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微細穴加工を放電に切替え工具折損と再段取りを抑える工程設計

目次
はじめに:微細穴加工の課題と放電加工の台頭
製造業において、微細穴加工は精密部品や電子デバイスなど、高付加価値製品の製造プロセスに欠かせない工程となっています。
従来、この分野では超硬ドリルやレーザー加工といった手法が幅広く用いられてきましたが、工具折損や再段取りの頻発、加工品質の安定化という課題を抱えてきました。
そんな中、アナログ的なノウハウが根強く残る製造業界でも「放電加工(EDM:Electrical Discharge Machining)」への切り替えが注目を集めています。
この記事では、微細穴加工における工具折損や再段取りの問題点、放電加工の工程設計に際してのポイント、現場目線の実践的なノウハウ、そして今後の業界動向まで、深く考察していきます。
微細穴加工における従来の手法と課題
超硬ドリルによる微細穴加工の限界
伝統的な微細穴加工では、直径0.1mm未満の超硬ドリルを用いるケースが主流です。
これらのドリルは、高い位置決め精度が求められるため、NCフライス、さらにはマイクロCNCマシニングセンタなどが使われてきました。
しかしながら、以下のような課題が現場を悩ませ続けてきました。
・工具の折損リスクが極めて高い
・被削材により工具摩耗速度が大きく変動し、加工条件の最適化が困難
・工具交換や再段取りに手間がかかり段取り替え時間が増大
・バリ発生や加工面粗さ、入口・出口の寸法精度にばらつきが生じやすい
特に、生産数量が多い現場や、1つの製品で数百箇所の微細穴を一度にあける場合など、工具寿命・段取り効率がダイレクトに原価や納期に影響し、歩留まりや加工ラインの稼働効率にも悪影響を及ぼしてきたのです。
レーザー加工の現実的なデメリット
微細穴加工における新たな切り札としてレーザー加工も導入が拡大してきました。
しかし熱影響層による微細な歪み、バリ生成、材料選択の制約、設備コストの高さといった障壁が残り、マスプロダクションや多品種少量の現場では依然として超硬ドリルの比率が高いのが実態です。
放電加工への切り替えがもたらすメリット
非接触ゆえの工具折損リスク低減
放電加工は、工具とワークの間に微細な放電を発生させ、溶融・除去する方式です。
機械的な押し付け力を使わない“非接触加工”であるため、工具が極端に細くても折損リスクが劇的に低減できるという大きな特徴があります。
これにより、従来では頻繁に発生していた
・深穴加工時の工具寸切れ
・運転中の工具寿命確認や折損リカバリー
・突発的な段取り替え
といった現場課題が大幅に改善できます。
再段取り工数の大幅削減
工具折損が少ないということは、段取り替えの頻度が減少し、生産計画が安定化することを意味します。
また自動工具交換(A.T.C)やパレットチェンジャーとの親和性も高く、24時間無人運転や多品種同時加工の比重を増やす上でも放電加工は大きな武器になります。
複雑形状・高アスペクト比穴にも適用可能
放電加工は工具と穴形状が一致し、異形状電極を作れば楕円穴や溝なども一発加工が可能です。
また深穴(高アスペクト比)の微細穴も高精度に短時間で空けることができ、バリや熱影響層、ワーク変形の心配も大きく軽減されます。
放電加工による微細穴加工の工程設計ポイント
1.電極材・形状選定のセオリー
放電加工で微細穴を空けるには、電極自体を細く加工する必要があり、電極材としては主に銅タングステン、真鍮、グラファイトなどが用いられます。
電極径が細いほど剛性が落ち、電極の消耗も増えるため、必要最小サイズの見極めや加工深さとのバランス検討が不可欠です。
ワーク材との相性や、連続使用の消耗変動もカギとなります。
2.加工条件の詳細設計と自動化ノウハウ
放電加工は従来「職人技」が色濃く残る分野でしたが、昨今のNC化、自動放電タイミング選択、電流・パルス条件の自動最適化技術の進展で、標準化が進んできた分野でもあります。
特に現場での生産性を高めるためには
・加工電圧
・パルス幅
・通電間隔
