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ショットブラスト装置で使う吸音材固定部材の加工と脱落リスク

目次
はじめに:ショットブラスト装置と吸音材固定部材の意義
ショットブラスト装置は、金属加工や表面処理の現場で欠かせない生産設備です。
そのなかで、装置内部に取り付けられる吸音材は、従業員の作業環境を左右する重要な役割を担っています。
なぜなら、ショットブラスト装置は極めて大きな騒音を発生させるため、その騒音を低減する吸音材の有無が作業効率や労働安全衛生に直結するからです。
こうした吸音材を装置の内部に固定する際に用いられるのが「吸音材固定部材」です。
ところが、吸音材や固定部材は、加工や設計に問題があれば簡単に『脱落リスク』が顕在化し、重大なトラブルや生産停止につながる場合も珍しくありません。
本稿では、昭和から令和に至るまで続くアナログな現場感覚や業界動向も踏まえながら、吸音材固定部材の加工プロセスと脱落リスク、その対策まで解説します。
製造業でバイヤーを目指す方や、サプライヤーの立場でバイヤー視点を身につけたい方にも実践的な学びが得られる記事を目指します。
なぜ吸音材固定部材は重要なのか
ショットブラスト装置の騒音は90dBを超えることも珍しくなく、
吸音材を内部にしっかり固定しておかないと、装置の稼働環境は悪化します。
仮に固定部材が緩みや脱落を起こせば、稼働中の装置内で吸音材が剥離し、ワークやショット材の通路を塞ぐ「異物混入」のリスクが生じます。
この状態ではラインが停止し、復旧まで多大な時間とコストを要します。
また、安全面への影響も大きく、脱落した部材や吸音材の一部が作業員の作業エリアに落下すれば重大な労働災害につながるケースもあります。
バイヤーや現場リーダーが「なぜ吸音材固定部材の選定や管理に時間とコストをかけるのか」を正しく理解することは、設備信頼性や安全性を守るファーストステップです。
ショットブラスト装置に求められる吸音材固定部材の要件
耐衝撃・耐振動性
ショットブラスト装置の内部は、金属粒(ショット)が高速度で飛び交う極めて過酷な環境です。
このため、吸音材そのものだけでなく、その固定部材自体にも優れた耐衝撃性や耐振動性、耐摩耗性が求められます。
高温・湿潤・粉塵対応
ブラスト装置内部は高温多湿、さらに粉塵も多い厳しい環境です。
固定部材の素材選びにあたっては、錆や腐食、熱変形を防げる材質を選定する必要があります。
簡便なメンテナンス性と交換性
工場の生産性を維持するためには、吸音材の交換や修理作業を短時間で済ませることも重要です。
各種固定部材の着脱のしやすさや、汎用部品の活用はコスト面とダウンタイム最小化の両立に繋がります。
代表的な吸音材固定部材の種類とその加工方法
ねじ・ボルト固定
最もオーソドックスな方式が、ねじやボルトを使った機械的締結です。
ベース材や装置にねじ穴やインサートを設け、吸音材を金具で押さえつけます。
メリットは脱落防止効果の高さと、圧着力による確実な固定。
デメリットは取り付け工数の多さ、定期的な締め直しの必要性です。
加工では吸音材や装置壁面に正確な位置決めと下穴加工、耐蝕材(ステンレスなど)の選定が重要。
近年はゆるみ止めのためのロックワッシャーやナイロンナットの需要も高まっています。
リベット・ピン止め
装置側にリベットやピンを一定間隔で打ち込み、吸音材をワンタッチで固定できる方式です。
大量の部材を素早く取り付ける現場に適しています。
加工ポイントは、リベットの頭径と吸音材の厚み・材質のマッチング、装置側への穴位置精度です。
万が一リベットが脱落した際、装置への悪影響が大きくなるため、品質管理は特に厳しく求められます。
マグネット・両面テープ方式
一部のメンテナンス重視の現場では、着脱の容易さを重視して強力マグネットや工業用両面テープが使われることもあります。
ただし、これは振動や高温下での経時劣化・脱落リスクが高いため、本格的な稼働ラインでは推奨されません。
一時的な仮設や改修工程での利用にとどめるべきでしょう。
現場目線で警戒すべき吸音材脱落のリスクとその兆候
