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日本の標準部品を活用して共通化を進める購買戦略とコスト削減効果

目次
はじめに:日本の製造現場が標準部品共通化に注目する理由
日本の製造業は、長い間独自性や細やかな対応力を強みとしてきました。
その一方で、昭和の時代から続く「特注主義」やアナログな管理、習慣が根深く残っているのも事実です。
しかし近年、働き方改革やサプライチェーンの見直し、脱炭素などの社会要請が進む中で、「いかに効率よく、安全に、競争力を維持して生産を続けるか」がかつてなく問われています。
この潮流の中で「標準部品の活用と共通化」の重要性が大きくクローズアップされるようになりました。
この記事では、現場経験から得たリアルな課題意識をもとに、購買・調達戦略として標準部品共通化を進める実践的な方法や、そのコスト削減効果について深掘りします。
また、今でもアナログ色濃い製造現場でどうやって共通化に突破口を見出すか、「ラテラルシンキング(拡散的思考)」の視点も織り交ぜて考察します。
標準部品とは何か? 共通化のインパクトを理解する
そもそも標準部品とは
「標準部品」とは、複数の製品やラインで共通して使用できる仕様・形状・性能をもった部品です。
JIS(日本工業規格)やISOなどに基づいたパーツ、市販品、社内規格化部品(通称:カタログ品等)などが該当します。
たとえば、ボルト、ナット、ベアリング、モーター、センサーなどは代表格で、「どこで誰が使っても同じ品質・寸法」であることが鍵となります。
一方、特注部品や製品固有仕様の部品は、ある種の「唯一無二」ですが、
「設計変更時の最小限の手間」「サプライチェーン維持」「コスト最適化」の観点からはリスクも大きくなりがちです。
共通化がもたらすメリット
標準部品の共通化は、単なるコスト削減以上に多彩なメリットをもたらします。
– 購買ボリュームの集約による単価低減
– 調達リスク・在庫管理リスクの分散・軽減
– 品質安定と不良リスク低減
– 開発期間の短縮化、設計工数削減
– 情報・ノウハウの社内での横展開
– 担当者交代時など属人化の排除
古き良き日本の「もったいない精神」にも重なりますが、グローバル生産体制やサプライチェーン強靭化が叫ばれる今、まさに「守り」と「攻め」の両面から必須の戦略といえます。
なぜ製造業の現場で標準化・共通化が進みにくいのか
主な障壁とその背景
現場経験から実感しますが、標準化や共通化の推進は決して一筋縄にはいきません。
その根底には、以下のような「現場特有のリアル」が根強く存在しています。
– 歴史的経緯や属人的な設計思想(「この製品は〇〇方式が伝統だ」)
– 顧客要望への過剰適応、過剰品質
– 既存図面・システム内に残るバラバラ部品
– 設計者と調達、現場の分断
– 調達先の分散に安心感を抱く社内文化
– サプライヤーとの硬直した関係性(「お得意様意識」)
– 設計上の安全余裕値、将来仕様変動への備え
こうした「昭和マインド」とも言うべき状況は、今なお多くの工場で色濃く残っています。
ラテラルシンキングで打開策を探る
ここで必要なのが「ラテラルシンキング(拡散的発想)」です。
たとえば「単なるコストダウン」や「管理工数削減」の枠だけでなく、こう考えてみてはどうでしょうか。
– 標準化できない理由を逆に「現場の強み」に変えつつ、段階的に共通化比率を高める
– 部品標準化=現場独自技の損失、ではなく、「現場での共通ノウハウ化」へ発展する道を探る
– 調達品目のランキング公開(定期的な部品マラソンなど)による現場巻き込み
– 技術・現場・購買・営業の四位一体で標準化推進プロジェクトを立ち上げる
– サプライヤーとの共存共栄ビジネスへシフト(共通仕様化・共同購買など)
新たな突破口は、課題の「本質」に踏み込みつつ見つかるものです。
標準部品化を進める実践的なロードマップ
1. 現状可視化とパレート分析
まず現場で未整理になりがちな部品リスト(出図点数、購買実績、在庫動態など)を徹底的に洗い出し、「パレート分析」を行います。
品目別にABC分析を行い、「多頻度高額」=標準化メリット大の領域を特定します。
