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液体向け除菌用多孔質膜の試作開発

目次
液体向け除菌用多孔質膜の試作開発とは
近年、食品、医薬、バイオ、化学といった幅広い分野で、液体の清浄化・除菌ニーズが高まっています。
その中で、除菌用多孔質膜の果たす役割は年々大きくなっています。
今回は、製造業現場からの目線で、「液体向け除菌用多孔質膜」の試作開発について、基礎知識から応用、そして今後の業界動向まで詳しく掘り下げていきます。
この解説では、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場としてバイヤーの真意を知りたい方、そして現場で実際に導入検討や運用に関わる方に向けて、現場実践的かつ業界全体を俯瞰する視点を提供します。
液体用除菌多孔質膜 ― 基本概念の再整理
多孔質膜とは何か
多孔質膜とは、肉眼では見えない無数の微細な孔(ポア)をもつ薄膜です。
液体を通過させつつ、サイズや特性に応じて微粒子や微生物などを分離・除去できることが特徴です。
材質は高分子樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホンなど)のほか、セラミックや金属、繊維なども選択肢となります。
なぜ液体向け除菌なのか
従来、除菌と言えば加熱殺菌や薬品殺菌が主流でした。
しかし、熱に弱い成分のある液体や、化学成分を添加できない用途、工程の効率化ニーズにより「ろ過による物理的除菌」の需要は加速しています。
食品・飲料分野ではフレーバーや栄養成分の変性回避、医薬・バイオでは薬効成分や細胞へのダメージを最小化できるため、多孔質膜ろ過は今や必須技術となっています。
液体用除菌膜の開発に求められる高機能化の背景
除菌性能の進化
0.2ミクロン(μm)以下のポアサイズがスタンダードだった時代から、より細かな異物・ウイルスの分離をめざし、膜構造の高精密化が進んでいます。
また、耐薬品性や耐熱性、長持ちする耐久性も厳しく要求されています。
処理量・プロセス適合性の追求
量産工程で必要とされる流量や、連続稼働性も無視できません。
フィード圧、逆洗・洗浄性、目詰まり耐性といった運用性、ランニングコスト削減なども設計段階から求められています。
昭和型アナログ現場の現在地 ― 開発現場のリアル
今なお根強い勘と経験
現場では「膜開発の勘と経験」が重宝されるのが現実です。
配合設計や成膜条件設定、パイロットスケールでの試作など、セオリー通りにいかない場面が多くあります。
量産化を睨んだ再現・安定性確保のためには、試作段階での地道な微調整の積み重ねが鍵となります。
他部門との垣根を超えた連携
試作開発段階で、研究・開発・生産技術・調達・品質保証・営業など関係部門の連携が必須です。
しかし、いまだ縦割りや情報断絶が障壁となる伝統的組織も多いのが現状です。
液体用除菌多孔質膜の試作開発プロセス
1. 要件定義とスペック策定
バイヤーやユーザーの要求仕様を正しく理解し、どこまで妥協できるか、どこに付加価値を持たせるかを明確にします。
ろ過すべき液体の物性、対象となる微生物や不純物、必要ろ過性能(除去率、流量、耐久性など)を丁寧に整理します。
将来的な工程負荷やコスト意識もこの段階で共有しておくことが重要です。
2. 材料選定と設計仮説の立案
膜材料の選定は、性能を大きく左右します。
また、孔径制御や支持体構造、表面処理追加(疎水・親水、抗菌など)の有無もこの段階で計画します。
このとき、サプライヤー側がバイヤー視点で「なぜこの材料なのか」を自問し、明確な根拠や優位性を示すことが、信頼獲得に結びつきます。
3. 試作実施と分析・評価
ラボスケールからパイロットスケールへ移行し、ろ過試験や滅菌試験、長期耐久テストを繰り返します。
ここで重視すべきは「評価データから次工程へのフィードバック力」です。
計測機の選定や試験条件、サンプル数の持たせ方ひとつでも再現性・信頼性は大きく差が出ます。
この現場力が、後工程や量産に直結するため、昭和流の職人技と最新のデータサイエンスの融合が求められています。
4. 量産移行とコスト・品質安定化
実機試作や初期ロット生産で想定外の問題が露呈するのは決して珍しくありません。
現場・調達・品質が密に連携し、「なぜ不具合が生じるのか」を深堀りし続けるPDCA(計画-実行-評価-改善)サイクルを高速でまわすことが差別化につながります。
バイヤーとサプライヤーの意図 ― ギャップを埋めるアプローチ
サプライヤーから見てバイヤーの本音を察知するには、単なるスペック比較ではなく、「どんなリスクを回避したいのか」「どこに価値を置いているのか」を意識的にヒアリングすることが重要です。
バイヤーとしては、
・実際の現場運用でどれだけ使いやすいか
・クレーム時の迅速対応力
・長期供給体制とコストの納得感
が重視されがちです。
サプライヤーは常に「困りごとを価値に変える提案力」、営業/技術/現場が一体となった総合力が求められます。
双方の情報格差を埋めるためには、時に会議室を飛び出し、現場や工場見学会・ワークショップの活用、「一緒にモノを触りながら考える」泥臭い交流が有効です。
今後の業界動向と新たな地平
デジタル化と昭和的アナログの融合
AI・IoT・データサイエンスの浸透で、「勘・経験・度胸(KKD)」は「データ・仮説・現場力」の融合へと進化しています。
多孔質膜開発も、従来の熟練技術を活かしつつ、シミュレーションベースの最適設計や、AIによる不良原因予測、自動化プロセスの活用により、さらに高性能化・効率化が進むでしょう。
一方、現場では「想定外」「突発トラブル」「人の手技」が不可欠な工程も数多く残っています。
今後もアナログ的現場感覚とデジタル革新の“両輪”が続くと考えます。
新市場・新価値の台頭
飲料、医薬、バイオに加え、化粧品、特殊化学、次世代電池関連など新規用途も増加しています。
さらには、二酸化炭素の分離や廃液浄化、カーボンニュートラル対応の工場プロセスなど、社会的課題解決型の用途にも多孔質膜が活躍する時代となりました。
今後は「持続可能性(サステナビリティ)」を意識した開発競争がより熾烈になるでしょう。
まとめ ― 製造業の地平線をともに切り拓くために
液体向け除菌用多孔質膜の試作開発は、技術革新の最前線でありながら、現場の手触りや泥臭い工程が今なお重視される分野です。
現場では、失敗と学び、挑戦の連続が日常です。
バイヤー・サプライヤーそれぞれが本音を語り合い、実際に“もの”に触れ合うことで初めて、本質的な価値や優れたソリューションが生まれます。
昭和から続くアナログの技、その現場ならではの知恵、そして新しいデジタルの知見――これらをかけ合わせることで、これからの製造業は新たな地平線を切り開いていけるはずです。
これから液体向け除菌用多孔質膜の開発や導入に関わるすべての製造業の皆さんが、課題と向き合いながら、現実的かつ創造的な挑戦を続けることを心から応援しています。
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