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一見安定していても突然不良が出る工程特性

目次
はじめに:製造業が抱える「突然の不良」というリスク
製造業の現場では、工程を安定化させて不良品を極力ゼロに近づける努力が日々続けられています。
しかし、「普段は順調だったのに、なぜか突然不良が出る」。
このような“工程特性”に悩まされた経験は、どの現場責任者にも少なからずあるはずです。
特に昭和から続くアナログ的な現場運営や、改善・改革が進みにくい風土では、この現象が根強く残っています。
本記事では、工場長・QC責任者・バイヤー・サプライヤーなど多面的な立場で経験してきたからこそ見えてきた「突発的な不良の工程特性」に焦点をあて、現場目線かつラテラルシンキング(水平思考)でその真因と対策を掘り下げていきます。
工程特性とは何か?
表面上の安定性と内在的リスク
製造現場では、安定した生産を維持するために作業標準やQC工程表が整備されています。
しかし、これらの文書化されたルールや管理基準がきちんと守られていても、「見かけ上安定」しているだけで、本当の意味で工程が安定しているとは限りません。
突発的な不良発生という現象は、多くの場合、表面化しにくい“内在的なリスク”が積み重なった結果として現れます。
本質的に工程が持つ「揺らぎ」
生産工程には、材料のロット差や、作業者の手技の違い、機械の経年変化など、定量化しきれない微細な変動=「揺らぎ」が常に存在しています。
管理図や工程能力指数だけで“安定している”と判断するのは、本質的なリスクを見過ごす危険性があるのです。
「突然の不良」が出る典型的なパターン
1. 投入される材料や部品の見えにくい変化
たとえば同じ規格の材料でも、仕入先の製造バッチや季節によるわずかな性質の違いが、工程の微妙なバランスを崩すトリガーになるケースがあります。
特にグローバルサプライチェーンになって以降、「品質規格の自動判定」だけでは分からないローカルな癖が、不意に工程に現れるケースが多発しています。
2. 作業者交代時のナレッジギャップ
長年同じ現場で働くベテラン作業者は「勘」と「経験知」で工程の微妙な異常を察知しています。
しかし、交代勤務や人材流動化が進み、習熟度がまだ十分でないメンバーに交代した時、その“阿吽の呼吸”が伝承されないと、不良品が突然表面化することがあります。
3. 設備の隠れた劣化・突発故障
IoTなどの自動化ツールが進んでも、人の目や感覚に頼っている点はまだ多く残っています。
設備のわずかなガタや劣化を検知する前触れが見逃され、不良がまとめて発生するという事例は後を絶ちません。
この“前兆の見逃し”が、工程特性を読み違える大きな原因にもなります。
4. 標準書「外」のむずかしさ
標準作業・標準値はあくまで「平常時」を想定していますが、気候や環境の変化、イレギュラーな納期短縮、「現場の応用判断」が求められる場面で人為的なミスや手順逸脱が生じやすくなります。
昭和的現場文化と現代のギャップ
なぜ“見過ごし”が起こるのか
現場が古くからの「職人気質」に根ざしている場合、口伝や身ぶり手ぶりで暗黙知が伝承されていることが多いです。
この文化は悪いことばかりではありませんが、「マニュアルどおりで動かない部分」「管理項目に上がってこないノウハウ」という形になって工程内に埋もれてしまいがちです。
また、現場で不良が出ても、報告をためらったり、小さいトラブルとして処理しがちな風土も根強く残っています。
この“隠れたリスク”に対する過信が、突然の不良という形で現れやすくなるのです。
デジタル化の限界とアナログ現場の強み
いくらデジタル監視や自動データ収集システムを導入しても、「取りだすべき現場情報」そのものが分かっていなければ、本質的な工程安定化にはつながりません。
ベテラン作業者の“感覚の補正”や“気付き”が、データでは見抜けない微細な変化・予兆をいち早く捉えていた例も多いのです。
バイヤー/サプライヤーそれぞれの目線から考える「工程特性リスク」
バイヤーからサプライヤーへの期待
バイヤーとして現場に携わった経験から言えば、「普段は安定しているが、年に数回突然大きな不良を出す」という工程は、購買先の評価や安定調達上の最大のリスクになります。
査察や源流監査時には「工程能力」「特性値」「標準化手順」は当然見ますが、それ以上に「どのように現場の変動(揺らぎ)を把握し、前兆や予兆を拾っているか」という運用面を重視する傾向が高まっています。
つまり、「工程をいかになだらかに保つか」をサプライヤー自らが説明し対策できる文化が、いま最も求められています。
サプライヤーとしての自己変革のポイント
サプライヤー側から見ると、「工程に潜む突発不良の芽」を棚卸しし、“突然の揺らぎ”を最小化する努力をアピールできるかどうかが信頼に直結します。
このため「チョコ停分析」や「ヒヤリハット事例の水平展開」「ヒューマンエラーの記録・共有」など、工程を見える化し、不具合や変調の前兆を組織ぐるみで検知する仕組み作りが不可欠です。
昭和風の“隠す・なかったことにする”風土から、“率先して課題を開示し、顧客と共に改善に取り組む”姿勢への転換が競争力の源泉となります。
現場で本当に効果を出すための具体的対策
1. 工程の見える化・棚卸し
すべての工程を、材料投入から最終検査まで「あるがまま」に分解し、どこで変動が起きているかを徹底して可視化します。
紙の帳票に頼らず、「異常と感じたらすぐ報告できる」現場ツール(アンドン、報告アプリ等)の導入も有効です。
2. 小集団活動の再活性化
QCサークルやKPT(ふりかえり)を再評価し、現場作業者の気付きやナレッジを日常的に集める仕組みを作ります。
一見手間に見えますが、「なぜ不良が突然出るのか?」を“みんなで深堀りする”活動が、問題発生の予兆をいち早く捉える鍵になります。
3. データと人間の感覚の融合
IoTデータやAI異常検知なども活用しつつ、実際の作業現場での「五感的違和感」も同時に記録・分析することで、両者の強みを最大化しましょう。
ラテラルシンキング的な棚卸し、たとえば「この音がいつもと違う」「この部品が微妙に重い気がする」といった小さな気付きこそ、根本要因解決の突破口になります。
4. 多能工・クロストレーニングの推進
「いつも同じ作業者が同じ工程」だけだと、長年の“慣れ”で異変に気付かない場合も。
定期的なローテーションや多能工教育を進め、工程間の“気付き”と“相互監視”の回路を生み出しておくことも大事です。
まとめ:工程の「突然の不良」を根本から断つために
一見安定して見える工程でも、材料・作業者・設備・標準書「外」の影響や、昭和的職人文化、組織としての情報共有の限界など、さまざまな“揺らぎの源泉”が潜んでいます。
これらを「工程特性の不可視リスク」として捉えなおし、実データ・現場感覚・ナレッジの融合、そして率直な情報開示と課題共有文化の醸成が、今後の製造業に不可欠です。
特にサプライヤーは、バイヤーに対し「工程安定化の現実的アプローチ」を明示できることが、サプライヤー評価や長期的信頼関係につながります。
現場と管理部門の双方がスクラムを組み、「突然の不良の本当の姿」を深く掘り下げること。
製造業の更なる進化と日本ものづくりの再生には、この基本的かつ本質的なアプローチこそが求められているのです。
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