実績データに基づく共通化戦略が、第一歩となります。
2. クロスファンクションによる共通仕様洗い出し
設計・調達・現場オペレーション・品質管理の多部門による定例ワークショップを開催し、
「なぜその寸法・仕様・材質なのか」「現状で何が問題か」など、現場のリアルな声を反映した共通仕様条件を定義します。
ここで“理想論”だけでなく、「現状維持バイアス」や「現場の暗黙知」を可視化することがカギとなります。
3. サプライヤーとの共同開発・採用テスト
標準部品化イニシアチブに際し、主要サプライヤーにも早期から目的を開示し、「共同研究」「共同見積り」プロジェクトとするのが効果的です。
本来、サプライヤーも多品種小ロットによる非効率を解消したいという共通目的があります。
納入側とのWin-Win関係構築により、コスト低減交渉や品質確保・供給安定につながります。
4. 標準部品カタログ・マスター化の徹底
社内システム(ERP、PLM、BOM)連携はもちろん、現場配布資料や設計標準、サプライヤー向けの「標準部品カタログ」も常に最新版を保ちます。
設計段階から積極的に標準品選定を促し、承認フローや切り替えプロセスを明確化することで継続的な標準化推進が可能です。
5. 成功体験の横展開・意識改革の継続
部品コストダウンやランニングコスト低減だけでなく、「在庫ロスが減った」「ライン切り替えが楽になった」などの現場声を集約し、社内にストーリーとして展開します。
担当者評価や表彰制度、KPI管理など、企業文化へ定着させることで「標準化の輪」が広がります。
コスト削減だけじゃない、標準部品化の付加価値
見落としがちな「現場DX」としての標準化効果
標準部品の活用・共通化は、実はDX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩と言えます。
自動化ライン設置やIoT監視、AI品質予測なども標準化部品・データ基盤あってこそ最大化できます。
また、故障時の予備品確保、再設計時の手戻り削減、流動的なサプライチェーン対応…。
こうした「備えあれば憂いなし」は、標準部品活用の最大の安全保障です。
サプライヤーの立場から見た標準化のメリット
サプライヤー側にも大きな価値があります。
大量ロット安定生産・見込み生産体制、在庫最適化、生産管理効率化、納期確約、価格競争力の向上…。
また、「標準化=値下げ圧力だけでなく、将来案件への参画の道」も開けます。
顧客と早期から共通化を進めることで、研究開発や品質保証面でもパートナーシップが進み、市場リスク対応力も高まります。
成功事例に学ぶ:標準部品活用の実践知
たとえば自動車部品メーカーでは、同一プラットフォームに対して標準ボルトやコネクタ、ユニットモジュールを共通化し、生産性20%以上UP・年間億単位のコストダウンを実現しました。
機械装置メーカーの現場では、標準モーター・センサーなどの調達先を絞り込み、緊急時のBCP(事業継続計画)体制や、リードタイム50%短縮にも成功しています。
こうした事例の共通点は、設計フェーズから標準化意識を組み込み、調達・品質・製造現場を巻き込んでPDCAを継続的に回している点です。
まさに「みんなでつくる現場力」が標準化・共通化を支えているといえるでしょう。
まとめ:標準部品の共通化が未来の製造業を切り拓く
昭和の現場文化を尊重しつつも、時代の変化に応じて「守るべきを守り、変えるべきを変える」。
その一丁目一番地が、標準部品の活用と共通化という購買戦略です。
コスト削減はもちろん、「現場の疲弊感」「リスク」「属人化」といった目に見えない“足かせ”も解きほぐす大きな付加価値があります。
サプライヤーとの共存共栄、デジタル化、グローバル連携へ向けて。
今こそ「標準部品の共通化」という地味だが力強い改革が、次世代の製造業を拓くと断言できます。
現場に身を置き続けてきたからこそ、共通化の持つ意味を今こそ再発見していただきたい――。
それが、長年の経験から伝えたい「現場のプロ」としての心からの提言です。
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