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原価低減とリードタイム短縮を両立する生産性向上メソッド

目次
はじめに
製造業界に長年携わってきた中で、誰もが頭を悩ませる課題が「原価低減」と「リードタイム短縮」です。
この両輪を同時に回しながら生産性を高めることは、決して簡単なことではありません。
特に昭和の時代から続く慣例やアナログ文化が根強く残る日本の製造業では、一つの改善に対して周囲の理解や現場の納得を得るのも一苦労でした。
しかし、世界的な競争が激化し、顧客ニーズが多様化し続ける今、いよいよこの課題は待ったなしの状況になりつつあります。
本記事では、実際の工場現場で得た知見や失敗談、そして現場目線だからこそ見逃せない本質などを交えながら、原価低減とリードタイム短縮の「同時両立」を実現する実践的なメソッドを解説します。
バイヤーを目指す方や、サプライヤーから見たバイヤーの意図を知りたい方にも役立つ視点を盛り込んでいますので、ぜひ最後までお読みください。
原価低減とリードタイム短縮、なぜ“両立”が難しいのか
相反することが多い2つの指標
原価低減とは、製品1個あたりにかかるコストを下げることを指します。
一方、リードタイム短縮は、受注から納品までの期間をできるだけ短くする取り組みです。
この2つはしばしば、「コストを削減するには材料や工程数を減らす」「リードタイムを縮めるには多めの材料在庫や余計な人員配置が必要」といった具合に、相反する対応を求められていると認識されがちです。
事実、工場改善の現場でも「コストは下がったが納期遅延が増加した」「納期遵守を最優先した結果、材料費や外注費が膨らんだ」といった声をよく耳にします。
この板挟み状態が、現場のやる気を削いでしまう原因ともなっていました。
昭和時代の慣習から抜け出せない現場
さらに、特に日本の製造業の現場には「今までこうしてきた」「安定した仕組みに手を加えるのは恐い」といった保守的な土壌も根強く残っています。
この閉塞感が“新しい取り組み”を阻む最大の壁となり、結果として二兎を追えない状況が生まれているのです。
ラテラルシンキング:常識の“横”を歩く視点を持つ
この課題を解決するには、従来の発想の縦軸(例:コストだけ、納期だけ)を超えて横に活路を見出す「ラテラルシンキング(水平思考)」が欠かせません。
分断された組織を“つなぐ”
多くの現場で陥りがちなのが、購買部門と生産部門、品質部門が縦割りで最適化を進めている点です。
しかし、コストを意識するあまり購買が安価な部材を調達し、それに起因するトラブルで生産が遅れるケースも少なくありません。
リードタイム短縮を進める現場と、コストだけを至上命題とする購買が噛み合わない。
この悪循環を絶つには、部門横断の統合メソッドが重要となります。
“常識”を更新する勇気
例えば「不良率が低い=高品質」と認識し、不良ゼロを目指すあまりに過度な検査や過剰な安全在庫を積むケースがあります。
これにより製品コストもリードタイムも延びてしまう。
「必要十分な品質」とは何か、本質からとらえ直すことが、イノベーションの起点になります。
実践! 原価低減とリードタイム短縮を両立する5つのメソッド
1.“可視化”からはじめる情報の一本化
まずは、製造現場・調達・品質など各現場の「今」を数値やグラフで全員が見えるようにしましょう。
在庫量・仕掛かり量・遅れ件数・購買単価などをダッシュボードで一元管理することがポイントです。
システム投資が難しければ、まずExcelや手作業のボードでも構いません。
情報の一本化により、部署間の「課題の発見」と「原因の特定」が圧倒的にスムーズになり、原価ダウンとリードタイム短縮の両方につながる打ち手が見えてきます。
2.ジャストインタイムとセル生産方式の組み合わせ
いまだファクトリーフロアでは「受注生産か、見込み生産か」「ライン方式か、セル方式か」といった“どちらか主義”が根強いですが、今こそ組み合わせ発想が必要です。
ジャストインタイムを導入し、必要なものを必要な分だけ投入する体制をつくりつつ、工程単位でセル生産を持ち込み、少量多品種や緊急対応に強い柔軟さを組み込みます。
これにより無駄な在庫や工程ロスを圧縮し、かつリードタイムも短縮できます。
3.工程の“分割”と“統合”を見直す
従来から続く工程フローを、そのまま鵜呑みにしてはいけません。