筆者が工場長や現場品質管理の立ち位置で数多く経験してきたのは、「吸音材やその固定部材の脱落トラブルは意外なタイミングで発生する」という事実です。
たとえば、稼働開始から半年から1年を過ぎた頃、微細な振動の繰り返しや熱サイクルによりネジの緩みが進みます。
また、装置メンテナンス時に素材疲労の兆候を見逃すことで、予定外の停止や製品への異物混入事故が起きやすくなります。
現場目線で特に注意すべき兆候は以下のとおりです。
- 稼働時の異音や音量変化(吸音材の一部が浮いたサイン)
- 装置内部点検時の金具類の浮き・欠け・腐食
- メンテナンス後のボルト締め忘れやナット緩みの放置
- 吸音材設置部の埃・粉塵のたまり方の異常
現場では、こうした小さな兆候も見逃さず、予防保全・事前対応を徹底することが重要です。
脱落リスク低減のためのベストプラクティス
設計段階でのリスク潰し込み
ベテランバイヤーや装置エンジニアの多くは、設計段階から脱落リスクを徹底的に洗い出します。
例えば、ボルトの規格や本数の適正評価、揺れや微振動の伝達経路の予測、部材取付方向の制約事項など、あらゆる想定を事前に図面に反映させます。
また、昨今はFMEA(故障モード影響解析)を導入し、リスク評価を定量化する動きも拡大しています。
こうした設計面での「段階検証」や「再設計サイクル」を惜しまない姿勢は、脱落リスクの根本対策に繋がります。
現場目線での二重締結・ダブルチェック
昭和の時代から続くアナログ的手法とはいえ、「最後は現場の目と手が主役」なのは今も変わりません。
現場教育では、必ず2人以上でのダブルチェックを習慣化し、取り付け後のねじ・ボルト締め付けトルクの再測定、ワッシャーやナットの緩み留め剤の採用を徹底します。
こうした地道な確認作業こそが、最終的には大事故回避に直結します。
AI・IoT活用によるモニタリングの革新
現代ではIoTセンサーや画像解析AIを装置内部に設置し、固定部材の状態監視や振動・異音検知による予兆保全が進化しています。
ただし、コストや保全体制の問題で全面導入が難しい現実もあるため、既存のアナログ点検とデジタル技術の両輪活用が現実的な選択になります。
バイヤー目線での「踏み込んだ」調達管理のコツ
次に、これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーがバイヤー思考を把握するうえで知っておきたい、吸音材固定部材の選定・管理のポイントを紹介します。
現場ヒアリングと購入仕様書の落とし込み
部材調達にあたって最も重要なのは「現場のニーズを徹底的にヒアリングし、購入仕様書に的確に反映させること」です。
現場側が経験から得たトラブル情報や、実際の取付工数、現場作業者のスキルレベルを調達仕様で見える化し、サプライヤーにもリアルな現場環境を説明できる調達担当は、現場から非常に信頼されます。
サプライヤーと一体化した工程管理
単なる価格交渉や納期管理だけでなく、サプライヤー工場の加工現場にも足を運び、加工精度・検査体制・物流方法まで自ら確認することで、初めて「業界目線の品質保証」となります。
特に、脱落リスクをコスト要因だけでなく「現場のブランド価値」や「納入先工場での評価」にまで紐付けて考えられることが、脱アナログ発想への第一歩です。
まとめ:現場・バイヤー・サプライヤーが目指すべき理想像
ショットブラスト装置で使う吸音材固定部材の選定や管理には、設計~調達~製造現場~アフターメンテまで一貫した現場目線とリスクマネジメント意識が欠かせません。
昭和時代から脈々と受け継がれる現場力、平成で進化した予防保全、令和に求められるデジタル活用。
全てを繋ぐのは「現場ファースト」の姿勢です。
バイヤーを目指す方や、サプライヤーの立場からバイヤー思考を学びたい方は、ぜひ『現場の小さな声に耳を傾け、五感でトラブルの兆候を感じ取る』ことからはじめてください。
そこにこそ、長期的な信頼とブランド力強化のヒントが眠っています。
吸音材固定部材の加工と脱落リスクを対策し続けることは、製造現場の価値向上にも繋がります。
時代の変化を恐れず、現場知と新技術を融合し、更なる高みを目指しましょう。