投稿日:2025年12月24日

コンプレッサーで使うオイルフィルタ部材の加工と圧損問題

はじめに:製造現場とコンプレッサーの深い関係

製造業の現場において、コンプレッサーは欠かすことのできない動力源です。

押し寄せる業務効率化や省力化、さらには省エネルギーやグリーンファクトリーの推進。
こうした社会的な要請の中、どの工場でもコンプレッサーにまつわる品質やコスト、メンテンナンスの問題解決が求められています。

その心臓部ともいえるのがオイルフィルタ部材です。

このオイルフィルタ部材の加工方法や圧損問題に現場としてどのように向き合い、これからの製造現場をどのように変革していけるのか。

この記事では、20年以上にわたる製造現場、調達品質管理の最前線で得た経験をもとに、現場目線かつ業界の本音で解説します。

コンプレッサーとオイルフィルタ部材の役割を再確認

コンプレッサーの基礎知識と役割

コンプレッサーは圧縮空気を作り出す機械です。

加工機やロボット、空気工具など幅広い用途で利用される工場の命綱です。

その安定稼働と省エネを実現するため、内部への異物混入やオイルの品質保持が非常に重要となります。

オイルフィルタの機能と重要性

オイルフィルタは、圧縮機内部に循環する潤滑油の中から不純物や金属粉、カーボンなどをろ過し、機械の損傷や性能低下を防ぐための部品です。

ろ過性能が落ちると、潤滑不良や焼き付き、エネルギーロス、さらにはダウンタイムの増加にも直結します。

オイルフィルタ部材は、単なる消耗品ではなく“工場全体のQ(品質)・C(コスト)・D(納期)”を支える重要な戦略アイテムなのです。

昭和から続くオイルフィルタ部材の加工現場と課題

業界の伝統とアナログな現場感

実はオイルフィルタ部材の多くは、今なお昭和時代から進化途上のままアナログな生産現場で作られています。

たとえば、ろ材(フィルタエレメント)を裁断・成形し、樹脂ケースや金属カバーに組み込む工程は、国内外ともに作業者の熟練技に依存している現場が非常に多いです。

JIS規格やISOの認証はあっても、加工ばらつきや工程異常を未然に吸い上げる現場力が品質の肝となっており、設計要件と現場現実は決してイコールではありません。

部材ハンドリングと圧損問題の“あるある”

フィルタ部材の加工現場では、ろ材繊維の特性やプリーツ(ひだ)の均一性、エンドキャップやシール材の選択といった細かいノウハウが圧損性能に直結します。

たとえば、圧力損失(圧損)は、現場での微細な部材のクセや加工条件で大きく振れるため、同じ型番でもロットによる性能バラツキが発生します。

また、コストダウンを追い求めて安価な材料や簡略化した成形プロセスを選択すると、一時的に利益は上がるものの、結果的に“圧損増大によるエネルギー消費の増加”や、“寿命の短縮”が慢性的な悪循環を生みます。

圧損低減こそが最大のコストダウン、バイヤーや現場が知っておくべきこと

圧損(差圧)とは何か、なぜ問題なのか

圧損とは、オイルがフィルタを通過する際に失われる圧力差を意味します。

この圧損が大きいほど、コンプレッサーは余分なエネルギーでオイルを循環させる必要があるため、電力量・運転コストに直結します。

圧損が一定値を超えればフィルタが目詰まりや劣化とみなされ交換が推奨されるため、圧損抑制=省エネ=トータルコストダウンとなるわけです。

バイヤー・サプライヤー双方が理解すべき“隠れ原価”

