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複数部門の意図が噛み合わず調達が迷走する実例

目次
はじめに:調達業務の迷走はなぜ起こるのか
製造業における調達部門は、部品や原材料の安定調達によって生産活動を支えています。
しかし、現場ではしばしば「調達が迷走している」「指示が二転三転する」といった混乱が起きています。
この背景には、複数部門の意図が噛み合わないという、非常に根深い問題が存在します。
この記事では、私自身の現場経験も踏まえつつ、「なぜ調達が迷走するのか」「どこにすれ違いが生まれているのか」を掘り下げます。
また、その課題への打ち手や今求められる調達の視点についても解説します。
複数部門の利害がぶつかる現場のリアル
設計・技術部門の「理想」と調達の「現実」
たとえば新製品開発の初期段階では、設計部門は「最先端の素材を使って最高の製品を作りたい」と優先順位を語ります。
一方で、調達部門は「必要な品質を担保しつつ、コストも納期も守る」という制約条件下で最適仕入先を探します。
設計部門はサプライヤー選定や購買交渉の現場経験が不足しがちで、調達部門の苦労に目が届きません。
調達部門は「現実」を重視し、設計部門は「理想」に邁進します。
このギャップが、調達の迷走の出発点です。
生産部門の「変更要求」と調達の混乱
生産現場の都合も、調達部門に翻弄をもたらします。
たとえば現場事情で「製造工程を変更する」「別工程を追加する」という意思決定がなされると、直ちに必要部材の仕様や数量が変わります。
ところが、その情報共有が遅れたり不明確だったりすることで、調達部門は既発注内容の修正やサプライヤーとのリスケジュール交渉に追われます。
これが積み重なると、「発注先をどこにすべきか」「どこまでの変更が許容されるか」など、判断に迷うケースが頻発します。
品質保証部門の「厳しい壁」
品質保証部門は、顧客クレームや規格遵守を最優先に考えます。
「前回と同じサプライヤーでも、1ミクロンでも管理値が違ったらNG」「たとえコストメリットがあっても未認定品は使えない」といった主張が現場ではよく見られます。
調達側はコストダウンや納期短縮を狙いたい一方で、品質部門との調整に苦慮します。
調達迷走の典型的な実例
1. 設計変更による二転三転オーダーの混乱
ある現場で起こった事例です。
設計部門が開発中製品の構成部品を度々変更したことで、調達はすでに発注し終わった部品についてキャンセル・再手配を繰り返す羽目になりました。
サプライヤーからは「キャンセル料請求」や「納期不信」の声が上がり、社内でも「調達の判断が遅い」と責められました。
本当の原因は“設計と調達の意思疎通不足”でしたが、調達部門だけが矢面に立ったのです。
2. 複数工場間での優先順位のブレ
複数の生産拠点を持つメーカーで、同じ部材の割り振りをどうするかで混乱したことがあります。
A工場は「大型受注があるので最優先入手を希望」、B工場も「安定生産のため同じ品番を確保したい」と主張します。
本来調達は全社最適化を目指すべきですが、現場ごとの事情に左右されて当初のプランは修正ばかり。
結局、“一番声が大きい工場”の言い分が通るかたちになり、各サプライヤーにも混乱が波及しました。
3. サプライヤー評価基準の温度差
調達部門としては「品質・納期・コスト」のバランスでサプライヤー評価を行いたいのですが、品質保証部門は「少しでも不良率が高ければ即切り替え」と要求しがちです。
一方、生産現場は「とにかく安定供給が第一」となり、「納期遅延の常習サプライヤーでも安価ならOK」という現実的な意見が出ます。
このバランスに悩んだ調達担当は、結論を先延ばししたり、場当たり的な発注を連発。
部品の在庫過多や欠品、コスト上昇に繋がるという苦い経験を何度も目の当たりにしてきました。
昭和アナログから脱却できない業界の特徴
根強い“縦割り意識”と決まらない責任所在
多くの日本の製造業では、いまだに「部署横断コミュニケーションが弱い」「責任の押し付け合いが常態化している」といった昭和的なアナログ業務が色濃く残っています。
「オレの担当はここまで」「そこから先は別部門の責任だ」といった考えは、現場力低下と混乱の温床です。
ITシステム導入の弱さと非効率な情報共有
多くの会社がSAPや各種ERPを導入していますが、根本的には業務フローが正しく整備・標準化されておらず、システム入力の遅れや誤入力で大問題が起こるケースも。
結果的に「口頭伝達」「FAX書類」「手書き伝票」がまだまだ活躍している現場も存在し、発注履歴や変更履歴が追えず、調達担当者は“自分の経験頼り”の判断に追い込まれています。
解決へのカギ:部門横断と現場主導の新しい調達力
プロジェクト型のコミュニケーション強化
設計や生産、品質と調達部門が定期的に情報共有ミーティングを行い、「なぜこの仕様・部品が必要なのか」「サプライヤーとどう交渉するのが適切か」を徹底的に擦り合わせることが不可欠です。
特に、現場の声を聞く“現場主導型”の調達体制が成果を産んでいる企業も増えてきています。
調達戦略の可視化と合意形成
全ての部門が納得できる指標(バランススコアカード)や、リスク分析を活用した仕入先選定プロセスを明記し、調達方針を「見える化」します。
その上で定期的に全関係者と合意形成し、「なぜこの判断をしたのか」を可視化することで、後からの責任追及や根回し文化を根絶することができます。
調達担当者には“翻訳者”としての資質を
調達担当者自身が各部門の言い分を“翻訳”し、「設計・生産・品質・経営」の価値観を俯瞰的にまとめ上げる必要があります。
単なる“部品手配屋”ではなく、「全社利益の最大化を図るビジネスパートナー」としての専門性と度量が求められています。
このためには、現場経験や取引交渉力だけでなく、全社視点の戦略性も身に付けなければなりません。
まとめ:新たな地平へ、調達業務は進化する
複数部門の意図が噛み合わず調達が迷走する原因は、一部門だけの問題ではありません。
各部門の主張が孤立しやすい昭和アナログ文化、ITシステム導入の中途半端さ、合理的な合意形成フローの未整備――それらが絡み合って初めて起こる“必然の結果”です。
バイヤーを目指す人、またはサプライヤーの立場からバイヤーの心理を知りたい人にとっても、「なぜ意思が噛み合わないのか」「現場ではどんな混乱が起きているのか」を深く知ることは必ず大きな武器になります。
これからの調達業務は、ラテラルシンキング=発想を飛躍させる柔軟な視点で、“現場主導型の共創”と“可視化による合意形成”へとシフトしていかなければなりません。
その先にこそ、ブレない調達と真の競争力が生まれるのです。
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