・加工液(絶縁油や自動循環仕様)
など、複数のパラメーターをワーク材や穴径ごとに事前検証し、「標準条件マトリクス」を作り込む仕組みが現場力の差となります。
また、加工液の交換時期やろ過状態の定量管理、放電カーボンの沈殿による加工精度低下への予防保全も重要です。
3.冶具・段取り設計による再現性向上
アナログ的な要素ですが、ワーク固定冶具の工夫による芯ブレやワーク歪み抑止、リファレンスポジションの明確化が量産現場では必須です。
従来の機械加工冶具とは異なり、放電加工では絶縁設計や液流設計、電極の自動アライメント(芯出し補正)など、冶具そのものも現場独自のノウハウ蓄積が進んでいます。
現場目線で見た「最適な工程設計」へのアプローチ
品質部門・バイヤーとの連携強化が重要
微細穴加工の最終品質は、設計部門や品質保証部門が定める図面精度をクリアするだけでなく、量産時の安定性やバリ対策も求められます。
放電加工への切替え時は、必ず「初品検討」を事前に実施し、不良解析と工程能力指数(Cp、Cpk)などを用いて、客観データを社内・顧客と共有できるかが生産現場の説得力となります。
また、サプライヤー側の立場で言えば、現場限定の加工ノウハウや標準条件マトリクス、トラブル時の原因分析ロジックもオープンにすることで、顧客バイヤーとの信頼関係が格段に高まります。
コスト・納期競争力の確立と新しい商機
工具折損・再段取りコストが激減することで、人件費・間接費の削減、設備稼働率の飛躍的向上、工程リードタイムの短縮といった多面的な恩恵が生まれます。
ただし、電極作成や放電設備の初期投資、新規立ち上げ時のパラメータ出しといった“先行投資”を上手く工場経営者へ説明する仕組みも必要です。
単なる「コストダウン」だけでなく、24時間自動化運転による短納期受注や、多品種小ロット対応の柔軟性により、他社との差別化、新規商談獲得にもつながります。
昭和からの脱却:アナログ現場力とDXの融合
日本の製造業には、長年の現場オペレーターの技能や小技が息づいています。
放電加工も例外ではなく、「工具の先端仕上げ」「最適繰返し条件の勘どころ」「材料ロットごとの微差対応」など、アナログ作業が根強く残ります。
一方、IoT対応設備の普及や、AIを活用した最適条件探索システムの導入により、これら熟練のノウハウをデータ化し、工程設計全体をDX(デジタルトランスフォーメーション)する動きも加速しています。
現場で養われた「暗黙知」を可視化し、標準条件DBや技術伝承に活用することが、今後の業界動向のカギとなります。
サプライヤー・バイヤーの視点:放電加工への切り替え交渉術
サプライヤーの立場では「なぜ放電加工に切り替えるのか?」という投資判断や顧客先(バイヤー)への提案力が求められます。
例えば、
・従来手法ではコスト安定化や品質歩留まりに限界がある
・放電加工により部品窓口の集中化、品質管理体制の一本化が可能
・短納期・多品種対応がしやすくなり、受注範囲が拡大できる
といった打ち出しが有効です。
一方、バイヤーの立場からは、サプライヤー任せにせず、工程毎の実力値(不良率・加工公差・コスト分析)をデータで確認し、メタルマネジメントや原価低減の観点からも「放電加工プロセス」の妥当性を見極める力が現場力向上につながります。
まとめ:微細穴加工の進化と製造業の未来
微細穴加工における放電加工の切り替えは、単なる技術革新ではありません。
昭和から続くアナログ工程の知恵と、デジタルによる標準化・自動化の双方を融合させ、工具折損・再段取りという“現場痛点”を根本から解決する、新しい地平線を開拓する取り組みなのです。
これから製造業に携わる方、現場改善を志すバイヤーや管理職の方、自社の技術を差別化したいサプライヤーの皆さん。
現場で観察し、試行錯誤を重ね、アナログとDXの良さを抱き合わせて“実践的な工程設計”に踏み出すこと。
それが、激変する製造業の新時代を生き抜く最大の武器になるはずです。
放電加工を活用した微細穴加工の未来に、今こそ注目してみてはいかがでしょうか。
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