フィルタ自体の仕入価格ばかりに目を向けると、見落としがちな“トータルコスト”が圧損には隠れています。

例えば、圧損がわずか10kPa高いだけで年間何十万円ものエネルギー損失となるケースも珍しくありません。

フィルタの“調達コスト”と“運用コスト”“ダウンタイムリスク”まで踏まえてサプライヤー評価や投資判断を行うべきです。

また、サプライヤー側も「圧損抑制のための加工管理」や「標準化された品質保証体制」のアピールが競争力となります。

現場で使える実践ノウハウ:オイルフィルタ部材の加工改善と圧損対策

1. ろ材選択・プリーツ加工の最適化

ろ材選定にあたっては、繊維径・目付・材料グレード(セルロース、グラスファイバー、合成繊維など)を単独評価するのではなく、圧損・保持力・寿命を総合してベストバランスを設計します。

プリーツ加工では、深さや間隔の均一化、適正な樹脂/金属エンドキャップとの接合技術が重要です。

ここを現場で“見える化”し、ばらつき要因を継続的に絞り込む活動を徹底しましょう。

2. 加工現場の品質×コスト意識改革

加工現場では、「とにかく生産数を稼ぐ」から「品質・圧損のばらつきを潰し込む」姿勢への変革が求められます。

不良率をゼロにすることではなく、「どこで、どの程度工程変動が圧損や品質に影響するのか」をデータで把握し改善する。

古い手作業工程であっても、5Sやポカヨケ、工程内検査の導入を地道にやり切ることで、見えないコストとクレームを先手で封じる仕組みがつくれます。

3. 圧損の見える化・KPI管理の導入

組立後のフィルタには、必ずロット毎に圧損試験(差圧測定)を行い、規格外ロットの流出を止めます。

圧損トレンドをKPIとして毎月/毎週レビューし、不良要因・原材料ロット・設備メンテ状況と結び付けて管理するのが鍵です。

一見アナログに見える現場でも、簡単な測定治具やエクセル集計+グラフ化だけで大きな品質改善につながります。

業界トレンド:省エネ指向とサプライチェーン変革の波

エネルギーマネジメント社会へと進化

近年、グリーンファクトリーやSDGs指向の高まりから、工場全体のエネルギーマネジメントが淘汰圧となっています。

コンプレッサーだけで工場消費電力の2−3割を占める例もあり、省エネ型オイルフィルタの採用・交換サイクル自動提案システムなどが拡大中です。

デジタル化とIoTの波

従来アナログだったフィルタの圧損監視も、近年はIoTセンサや無線通信による見える化が加速しています。

現場担当者やバイヤーがリアルタイムで“圧損レベル”を把握し、適切なロット管理・交換タイミングを判断することで、計画保全とムダな交換費用削減が実現できます。

バイヤー/サプライヤー目線での今後の提案 ―これからの製造業のために―

バイヤー視点:数値データに基づく比較とサプライヤー選定

これからのバイヤーに求められるのは、現場現実を見据えた「圧損の数値管理」と、「コスト全体観点でのサプライヤー選択」です。

サプライヤーから“ろ材性能試験データ”や“標準圧損実績”を開示させ、過去クレームや対応力も含めて総合的に評価しましょう。

サプライヤー視点:差別化ポイントとデジタル化対応の強化

サプライヤーは単純な価格競争ではなく、“低圧損・高寿命の技術力”“IoT/デジタル監視への対応力”“リードタイム短縮”といった差別化を推進することで、新たな取引拡大につなげることが肝要です。

まとめ:昭和のアナログから“最適な圧損管理“へ、製造業の未来を開く

オイルフィルタ部材の世界は、いまだ昭和のスピリッツが息づくアナログな現場に根ざしています。

しかし圧損低減を軸に、きめ細かな現場管理やデジタル活用を進めることこそ、今後の製造業の成長と利益創造のカギとなります。

バイヤーもサプライヤーも、目先の仕入価格だけでなく、「現場の実情」と「全体最適の観点」を持つこと。

まずは自社のオイルフィルタ部材の現状把握と圧損管理を見直し、現場にしか気付けない“新たな改善の種”を一緒に掘り起こしていきましょう。

このアナログとデジタル、現場と理論が融合する領域こそ、これからの製造業の勝ち筋です。

現場力が、必ず会社を、そして業界の未来を変えてゆきます。

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