投稿日:2025年9月9日

EC販売を前提としたペット用品OEM商品の商品設計と物流対策

はじめに:EC時代のペット用品OEMの新常識

インターネット通販(EC)の拡大により、ペット用品のOEM(受託製造)事業も大きな転換期を迎えています。

これまでのような「企画→製造→納品」の一方向な流れだけでなく、ECならではの販売特性や物流事情を理解したうえで商品設計から見直すことが、メーカー・バイヤー・サプライヤーすべてにとって求められています。

この記事では、20年以上製造業で培った現場目線から、EC販売を前提としたペット用品OEM商品設計と物流対策のポイントを解説します。

特に、「昭和の匂いが色濃く残る」業界文化・商習慣や工場現場の実情をふまえて、実践的なノウハウや最新トレンドを深堀りします。

EC販売と従来型流通では何が違う?

EC特有の「商品設計」視点

従来型のペット用品では、流通・店舗陳列・対面販売を前提とした設計が主流でした。

たとえば「目立つパッケージ」「店舗での陳列しやすさ」を重視し、大きさ・形状・箱数などを考えていました。

一方、ECモールやD2C(Direct to Consumer)では、パッケージは工場を出てすぐ“消費者の玄関先”に届く最後の訴求ポイントです。

「梱包サイズによる送料の変動」「破損リスク」「撮影映え」「開封体験」など、これまでとはまったく異なる視点が必要となります。

物流・配送コストが競争力を左右する

物流コストが商品原価に占める割合は、ECではとても大きなウエイトを占めます。

物理的な店舗流通では、まとめて箱詰め・パレット積み・一括納品が可能でしたが、ECでは「1個・少量・多品種」出荷が常態化します。

送料設定や梱包材コスト、倉庫内のピッキング効率が商品の販売競争力そのものに直結します。

商品設計でまず抑えるべきポイント

1. 梱包サイズ最適化の徹底

EC最大手のAmazonでは「三辺60cm未満」「2kg以下」が小型区分となり、送料も倉庫保管料も安くなります。

たとえばペットシーツやキャットフードなど嵩張りがちな商品も、内容量やパッケージの工夫しだいで小型区分に収まればコストは大きく下がります。

OEM事業者は「規定サイズピッタリ」だけでなく、「EC物流コストが最安になるサイズ」から逆算して設計する必要があります。

2. 破損リスクの極小化

ペット用品、とくに液体(シャンプー・消臭剤)や割れ物(陶器・ガラス製フードボウル)は、「宅配便でワレモノ扱い」になると物流コストが跳ね上がります。

段ボールの厚みや緩衝材の選定、個箱構造を現場レベルで調整し、「標準宅配便」で安全かつ高コストパフォーマンスなパッケージを実現しましょう。

3. EC映えするデザイン設計

消費者は商品を“写真越し”に判断します。

実物より「商品画像」での見栄え・雰囲気、サイズ感が重視されるため、ECサイトで映えるデザイン・撮影フレンドリーな仕様も盛り込むべきです。

たとえば色使い・パッケージ表情・ロゴ配置・サイズ感(比較物の添付)など、スマホ画面で“パッと目を引くポイント”を意識しましょう。

物流対策のベストプラクティス

1. FBA・3PL活用の前提で工程設計

商品納品先がAmazon FBAなどの大型倉庫、あるいは専門3PL(サードパーティ物流)になるケースが増えています。

– 納品伝票・バーコードの自動貼付
– ケース単位での検品・スキャン
– 出庫指示のAPI連携対応

など――現場の生産・包装・検品ラインから「FBA・3PL前提」で工程設計できるかが重要です。

2. ピッキング効率を意識したアソート設計

多品種・少量生産が主流のEC販売では、バラ出荷だけでなく「2個セット」「3種ミックス」などアソート商材への対応も重視されます。

現場側でアソート済みパックを組み、生産段階でJANコード付き小箱化することで、ピッキング・出荷効率と現場管理の省力化が同時に進みます。

3. バイヤー発注ロットの柔軟対応

昭和型メーカーは「最小発注ロット〇箱」「納期2ヶ月」など厳格な商慣習が根強いですが、ECバイヤーは売れ筋変動、販促キャンペーンに合わせて発注ロットや納期を柔軟に変える傾向があります。

