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購買担当者が押さえるべき部品共通化の推進プロセス

目次
はじめに:なぜ今「部品共通化」が重要なのか?
製造業において部品共通化は、コスト削減やリードタイム短縮、在庫最適化など、さまざまなメリットをもたらす施策として注目されています。
特に現在の日本のものづくりは、昭和時代から続くカスタム化・多品種少量生産の伝統を引きずっており、「似ているが微妙に違う部品」「一人一設計の文化」から脱却できずに悩む企業も少なくありません。
そのため、現場の購買担当者やバイヤー、サプライヤーとしては、部品共通化の推進による抜本的な業務変革が求められています。
本記事では、製造業の現場で20年以上の経験を持つ筆者が、実体験を交えながら、購買担当者目線で部品共通化推進のプロセスとポイントをわかりやすく解説します。
部品共通化とは何か?基本をおさらい
部品共通化の定義
部品共通化とは、複数の製品や製品バリエーションにおいて、同一仕様の部品や材料を採用し、設計段階から標準化を図ることです。
単なるコスト削減のための「安い部品使いまわし」ではなく、「設計・調達・生産・品質・保守」の各プロセスが一気通貫するための考え方が根底にあります。
アナログ文化が部品共通化を妨げる現実
多くの工場現場では、「その案件、その設計者だけの部品仕様」が氾濫しており、同じ用途でもネジ一本、コネクタ一つにわずかな違いが発生しています。
過剰品質や長年の慣習、前任者の踏襲文化は根強く残っており、資料保管や図面管理が紙ベース、台帳ベースの会社では、部品共通化の議論も進みにくい傾向があります。
部品共通化推進のメリットとインパクト
コストダウン効果
部品共通化の最も分かりやすいメリットは、スケールメリット(複数部門や部品調達を一元化することでの一括購入によるコストダウン)です。
発注ロット増大による値引き交渉、在庫保管・管理コスト削減、購買管理工数の圧縮が可能となります。
リードタイム短縮と安定調達
一品ごとの個別仕様は、都度サプライヤー確認や設計手戻りのリスクが高まります。
共通部品であれば一度基礎検証と共有化認定を通せば、その後の調達サイクルが短縮でき、部品不足や緊急手配のリスクが軽減できます。
品質安定とトレーサビリティ向上
部品点数が絞られ、設計変更も低減することで、不具合対応(返品・改修・リワーク)やクレーム時の解析もスピーディになります。
また共通部品ごとに不良傾向やトレーサビリティが管理しやすくなります。
設計・生産面での省力化
共通部品なら設計検証工数・生産ラインの切り替え、治具や工具の共用など省人化、省工数化が期待できます。
設計者が安心して使える「承認済み部品リスト(AVL)」があれば、設計段階での再検討が減り、流用設計も増やせます。
購買担当者が押さえるべき共通化推進プロセス
1. 共通化推進チームの結成と役割明確化
購買だけで部品共通化を推進するのは困難です。
設計・開発、調達、品質、製造、現場工員までを巻き込んだクロスファンクショナルチームを結成し、それぞれの立場に応じたKPI・業務フローを明確化しましょう。
2. 現状の部品リスト洗い出しと「見える化」
自社のどの製品に、どんな部品(型番・メーカー・スペック)が使われているか一覧化し、同形状・同機能の「仕様違い品」「類似品」を洗い出します。
部品情報を紙やエクセルで管理している場合、まずはデジタル化、データベース化が大きな一歩です。
3. 「共通化候補部品」の抽出と経営層への提案
部品ごとの使用頻度、コスト比率、切替リスク(代替時の設計変更要否や品質認証の有無)などを一覧し、どこまで共通化できるのかを検討します。
特に大量使用の消耗部品、手配に時間がかかる特殊部品などを優先し、経営層にもメリット・インパクトを数字で伝えられる資料を作りましょう。
4. サプライヤーとの連携強化・仕様調整