現場に一度フラットな目で入ってみて、本当に工程の分割が合理的かどうか、逆に統合できるものはないか見直します。
例えば、「複数部品を一括で加工できるよう治具を改造する」「前後の工程を一人の作業者が担当するセル型にする」といったアイデアです。
これにより中間在庫や運搬ロス削減、コストダウン、納期短縮のどちらにも効果を発揮します。
4.現場主導の“カイゼン文化”を育てる
トップダウンの「コスト目標」や「納期短縮ノルマ」だけを押し付けても、現場では“やらされ感”が先行し、本質的な改善は生まれません。
一人ひとりが不良や無駄を気付くこと、アイデアを出せる場をつくることが大切です。
短時間の朝礼や毎週のミーティングなどで“現場目線の意見”を吸い上げる仕組みを整えましょう。
この積み重ねが、やがて両立のエンジン役となります。
5.“サプライヤー共創型”のバイヤーアプローチ
調達・購買部門やバイヤーは、ともすれば「値切り型」や「管理型」になりがちですが、今後求められるのは“共創型”のアプローチです。
サプライヤーの現場課題や技術的な工夫、加工方法のアイデアに積極的に耳を傾け、「価格だけでなくプロセス全体の最適化」を一緒に考えていくべきです。
そうすることで、納期や価格の単なる“下押し交渉”を超えた、生産性向上と現場力アップが両立できます。
バイヤーとサプライヤー、両者のリアルな悩みと現場意識
バイヤー目線:「現場の不満」と「調達の現実」のギャップ
バイヤー側では「納期も価格も厳しく求められる一方、現場側の無理解やコミュニケーション不足が課題」という声が多く聞かれます。
また、単純に見積書上の価格だけで判断できない技術力や対応力など、“定量化しづらい価値”も無視できません。
利益率の厳しい現在、単なる“コストカッター”ではなく、パートナーシップ型でサプライヤーと一緒に価値創造する必要性が高まっています。
サプライヤー目線:「バイヤーは現場への理解が足りない」
一方、サプライヤーから見ると、「バイヤーや購買部門が自分たちの(工程や現場の努力)を実感せず、高圧的な値下げや短納期要求だけを押し付けてくる」という不満が蓄積しています。
こうした現場の課題や制約を認識し、それを踏まえて一緒に改善や新提案を進めていく姿勢は、長期的な信頼関係を築くためにも不可欠です。
「Win-Win」を生み出す現場力と知恵
良いWin-Win関係のバイヤーは必ず、現場で作業者の声やサプライヤーの工場見学などを実践しています。
また、サプライヤーも現場改善案や、コストダウン&納期短縮に寄与する小さなヒントを地道に提案し続けてくる会社が、長く選ばれ続けています。
現場のリアルを起点にした信頼と創意工夫が、両立を動かす最大の原動力です。
自工程完結(セルフコンプリート)のすすめ
生産現場や部品サプライヤー、受託加工事業者にとって「自工程完結=各工程で品質と納期管理・コスト管理を自律的に行う」ことの重要性は年々増しています。
これを実現するための一つのヒントとして、工程ごとに「毎日、3つの小さな見直しポイント」をチェックリスト化し、自律的な業務改善に落とし込みましょう。
これが定着すると、上からの指示がなくても現場から「ここをこう変えれば、原価も納期もよくなる」という知恵がどんどん生まれてきます。
今こそ「業界の常識」を疑おう
現場で“当たり前”になっていることこそ、変革の起点にできます。
たとえば「納期遵守は仕入在庫をたっぷり持つことである」「原価低減は下請けへの単価叩きで達成できる」といった考えが根付いている工場や関係者は少なくありません。
しかし、市場環境の激変や人手不足など、今や10年前の常識は通用しません。
現場に眠る無駄や「気付き」を、小さな改善として積み上げることが、やがて大きな両立解決への道となります。
まとめ
原価低減とリードタイム短縮の両立は、現場の本音や業界特有の課題をしっかり認識し、縦割りの殻を破るラテラルシンキングがカギとなります。
情報の可視化、工程や体制の見直し、現場主導の改善文化、そしてサプライヤーとバイヤーが共創する現場密着型アプローチを積み重ねていきましょう。
昭和から続くアナログの良さも生かしつつ、新たな地平線を目指して挑戦し続ける。
それが明日の製造業の生産性向上と、日本のモノづくりの底力につながります。
皆さまの現場で、明日からすぐにでも実践できるヒントとなれば幸いです。
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