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輸出梱包で防錆乾燥剤と真空パックを使い塩害から製品を守る方法

目次
はじめに
輸出梱包に求められる品質基準は年々高まっています。とくに海外へ精密機器や部品、あるいは金属加工品を送る際、輸送中の大きなリスクとなるのが「塩害」と「錆(サビ)」です。この記事では、現場で積み上げたノウハウと最新動向を踏まえながら、防錆乾燥剤と真空パックを活用した塩害対策の実践法を詳しく解説します。
輸出梱包が直面する塩害とその背景
なぜ塩害リスクが増大しているのか
従来、輸出梱包といえば木箱や段ボールに収め、バンドで固定する方法が主流でした。しかし、グローバルサプライチェーンの広がりや高付加価値製品の増加により、製品はより長期間・過酷な環境への耐性を求められています。
海上輸送が主流となる中、コンテナの中は湿度や温度が大きく変動します。特に、東南アジアや中東など高温多湿・塩分濃度の高い地域への輸送が増えたことで、塩害や結露による錆びが非常に深刻な課題になっています。港湾の近くや赤道直下・乾季と雨季がはっきりしている地域では尚更です。
錆と塩害のメカニズム
金属部品が塩分(塩化ナトリウム等)や湿度にさらされることで、イオン化現象が加速し、錆びの発生が一気に増えます。特に、海上輸送では大気中の塩分や波しぶきによる塩分付着、コンテナ内部の結露が大敵です。梱包内部に一度でも湿気や塩分が進入すれば、到着地で開梱したときには遅すぎる、という状況が現実に起こっています。
防錆乾燥剤の基礎知識
防錆乾燥剤とは何か
防錆乾燥剤は、梱包内部の湿度を吸収し、湿気による酸化反応(錆び)の進行を抑制するために使われます。従来はシリカゲルなどの乾燥剤が主流でしたが、より高機能の防錆剤(VCI:揮発性防錆剤)や、乾燥・防錆の複合タイプなど、より進化した製品が登場しています。
主な種類と特徴
- シリカゲル乾燥剤…比較的安価で入手しやすいが、長期間の湿度低下には限界がある。
- クレイ系乾燥剤…吸湿性能が高く、再生利用が可能。海上輸送用として支持される。
- VCIペーパー・VCIフィルム…揮発成分が金属表面に防錆皮膜を形成し、接触しなくても広範囲で効果を発揮する。
- 乾燥+防錆複合剤…吸湿しつつ防錆成分を蒸散させて相乗効果が期待できる。
理想的なのは輸送期間や温湿度条件、対象物の構造によって最適な組み合わせを選定することです。
真空パック梱包の効果と最新動向
なぜ真空パックが有効なのか
真空パックは、内容物から空気・水分・塩分・その他不純物を極限まで取り除くことで、錆びや塩害の発生リスクを「物理的に」遮断できる点が最大のメリットです。袋内を真空にすれば錆びの三大要因=「酸素」「水分」「塩分」すべてを激減させることが可能となるためです。
近年は、0.07mm以上の高機能ポリ袋やアルミ多層フィルム、VCIコーティング袋など、より耐候性・機密性の高いパッケージ材が普及しています。
残存酸素・残存水分低減の徹底がカギ
真空パックで最重要なのは「どこまで真空度を追い込むか」です。
半導体や精密部品分野では残存酸素濃度を0.1%以下、水分を100ppm以下といった厳しい基準を設けている企業も珍しくありません。
とはいえ、一般的な輸出梱包用途では、膜面破れや脱気ポンプの能力・コストとのバランスも考慮し、現実的な真空レベル設定・袋材選びが必要です。
昭和から続くアナログ悩みとデジタル時代の変化
なぜ古い方法が根強く残っているのか
輸出梱包の現場は、昭和時代からの伝統作業や経験則が大きな部分を占めています。たとえば、「大きめの木箱とたくさんの乾燥剤を放り込む」「見た目で判断して梱包作業を進める」などです。しかし、急速なグローバル化や日本製品の高機能化により、「従来通り」では通用しない時代が到来しました。
