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インドのエネルギー分野における製品・システム調達と現地製造方法

目次
はじめに
インドは21世紀に入って急激な経済成長を遂げ、今や世界有数の工業国として存在感を高めています。
とりわけエネルギー分野への投資・注目は著しく、再生可能エネルギーや送配電などのインフラ整備が積極的に推進されています。
そんなインド市場で製品やシステムの安定調達や現地製造・供給体制を構築することは、多くの日本メーカーやサプライヤー、バイヤーにとって喫緊のテーマです。
本記事では、20年以上の製造業経験と現場知見をもとに、インドのエネルギー分野への製品・システム調達や現地製造の要点や実践的方法について深掘りして解説します。
昭和的な日本のアナログ商慣習がいまだ業界の根幹に残るなか、現地企業とどう連携するのか、日本企業に最適なアプローチとは何か、そして今後のサプライチェーン戦略の方向性についても現場目線で考えていきます。
インドエネルギー分野の市場概要と業界動向
エネルギー需要と政府政策のトレンド
近年のインド経済発展を支える基盤としてエネルギーインフラへの需要は右肩上がりです。
都市化の進展や産業の活性化に伴い、電力消費は増加の一途をたどっています。
また、インド政府は「Make in India」や「Atmanirbhar Bharat(自立したインド)」といった政策のもと、国内製造業の振興とサプライチェーンの高度化を目指しています。
再生可能エネルギー(太陽光・風力など)は今や国家戦略の最重要テーマであり、2023年度までに450GWの再生可能エネルギー導入を目指すなど、非常に野心的な目標が掲げられています。
注目すべき分野とプレイヤー
電力インフラ(送配電、変電、監視制御)や再生エネルギー発電設備、BESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)、SCADA(監視制御・データ収集システム)、EMS(エネルギー管理システム)など、設備・システム需要が拡大しています。
地場大手(Tata、Adani、Reliance)や外資系(Siemens、GE、ABB、日本電気メーカー各社)などが連携しながら巨大プロジェクトを手掛け、新規参入バイヤーやサプライヤーにとっても大きな商機があります。
インドでの製品・システム調達の実務
ローカライゼーションと調達先開拓の現状
インド政府は現地調達比率(Local Content)の義務付けを強化しています。
たとえば、大型電力案件では、製品・システムの30%〜50%以上の現地調達を入札条件にする例が大半です。
このため、日本や欧米メーカーも単なる輸出から、現地部材の調達や現地工場でのアセンブリに動いています。
すでに現地部品メーカーやEMS(電子機器受託製造)企業のネットワークは堅固で、高付加価値品もインド国内で入手可能な場合が増えています。
調達現場で気をつけるべきポイント
インドの調達商慣習は、日本の“昭和的”なサプライヤー・バイヤー関係とはかなり異なります。
価格交渉は粘り強く、納期や仕様も柔軟性が求められることが多いです。
信頼関係の構築には時間がかかることもあり、単価・品質だけでなく、現場レベルでの“人”のつながりが非常に重視されます。
公式文書よりも現場担当者同士の口約束やその場の合意がモノをいうのは、ある意味昭和時代の日本の現場文化に近い部分も残っています。
現地製造(ローカル化)を成功させる戦略
インド現地化の3ステップアプローチ
1. コア部品は日本から・一般部品は現地で
最初の段階では、品質や信頼性が求められるコア部品(制御モジュール、独自設計部品)だけを日本や第三国から供給し、一般的な板金・電装部品や配線は現地調達とする方式です。
併せて現地工場での最終アセンブリ・試験を行い、現地化率を段階的に引き上げることで政府や顧客要求にもスムーズに対応できます。
2. キープロセスの移管と現地人材育成
特定機能・品質管理・自動化ラインなど、切替に慎重さが求められるプロセスは、日本本社技術者が手厚くサポートする「技術伝承型」で段階的に現地移管していきます。
