本腰が求められています。
手順1:BOM現状の「洗い出し」と課題の可視化
既存BOMの全数棚卸を実施する
まず、自社で使われているBOM(部品表)を全機種・全製品でリストアップし、ExcelやPLMシステムで一元管理します。
どのような型番・抵抗値・フットプリントが、どの設計で使われているのかを明確にしましょう。
このとき、現場に眠る“運用ルール”や現物主義の台帳も漏らさず調査することが重要です。
特に古い製品や過去に流用した設計に、不思議な型番や非標準値の部品が混ざっていないか注意が必要です。
バイヤーと現場技術者による課題意識の共有
購買部門、設計部門、生産技術部門が合同でBOMの「増殖」や「個別最適」の実態を認識します。
どの部品で型番乱立が起きていて、なぜその指定に至ったのか、設計者のこだわりや過去トラブルの経緯もヒアリングしてください。
この事前すり合わせが、標準化推進のための現場納得感につながります。
手順2:標準抵抗値・フットプリントの基準策定
IEC推奨のE24やE96など、用途による絞込み
抵抗やコンデンサの値は、「Eシリーズ」で定められた一定間隔の標準値に集約するのが世界的な流れです。
例えば、細かい精度を要しない回路はE24(24種類)、高精度回路はE96(96種類)といった具合に、用途別に分けて標準値を会社で決めましょう。
ここで大切なのが、頭ごなしに細分化を禁じるのではなく、「なぜその値が必要か」を現場ヒアリングした上で合理的な範囲で決めることです。
パターン統一・フットプリント規格の社内基準作り
部品サイズやフットプリントも、JISやIPC規格、メーカー推奨寸法に基づき、「社内標準」としてカタログ化します。
(例:抵抗・1608チップ、コンデンサ・2012のみ、スルーホールは廃止)
この標準フットプリントは、設計ルールとしてCADツールに登録し、新規回路設計時のチェックリストに組み込むことで、後工程での逸脱防止につながります。
標準部品リスト(アローワンス表)の運用
選定された値・フットプリントを一覧化し、BOMテンプレートやPLMシステム上でも選択できる形にしておきます。
標準外値が必要な場合は「設計技術部・バイヤー・品質管理」で承認フローを作り、例外管理を徹底しましょう。
手順3:BOM・設計CAD・調達システムの連携強化
Excel台帳からの脱却とマスター一元化
これまで個別設計ごとにバラバラだったBOM管理を、PLMシステムや自社データベース上に集約します。
設計・調達・生産・検査部門それぞれが参照するため、「正しいBOM」が常に最新版で全社共有される状態にします。
設計CADと調達システムの自動連携
回路設計CADや基板パターンEDAから、そのままBOM出力ができるよう標準部品ライブラリを整備します。
その上で、購買システム(SAPなどERP)や生産管理システムと自動連携することで、「設計→調達→生産」の一貫性が確保され、誰もが迷わないフローが出来上がります。
製品ライフサイクル全体での効率化
BOM標準化は新製品立ち上げ時だけでなく、設計変更や廃型製品管理にも効力を発揮します。
設計変更の際、「どの他機種に影響が波及するか」もPLM上で一目瞭然になるため、設計・購買の連携ミスや手配漏れをシャットアウトできます。
よくある現場の課題とその解決法
現場「設計者のこだわり」による抵抗値乱立
多くの設計者は「最適解」を求め、ついマニアックな抵抗値や独自パターンを選びたがります。
これにより部品点数や在庫管理の負荷が増大します。
この場合、「標準外を使うなら技術室長承認」「量産試作段階まで標準値試用」など部門横断ルールを作ることで乱立を防ぎます。
生産現場の“昔ながら”主義による反発
「前がこうだったから」「今さら変えても手順が面倒」
こうした現場の抵抗感には、「標準化で工数短縮・人員削減できた実績」を逐次フィードバックし、現場メリットを見せることが大切です。
また、生産や調達の負荷データを「見える化」し、工場長や事業責任者レベルで数字をもって納得してもらうとよいでしょう。
サプライヤー(取引先)との共通化ギャップ
自社だけで標準化を進めても、サプライヤーに伝わっていないと調達効果が半減します。
調達先との技術懇談会を定例で開き、「標準フットプリント一覧」「要求スペック」「今後の変更予定」を共有し、Win-Winを図ることが大切です。
バイヤー・サプライヤー双方から見たBOM標準化
バイヤー視点の戦略的BOM標準化
自社の設計・製造コストダウンはもちろん、共通化されたBOMがあればサプライヤー選定にも広い選択肢が持てます。
安定調達や長期供給契約の土台にもなりますし、リードタイム短縮・グローバル購買の推進にも有利に働きます。
サプライヤー側が知るべきメーカーの本音と備え
サプライヤー側としても、メーカーがどこまでBOM統一を進めているか、標準フットプリントや値の更新予定がどこにあるかを常にキャッチアップしましょう。
時代遅れの部品仕様や自社設計に固執せず、汎用部品や最新規格へのシフトを積極的に提案できるかどうかが、良好な取引関係継続の鍵となります。
まとめ:BOM標準化を本気で推し進めるために
BOM標準化は単なる購買コスト削減策ではなく、DX時代の製造業全体最適プロジェクトです。
アナログの伝統を打破しつつ、現場の納得と利便性も担保するため、「現状の見える化→立場横断の合意形成→デジタル一元管理→継続的な見直しサイクル」を回すことが成功のポイントです。
部品点数共通化やフットプリント統一は、「今だけ・現場だけ」ではなく、自社とサプライヤー双方で持続的成長を目指すための第一歩となります。
製造業に携わる皆様、ぜひ貴社に合ったBOM標準化の推進に一歩踏み出してみてください。
現場発信の変革で、次の世代の製造業を共につくりあげていきましょう。
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