現場担当者の経験や勘に頼った作業だけでは、国際基準や顧客の細かな要求にこたえきれない場面が増えています。
デジタル管理とモニタリング技術の台頭
現在、多くの大手メーカーやサプライヤーでは、梱包工程での温湿度ロガー(データロガー)の配置、IoTセンサーでのリアルタイム監視が進み始めています。積載前から出荷中、到着直前までの湿度・温度のログを記録し、開梱時のトレーサビリティとして顧客に提出するといった品質保証手法も登場しています。
こうしたデジタル化は、「何となく大丈夫」から「データに基づいた安心」への大きな転換点です。
防錆乾燥剤と真空パックの組み合わせによる最適解
組み合わせ例の実践手順
1. 製品表面の微細な水分・汚れを完全除去
輸送前に脱脂・洗浄を徹底し、清浄な状態にします。錆びは微量の水分・油分でも進行するため、作業精度の高さが問われます。
2. 防錆乾燥剤の適正量を選定
「なんとなくたくさん入れる」のではなく、パッケージ内の空間体積・輸送日数・対象部品の材質・地域の気候などを分析し、科学的に適正量を算出します。
3. 高機能真空フィルムの選定
輸送期間・取り扱い条件を考慮し、厚手のナイロンポリ袋・アルミ多層フィルム・VCIコーティング袋などから最適なものを選びます。
4. 真空脱気工程の実施
製品+乾燥剤を袋に入れ、シーラーで密封。真空ポンプで極力空気を抜きます。ポンプの種類や保守、漏気テストも要注意です。
5. 箱詰め・固定・最終外装処理
衝撃緩衝材でパッケージを保護し、外装にバーコードや温湿度ロガーを装着することで、トラブル時の原因追及を容易にします。
現場で役立つ「一工夫」
・現場作業者への実地教育(防錆剤や各設備の使い方、ロガーの設置方法)
・サプライヤーからの納入時点で梱包状態・異常の有無を撮影し、トレーサビリティ確保
・異常事例が出た際のフィードバック体制整備(アンケートやクレーム分析)
こうした積み重ねが、現場品質をワンランクアップさせます。
塩害対策強化によるビジネスの優位性
信頼性と差別化に直結
海外取引先にとって「錆びなし・異常なし」の現地到着は、信頼性の「見える化」に直結します。開梱・検品時にトラブルが多発すれば、ビジネス継続にも響きます。真空パック+防錆乾燥剤+デジタル管理の三位一体を実践することで、「日本品質」を維持・アピールできます。
日本のものづくり現場への期待と提言
日本の現場力は、世界から根強い支持を受けています。しかし、これから先は「勘と経験」だけでなく理論とデータに裏打ちされた現場力、「変化を恐れない柔軟性」が不可欠です。防錆乾燥剤と真空パックの効果を体感しやすい現場こそ、アナログとデジタルの融合現場への進化を先取りすべき分野です。
まとめ:バイヤー・サプライヤー双方が知っておきたいポイント
輸出梱包の塩害対策では、防錆乾燥剤と真空パックの合理的な併用が有効です。現場での地道な作業の見直し+データ管理・モニタリング強化が、グローバル時代の品質保証には不可欠です。
バイヤー側は仕様書や品質基準への理解を深めること、サプライヤー側は現場からの具体的な改善提案・技術革新で差別化を目指すことが、双方の発展につながります。
「塩害対策」の本質は、単なる錆び止めにとどまりません。
日本の製造業の粘り強さ、現場力の高さ、そして新しい発想・挑戦を世界に示し続けることこそが、これからの持続的成長のカギです。
梱包ひとつ取っても、日本の誇る現場イノベーションは進化し続けています。皆さまと共に、変革の先にある新しい価値を見つけていきましょう。
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