現地作業者への教育・トレーニングはマニュアル化だけでなく、OJTや“カイゼン活動”の導入、ローカルマネージャーの権限強化などで現地力を磨きます。
3. サプライチェーンのエコシステム化
部品・素材メーカーから物流・検査・OEM/ODMまで現地ネットワーク化し「産業エコシステム」を構築することで、リスクの分散とコスト削減、特急対応・柔軟生産を実現します。
地場サプライヤーとフェアで粘りある交渉を繰り返すことが、現地密着型メーカーとしての信用に繋がります。
現地オペレーションとコミュニケーションの工夫
インドの工場・サプライヤー開拓では、現地特有の掟を理解することが重要です。
例えば祝祭日は多め・気候変動による納期遅延リスク・地方による文化差・法規制のハードルなど、現場目線で事前に織り込み対応を考えておく必要があります。
また、英語が通じるとはいえ、実際はヒンディー語や各州のローカル言語で“現場力”が問われることもあります。
定期的な現地面談、工程立会い、ワークショップ型QA活動など、物理的な“現場の顔出し”は非常に大きな効果をもたらします。
昭和から抜け出せない日本型調達vs.インディアン・サプライチェーンの真実
属人的調達・ハンコ文化の功罪
日本の昭和型調達は、属人的ネットワークとトップダウン(決裁書・稟議・ハンコ)の文化が今なお根強く残っています。
インド企業はパートナーシップ志向が強く、先輩・知人の紹介や地元人脈、現場担当レベルでの「飲みニケーション」が取引関係構築に多大な影響を与えることが多いです。
日本メーカーがこうした“昭和的文脈”を理解しきれずに短期契約や厳しすぎる品質・納期優先主義を押し付けると、かえって現地側からの印象が悪化してしまうリスクすらあります。
情報共有とサプライヤー育成のあり方
インドには「知識と技術を共有すれば、共に伸びる」という協働精神があります。
よって、単なるサプライヤー管理ではなく、情報とノウハウを積極的にオープンにし、工場監査や改善事例を共有し合うカルチャーが非常に重要です。
バイヤー主導の一方的査定型から「相互学習型サプライチェーン」への転換が、インドでの現地化推進には不可欠となるでしょう。
日本メーカー・サプライヤー・現地バイヤーへの実践アドバイス
「現場感覚」と「推進力」の両立
インドでの調達・現地製造を成功させるには、以下の2点が要です。
1. 徹底した現場主義
実際に現地で工場を見て、ラインの動きや作業者の反応、日常会話や管理の雰囲気にまで目を凝らし、実態から問題点や改善点を積極的に拾い上げてPDCAを回します。
2. ラテラルシンキングによる解決力
「現地サプライヤーの品質が低いから使えない」とあきらめず、「では、日本の現場ならどうやって品質を引き上げてきたか」「どんな支援があれば現地も伸ばせるか」と水平思考でアプローチしてみましょう。
密接なやり取りの中で、一歩踏み込んだ“共創”の芽が必ず生まれます。
バイヤー志望者やサプライヤー必見:求められる新しい人材像
「英語力」と「現場コミット力」が必須であるのはもちろんのこと、「カイゼン活動に熱心」「現地流でも臨機応変」「ファシリテーター型リーダー」が、これからのインド調達の最前線で強く求められます。
インド市場は常に人手と柔軟性の勝負。
理屈だけでなく“現場で汗をかける”バイヤーが、どの企業でも評価されキャリアを積んでいくことでしょう。
まとめ:今こそ、現場目線でインド調達・現地製造に挑もう
インドのエネルギー分野で圧倒的な競争力を発揮するためには、単なるコスト優先や日本流の押し付けではなく、現地コミュニケーションと改善指導を徹底し、共創サプライチェーンを作り上げることが重要です。
昭和の良さも活かしつつ、一歩先行く柔軟で進取の気風をもって、今後のインド市場で日本メーカー・サプライヤーが新たな歴史を築くことを心より期待しています。
既存の調達スタイルに安住せず、ぜひ現場でラテラルシンキングの力を実践してみてください。
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