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日本サプライヤーの余剰在庫活用でコストを下げる調達アプローチ

目次
はじめに:日本サプライヤーの「余剰在庫」に注目すべき理由
製造業の調達購買を長く担当してきた現場経験から、コストダウンは常に最大のテーマです。
従来型の価格交渉や発注ロットの最適化、海外調達へのシフトだけでなく、もっと「見落とされやすい」コストダウン余地がサプライヤーの余剰在庫に存在します。
昭和から根強く残る「もったいない精神」と、日本固有のサプライチェーンの習慣が生み出す余剰在庫は、バイヤー・調達担当者にとって、実は大きなコスト削減の可能性を秘めた資源です。
この記事では、余剰在庫活用によるコスト低減の実践的アプローチ、その際に知っておきたいバイヤー心理やサプライヤー側の視点、アナログ文化の中での成功ポイントまで、現場に根差した知見で深堀りします。
日本の製造業・サプライヤーに眠る余剰在庫の実態
「買いきり」「作り置き」が生む在庫問題
多くのサプライヤーでは、
・顧客ごとにスペックが異なるのに共通材料をまとめ発注または多めに購入
・急な発注変動や設計変更への備えで多めに仕入れる
・リードタイム短縮要請に応えるため、標準在庫・安全在庫を多めに確保
など、日本企業ならではの「万全主義」の中で余剰在庫が発生しています。
保管コスト&棚卸資産リスクのジレンマ
余剰在庫の存在は、サプライヤー側にとって利益圧迫要因。
倉庫の保管スペースや資金の固定化、場合によっては減損リスク。
特に中小企業ほど、こうした「売れるか分からない在庫」に経営を悩ませています。
一方、調達バイヤーは「余っているなら安く売ってくれないか?」という発想で動くことができます。
適切な情報と関係構築さえあれば、双方にメリットのある取引を実現できます。
余剰在庫活用型の調達アプローチとは
1. サプライヤー在庫情報を可視化する
まずやるべきは、主要サプライヤーが保有する余剰在庫の情報収集です。
特に、
・汎用部材や一般規格品
・最近仕様変更や生産数量変動で生まれた中途在庫
・過剰発注分や納入後の返品材
などは「一括買い取り」「安価購入」で双方Win-Winに持ち込めるチャンスです。
現場で信頼関係を築き、「余った部品・材料はありませんか?」と一歩踏み込んだコミュニケーションが重要です。
定例会議での雑談や、現場視察時の倉庫チェック、あるいは匿名性を持たせたサプライヤー向けアンケートなどのマーケティング手法も効果的です。
2. 在庫引取りによるコストダウンの実践
サプライヤーから「余っている」と情報を得た部材については、下記のような調達スキームが実践できます。
・一括大量購入による値引き交渉
・緊急補充用在庫をサプライヤー預かりから引き取る形に切り替え、調達コスト減
・グループ会社・取引先同士での横流し(在庫シェア)のコーディネート
・品質検査済み品であれば、型落ちや旧品番でも許容してコストダウン対象に
このアプローチは、単なる値引き交渉よりサプライヤーにも明確なメリット(在庫コスト削減、資金回収)をもたらすため、非常に交渉しやすく現場実装性が高いです。
3. 社内設計や使用条件とのマッチング再検討
調達現場の固定観念を捨て、「必ずしも最新スペックや指定ブランドでなくても良い部材がないか?」、「コスト重視用途なら型落ちでもOKでは?」など、設計–調達–生産部門が連携し、「在庫消化型材料リスト」などを積極的に検討すると成功確率が高まります。
製造BOM(部品表)の柔軟な運用や代替部材許容ガイドラインの策定など、現場目線のルール整備も効果的です。
アナログ業界だからこその「泥臭い」着眼点
口頭情報・ヒューマンネットワークを活用
デジタル化が進みつつも、「本当に価値ある在庫情報」は未だに帳簿上でなく、現場担当や熟練社員の頭の中に眠っているケースが大半です。
工場長クラスや、調達購買歴が長い担当者に「最近、倉庫の片隅に眠っている○○とかないですか?」と尋ねるだけで、掘り出し物情報が得られることも多いです。
サプライヤー工場の現場見学や飲み会など、旧来型のヒューマンネットワークがものをいう場面も少なくありません。
現場改善・5S活動で在庫問題を可視化
日本の現場改善文化「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」は、余剰在庫の「棚卸し」や「見える化」と極めて親和性が高いです。
調達部門も5S活動に加わり、サプライヤーと一緒に現場の在庫実態を洗い出すことが、思わぬ取引チャンスの発掘につながることも多々あります。
余剰在庫調達を成功させるポイントと落とし穴
成功ポイント
・日頃からサプライヤーとの信頼関係を構築しておく
・社内設計、品質保証部門と連携し活用可能範囲を拡大
・単なる値引き交渉でなく「在庫コスト削減」というメリットを示す
・現場主義で、書類・数字に表れない現物現場を直接確認
・グループ内企業や同業他社のネットワークを通じて在庫シェアリングを進める
注意すべき落とし穴
・在庫長期保管品の場合、品質劣化やトレーサビリティ欠如リスク
・社内の設計・認証・規格で「型落ち・旧品活用」に制約がないか要確認
・協力的なサプライヤーに「下取り要員」ばかり押し付けて、逆提案機会を逃さない
・在庫処分価格にとらわれすぎて、納期やアフターケアでのリスク増大がないかをチェック
サプライヤー視点で読む、バイヤーのホンネ
サプライヤーの立場で見ると、「余剰在庫・型落ち品はバイヤーに安く叩かれるだけ」と誤解されがちです。
しかし実際は「適正リスクをバイヤー側も共有」「計画的引き取りで、資金繰り安定+倉庫スペース改善」と双方に本当のメリットがあります。
バイヤーが特定スペックや納期を譲歩できる場合、サプライヤーは値下げ余地が大きく、通常の納入価格より「安くてもありがたい!」という本音が出ることも事実です。
また、バイヤーのニーズや調達計画の背景を理解したうえで、「こんな余剰在庫がある」「コストで協力できる在庫はこれ」といった能動的な提案力も、今後の取引拡大に効いてきます。
まとめ:昭和アナログ業界×ラテラルシンキングで新たな調達価値を
日本の製造業は、アナログ文化と泥臭い現場主義、そして「つながり」のなかで余剰在庫という埋蔵資産が生まれています。
デジタル在庫管理やAI予測だけでは拾いきれない、現場視点・人間関係・ラテラルシンキング(水平思考)を駆使して、
「どこかに眠るお宝在庫」
「サプライヤーも救われ、バイヤーも勝てる交渉のカタチ」
を積極的に探り出しましょう。
コストだけでない「日本らしい調達力の進化」に、あなたの行動がきっと貢献できるはずです。
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