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採用活動が長期化するIT人材不足の現実

採用活動が長期化するIT人材不足の現実
製造業を襲う「IT人材不足」の波
2024年現在、製造業は大きな転換期を迎えています。
工場の高度な自動化、生産工程のDX(デジタルトランスフォーメーション)、SCM(サプライチェーンマネジメント)の強化が求められていますが、IT人材の不足がボトルネックとなり、現場の変革スピードが大幅にダウンしています。
長年、アナログな仕組みや紙文化が根強い業界だからこそ、この「IT人材不足」は誰にとっても深刻な課題です。
なぜIT人材不足はここまで深刻化したのか
国内全体での「IT人材不足」は以前から叫ばれていましたが、製造業では特に顕著です。
理由は大きく分けて3つあります。
1つ目は、IT業界全体で人手が足りないため、優秀な人材が他業種へ流れてしまうことです。
2つ目は、AIやIoTによるスマートファクトリー化の進展の速さに、組織が追いついていけていないことです。
3つ目は、日本の多くの工場が依然として昭和時代から続くアナログ体質を引きずっており、IT人材が魅力を感じにくい環境であることです。
また、高齢化が進んだ組織では新しいITに拒否感を持つ現場責任者も多く、せっかく採用した若手IT人材がすぐに離職してしまうケースも後を絶ちません。
採用活動の長期化、その具体的な現場事情
製造業でIT人材の採用活動は、従来の生産技術者や調達バイヤーとは全く異なる難しさがあります。
現場で主に起きている具体的な状況を整理します。
・求人票を出しても応募が数件しか来ない。来ても別業界志望の人が大半。
・面接で「工場=古い体制・オワコン・ブラック」と先入観を持たれている。
・採用できてもIT知識が断片的、または現場業務理解に乏しい人が多い。
・競合他社やITベンダーへの転職リスクが非常に高い。
・現場のDX化プロジェクトもIT人材の不足と入れ替わりで毎回仕切り直しになる。
このようなサイクルでは「採用活動が長期化し続け、生産性が上がらない」という事態に直結します。
「昭和体質」と呼ばれる工場が直面する壁
特に重厚長大な製造業ほど、「現場の常識・暗黙知」が重視されてきました。
いまだに日報は紙、作業指示もホワイトボード、稟議書も判子…。
そのため、海外では標準となっているMES(製造実行システム)やIoTデバイス連携、プロジェクト管理のためのクラウドツールの導入すら進みにくいのが現状です。
こうした環境は、IT人材に敬遠されてしまいます。
更に中高年層の工場長や生産技術エンジニアには、「自分がITの何を知らないか」を自覚できていないケースも多いです。
この無自覚が「変革意欲のなさ」につながり、採用時点でのミスマッチを招いてしまっています。
求められるIT人材像の変化
従来、製造業でIT人材と言えば、システム部門に所属しパソコンのセットアップやネットワーク管理、基幹システム運用に携わる人材が多かった印象です。
しかし今は、現場の直接的な業務に入り込み、業務プロセスや生産ラインの課題を理解してソリューションとITを組み合わせられる「現場に強いIT人材」が求められています。
つまり、
・現場の人とコミュニケーションが取れる
・業務の流れや生産特性を自分で歩いて把握できる
・自ら現場をラテラルシンキングで再発見できる
・ただのITツール導入にとどまらず、課題の本質に切り込める
こういった人材が製造業の真のDXを推し進める原動力となります。
アナログからの脱却、変革の最前線とは
もちろん、「変革に成功している現場」も存在します。
そこにはいくつかの共通点があります。
・現場主義+デジタル人材が協働する文化が根付いている
・トップダウンとボトムアップを両輪で進める
・失敗を許容し、小さなITプロジェクトを高速で回転させて成果につなげる
・「昭和のやり方を全部否定する」のではなく、一部活かしながらアナログとデジタルを融合させている
特に現場のカイゼンや品質向上活動に、RPA/AI/IoT/BIツールなどの新技術を積極導入して、若手IT人材とベテラン現場社員のダブル体制を築いている工場では、IT人材自身も「この現場なら挑戦できる」と感じています。
製造業バイヤー・サプライヤーの立場から見たIT人材戦略
調達バイヤーやサプライヤーの観点でも、IT人材の確保・育成は重要テーマです。
なぜなら、購買・納期管理・原価低減・サプライチェーン最適化にもデジタル活用が不可欠だからです。
AIによる需給シミュレーション、SCMクラウドの導入、品質トレーサビリティの強化など、すべて「IT×業務知識」がなければ実現しません。
・調達バイヤーを目指すなら、購買業務とITの両方を理解しよう
・サプライヤーの方も、自社製品+IT提案ができるように学ぼう
・「ITはシステム部門に丸投げ」ではなく、自らも一歩踏み込む姿勢を持つ
これが、安定したパートナーシップを構築し、長期ビジネスを勝ち抜くカギになるのです。
IT人材確保のため、企業ができること
では、IT人材不足を乗り越え、適切に確保するにはどうすれば良いのでしょうか。
1.ジョブディスクリプション(職務定義)を明確にする
「何を期待するのか」を曖昧にせず、経営戦略と直結させたITプロジェクトを明示しましょう。
2.現場見学&実務体験の場を増やす
インターンや現場説明会で「現場×IT」のリアルな醍醐味を体感できる機会をつくることで、応募者のミスマッチを防げます。
3.工場体質の透明化&ポジティブな発信
「古くさい」「閉じている」イメージを覆すため、実際に変革している現場やIT活用事例を積極的に発信しましょう。
社内外への広報も重要です。
4.IT人材のキャリアパス・待遇を明確化
人事制度上「ITだから二軍扱い」ではなく、工場の主役級として評価する仕組みを作る必要があります。
報酬・役割・成長機会を見える化しましょう。
5.学び直し/リスキリング支援
現場社員もITスキルを基礎から学べる制度や、IT人材の現場OJT機会を拡充しましょう。
これにより現場とITの距離が縮まり、離職防止にもつながります。
これからの時代を生き抜くために
IT人材不足は一朝一夕で解消しません。
日本の製造業が再び世界市場で輝きを取り戻すには、昭和の成功体験を大切にしつつ、「現場主義×デジタル変革」の掛け合わせによって新しい地平線を切り開くしかありません。
バイヤー志望の方は、「現場の買い手」である強み——ものづくりの目とIT視点の両面から、未来志向で自分を磨いてください。
サプライヤーであれば、「製品」だけでなく「IT提案力」を持った営業や技術者を育て、新しい価値創造に挑戦しましょう。
そして何より、現場の全員が「変わる」ことを恐れず、デジタル変革の荒波にラテラルシンキングで挑む。
それこそが、IT人材不足時代を生き抜き、世界をリードする本当の日本的「現場力」だと私は信じています。