MOQ(最小注文数)緩和、在庫型OEM(作り置き)、“即納”体制の仕組化が競争優位性につながります。

工場現場×営業×物流を巻き込み、体制改革まで踏み込んだ「柔軟な現場力」が次世代OEMサプライヤーの必須条件です。

「昭和的」商習慣からの脱却と現場のアップデート

多くのペット用品OEM工場には、「帳票は紙」「伝票は手書き」「FAXが主流」「個数管理は記憶とノート」といった昭和的アナログ文化が根深く残っています。

しかし、EC/D2Cバイヤーはデータドリブンな需給管理、柔軟な企画変更、スピーディーな仕様切替を求めます。

現場目線でアップデートできるポイントは次の通りです。

1. デジタル管理の導入

– 工場入出庫のバーコード化
– 生産進捗・在庫状況のオンライン共有(Googleスプレッドシートなどでも十分)
– 受注-生産-出荷までの一元化管理

こうした業務の“見える化”や“省人化”は、業界内の競争力を押し上げます。

2. 情報開示と双方向コミュニケーション

– 製造工程でのトラブルや納期遅延、納入実数などを「報連相」だけに頼らず“即時・客観的”に共有
– ECバイヤーとのオンライン打ち合わせの積極実施

を徹底しましょう。

また、工場現場側からも「物流コスト低減」「パッケージ再設計」など現場発信のカイゼン提案を行うことで、受発注関係の上下を超えたWin-Winの関係性が生まれます。

OEMバイヤーの「本音」を知る:脱・思い込み営業

製造現場やサプライヤー側では「バイヤーが何を考えているか分からない」「値下げ交渉ばかり…」という声を多く聞きます。

しかし、実際の現場バイヤーは以下の観点を重視しています。

1. 安定供給・安定品質の担保

リードタイムのブレ、季節的な需要変動にどう備えるか、急な需要増にどう対応するかが大きな関心事です。

そのためには、現場の見積・受注・生産・配送管理の一元化やデジタル活用が急務です。

2. コスト最適化と発送効率

物流コストの増加(燃油サーチャージ、人件費上昇など)は、商品価格ではなく“全体コスト”でバイヤーの悩みのタネです。

クリティカルなポイントは「発送単位」「外装仕様」「配送リードタイム」――現場からのコスト分析のフィードバックとカイゼン案の提案が重視されます。

3. EC向けのプロモーション視点

バイヤーにとって商品ページの画像・説明文・レビュー対策・販促キャンペーンとの連動がとても重要です。

現場側からも「商品がECでどうみられるか」「消費者体験をどう設計するか」という視座を持って商品開発に寄与できるかが問われます。

アナログ業界でも今すぐ始められる5つの施策

1. 梱包・パッケージの“適正”リデザインに取り組む
2. 生産・物流情報のデジタル化(簡単な表計算+バーコードでも十分)
3. ECバイヤー向けの提案フォーマット化(写真・寸法・ロット・納期一覧など)
4. 物流コスト・発送効率の見直しと工程改善提案
5. 物流現場と製造現場の横断的チームでの月次カイゼン会議

これらは、従来型の“昭和的”な体制でも、小さな一歩から比較的容易にスタートできます。

大掛かりなシステム投資や組織改革を待つのではなく、現場から“小さな改善”を積み重ねることが、業界全体の進化の礎となります。

まとめ:EC×現場力で新しいOEMの常識を創る

ECを前提としたペット用品OEM商品設計と物流対策は、「価格競争」だけで通用しない新しい時代の課題です。

物流サイズ設計、破損リスク管理、EC映えするデザイン、柔軟なロット対応、デジタルへの現場適用――いずれも表面的な真似だけではなく、『製造現場のリアルな知見と現場発信の改善』が鍵を握ります。

昭和型アナログ文化の良い“現場力”を活かしながら、次世代のECバイヤー・ユーザーの価値観に応える。

それこそが、ペット用品OEMサプライヤー・メーカー・バイヤーの新しい“地平線”を拓く原動力になるはずです。

変化を恐れず、現場から製造業全体の付加価値を高め、ペットとの素晴らしい共生社会を支えていきましょう。

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