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生地ロットによる色ブレを最小化するための生産管理方法

目次
はじめに:製造業における「色ブレ」問題と現場の現実
製造業、とりわけ繊維・アパレルや樹脂成形など、色味が品質の重要要素になる業界において、「生地ロットによる色ブレ」は深刻な課題です。
実際、発注元とサプライヤー双方にとって色ブレはクレームや歩留まり悪化の根源となり、現場管理の巧拙が企業競争力に直結します。
さらに、デジタル化が叫ばれながらも現場では昭和時代の勘と経験、対面確認がかなり残存しているのが現実です。
本記事では、二十年以上の現場・管理経験と歴史ある製造業の知見をもとに、「生地ロットによる色ブレ」を極小化するための実践的な生産管理手法、そしてバイヤーとサプライヤー両サイドの視点から新たな地平線を開拓していきます。
生地ロットによる色ブレとは? 原因を現場目線で読み解く
ロットとは何か?なぜロット起因で色ブレが起きるのか
まず「ロット(Lot)」とは、生産工程で一度にまとめて処理された製品の単位を指します。
生地においては、「原糸ロット」「染色ロット」「仕上げロット」などが存在し、この“区切り”が変わるたび、微細な原材料や条件の違いが生じます。
例えば、同じ染料・同じ配合レシピであっても、温度変動、原糸メーカーの違い、地質や水質、設備の経年劣化など、管理しきれない要素が生地の「色合い」「発色」に影響を及ぼします。
また、測色機や検品装置も、現場環境による微細なズレやメンテナンス状況で精度が左右されるのです。
現場で起きている具体的な色ブレ事例
・AロットとBロットで同じ「ネイビー」を指定注文したが、納品後の商品を並べると微妙に違うトーンになってしまった。
・展示会や見本帳で確認した色と量産品の色が大きく乖離。クレームや返品に発展する。
・素材メーカーが原糸を切り替えたことで、同じレシピでも染め上がりが異なる。
このような事象は大手~中小サプライヤー、アパレル、工業資材メーカーまで業界問わず頻発しています。
色ブレ最小化のための生産管理の基本原則
1. ロットの可視化・トレーサビリティ確保
最初に取り組むべきことは、「ロットの情報をすべて記録し一元管理」することです。
原材料ロット、製造ライン・機械担当、染色条件、検査結果を紐付けて管理し、現場・調達側・バイヤーがすぐアクセスできるようにします。
従来のExcelや手書き帳面管理からクラウドや専用パッケージへの移行、それを現場が実際に“活用する仕組み”が重要です。
2. 着色前の「事前テストサンプリング」徹底
本生産前に代表サンプルを小ロットで染色し、色差計や眼視で基準と照合します。
この時、原材料ロットごと/新規設備仕入れごとに逐次実施し、その結果を蓄積します。
たとえ納期やコストが増えても、後工程で発生するリスク・損失を考えれば有効な手段です。
3. QC工程の「多点・多人数チェック」
一人の検査員、一箇所の照明状態だけでOKとせず、工程ごと・複数人で目視チェックをルール化します。
特に、「自然光に近いD65照明」「標準化されたカラーチャート」を組み合わせ、属人化を防ぎます。
4. 原材料・設備情報の密な情報共有と対話
バイヤー側で「この原料ロットは色ブレが出やすい」と気付いたら、サプライヤーに共有します。
またサプライヤーでも、「ロット切替タイミング」や「染め上がりが不安な段階」で先手を打ち、相談や検体共有を行います。
「指示待ち」や「忖度」文化ではなく、目的本位の“オープンな情報連携”が今こそ求められます。
最新トレンド:デジタルとアナログの融合による色ブレ管理
色差計・分光光度計の積極活用
近年では、ハンディタイプの色差計(分光光度計)などIoT測定器の低価格化・現場適用が進み、「人の目だけ」ではカバーしきれないレベルまで可視化が進んでいます。
測定値によって「JIS規格」「CIELAB」等の国際基準で色の差を定量管理できるため、主観的トラブルを大幅に減少させることが可能です。
AIとビッグデータの活用、だけどアナログ現場の“目利き力”も並走
最新の生産現場では、AI・画像認識システムが染色ロットごとの色データをリアルタイム解析し、「次にどんな変動が起きやすいか」まで予測する段階に入っています。
とはいえ、現場では「季節ごとの温度・湿度の微変化」「機械の音や臭い」など、人の五感でしか察知できない“兆し”が品質管理の最後の砦になっています。
デジタルとアナログ、それぞれの強みをミックスして活かす必要があります。
サプライヤー/バイヤーの立場別:色ブレ対策の進め方
バイヤーがサプライヤーに求めること
・ロットごとのテストデータ、検査記録の開示(現物またはデジタルデータ)
・色味事故が起きるリスク要因を事前告知する透明な姿勢
・万一の色ブレ発生時でも、納期・価格だけで切り捨てず、まず情報開示から臨む真摯な対応
サプライヤー側の実践策
・ロット切替ごとの検体提供や立会確認のルーティン化
・「無理です」ではなく「こうすれば可能です」と設計提案型の打ち合わせ運営
・余裕をもたせたロット積層(ストック)体制と、予備ロット使用時の事前説明
どちらの立場でも、「色の管理とトラブル低減」を共通KPI化し、ウィンウィンの関係を目指すことが最大ポイントです。
昭和的伝統と令和のDX、この両立が最強の現場力
どれだけデジタル化が進んでも、現場・現物・現実が分かる“人”がいることが製造業の底力です。
色ブレ管理も、AI測定器だけでなく、熟練オペレーターの肌感、工場長の「いつもと違う」という気づきを生かすことが重要です。
同時に、サプライチェーンの上流(調達・生産管理)から下流(出荷・納品・アフターフォロー)まで、ロット情報がシームレスに共有できるデジタル運用体制を構築することが肝要です。
いつまでも昔ながらの紙管理・属人的意思決定から脱却し、アナログの宝を生かしつつ、DXで現場力を引き出す──ここにこそ、令和時代のものづくり現場の新たな“勝ち筋”があります。
まとめ:色ブレ事象をゼロに近づけるために──これからの現場がやるべきこと
生地ロットによる色ブレを最小化するには、原因分解・データ化・現物確認・継続的対話、そしてデジタルとアナログ双方の徹底活用がキーポイントです。
結局のところ、「色ブレは避けられない」と諦めるのではなく、現場目線のラテラルシンキングで新しい管理手法・関係性を創出し続ける姿勢が問われています。
今日の一つ一つの工夫、対話、そして学びが、明日の製造業の競争力アップにつながります。
バイヤー・サプライヤー、現場・マネジメント、技能とテクノロジーが有機的に融合した「ブレないものづくり」を、共につくりあげていきましょう。
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