共通部品候補が決まれば、主要サプライヤー(仕入先)と密接にコミュニケーションを取ります。
「価格交渉」「供給安定化シナリオ」「バックアップ体制」だけでなく、設計スペックの標準化(材質・寸法・加工バラツキ範囲など)も早めに調整します。
5. 社内外での共通部品承認・切替プロセスの透明化
共通部品の運用ルール(承認番号付与、設計部門との協議ポイント、購買による調達システム登録など)を明確にし、ドキュメント化します。
サプライヤーが変わる場合や海外との共通化では、品質管理部門と連携した「納入前検査」「評価レポート」も必須です。
部品共通化の成功事例から学ぶ
ケース1:中堅電機メーカーでの「ねじ規格統合」
従来、同じ用途にM4、M5、M6の3つの規格ネジが混在し、「適合しない場合の現場調整」「余剰在庫の山」が問題でした。
購買担当者主導で全製品ラインナップを洗い直し、「M5規格」に統一した結果、購入金額単価は15%ダウン、現場トラブル激減、年100万円規模の工数削減が実現しました。
ケース2:自動車部品の「端子・コネクタ統一」
車両ごと、顧客ごとに微妙に異なる端子・コネクタ仕様だったが、大手サプライヤーと早期から規格協議を行い、「標準プラットフォーム」を構築。
設計段階から“この範囲ならば共通部品で設計可能”というガイドラインを設け、調達・設計工数削減、生産現場の仕掛品低減に成功しました。
部品共通化推進の現場で直面する「壁」とその突破法
「設計部門からの抵抗」
「既存図面の変更が面倒」「最適設計ができなくなる」という声は根強いです。
これには、共通化の目的(コスト削減や納期確保が新たな設計・開発リソースを生み、事業拡大に繋がる)を具体的な数字と一緒に説明することが大切です。
「業界特有の“踏襲文化”」
“昔からこの部品だから”“前任者が決めた仕様だから”という慣習は、まだ多くの現場で続いています。
トップダウンでの「共通化推進宣言」とともに、現場担当の小さな成功事例(例:一つのコネクタを50%共通化できた、など)を積み上げて横展開するアプローチが効果的です。
「サプライヤーとの情報開示・交渉難航」
価格面やリードタイム短縮など目先の利益ばかり追求すると、サプライヤー側も“リスクある案件”“追加原価が発生する案件”として共通化に及び腰になるケースもあります。
調達・購買担当者は“Win-Win”を徹底し、「共通化された分の発注ボリューム保証」「定期的な品質会合」など、サプライヤーにとってもメリットとなる提案をセットで進めることが肝心です。
アナログ業界の変革と未来の「部品共通化」
IoTやAI、自動化が進む中でも、部品の「在庫がどこにあるか分からない」「紙台帳が物置に眠っている」といったアナログ的な悩みは根強いです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は“単なるシステム導入”ではなく、共通化と標準化、情報の一元管理があって初めて成果を生みます。
これからは設計・購買・サプライヤーが「デジタルデータ」を通じて状況を“見える化”し、時代に合った最適調達・調達リスク低減を実現することが必須となっています。
まとめ:購買担当者が道を開く、部品共通化の推進
部品共通化は単なるコストダウン手法ではなく、企業全体の「業務改革」「品質向上」「調達リスク低減」をもたらす強力な“未来投資”です。
購買担当者は、現場の見識と数字を武器に、全社部門やサプライヤーを巻き込んだプロジェクトリーダーとなることが求められます。
昭和から続くアナログ的“現場文化”を活かしつつも、デジタル・グローバルな時代に適応できる「新しい仕組みづくり」の担い手こそが、これからのバイヤーやサプライヤーに求められる資質です。
今こそ、自社の「部品棚」から、業界の「未来標準化」へ。どの企業でも始められる“はじめの一歩”を、現場から行動で示していきましょう。
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