投稿日:2025年2月20日

【射出圧縮成形】樹脂流動ムラを抑え、寸法安定性を高める試作技術

はじめに

射出成形は多くの製造業で用いられているプラスチック加工技術のひとつです。
しかし、通常の射出成形には樹脂流動ムラや寸法不安定性といった課題が存在します。
そこで、この問題を克服するための技術として「射出圧縮成形」が注目されています。
本記事では、射出圧縮成形の基本的な仕組みから、樹脂流動ムラを抑え、寸法安定性を高めるポイントについて解説します。
また、製造業に携わる方々に向けて、実践的な活用方法についてもご紹介します。

射出圧縮成形とは

射出圧縮成形は、射出成形と圧縮成形の二つのプロセスを組み合わせた成形方法です。
従来の射出成形では樹脂を一度に金型内に充填するのに対し、射出圧縮成形では樹脂を部分的に充填したあとに金型を閉じて圧縮することにより、樹脂を金型内で均一に流動させます。
これにより、成形品の寸法精度が向上し、樹脂の流動ムラを抑えることが可能になります。

射出圧縮成形の工程

射出圧縮成形の工程は次のようになります。

1. **プレ射出**:
樹脂を金型に部分的に充填します。
この段階では、金型内の空間は完全には埋まっていません。

2. **圧縮**:
金型を徐々に閉じていき、樹脂を金型全体に行き渡らせます。
この段階で樹脂はさらに成形され、圧縮力によって均一に流動します。

3. **冷却および除去**:
樹脂が冷却し固化したら、金型を開いて成形品を取り出します。

この工程によって、成形品の精度や外観品質が向上します。

射出圧縮成形の利点

射出圧縮成形には様々な利点があり、特に以下の点が注目されます。

樹脂流動ムラの軽減

射出圧縮成形では、従来の射出成形に比べて樹脂の流動がより均一になります。
金型を締め付ける圧縮工程により、樹脂が均等に散らばり、ムラが少なくなります。
これにより、成形品の品質が向上します。

寸法安定性の向上

射出圧縮成形は、圧縮工程で樹脂を均等に流動させる特性があるため、寸法のバラツキを低減します。
これにより、特に複雑な形状や高精度が求められる製品に対して、安定した品質を提供することが可能になります。

材料使用量の削減

通常の射出成形に比べて、射出圧縮成形では樹脂の充填量を最適化することができます。
圧縮工程において効率的に樹脂が流動するため、材料の無駄を減らし、コスト削減に寄与します。

押出不良の低減

射出圧縮成形では、樹脂が圧縮しながら流動するため、気泡や異物の混入を抑制します。
これにより、成形品の外観品質が向上し、押出不良品の発生率を低下させることができます。

射出圧縮成形の課題

射出圧縮成形には多くの利点がある一方、以下のような課題も存在します。

金型の精度と設計

射出圧縮成形では、金型の精度が成形品の品質に大きな影響を与えます。
正確な閉鎖動作や耐久性のある金型の設計が重要です。
したがって、銅型の設計や製造には高度な技術と設備が必要です。

設備コストの増加

射出圧縮成形を行うためには、専用の成形機や金型が必要となります。
これにより、初期投資が増加し、設備コストが高くなる可能性があります。
特に中小企業にとっては、導入のハードルが高くなるかもしれません。

技術スタッフの育成

射出圧縮成形には、高度な技術力が求められます。
そのため、技術スタッフの育成や教育が重要です。
技術者が限られている中で、効率的な教育プログラムの導入が課題となります。

射出圧縮成形を活用するためのポイント

射出圧縮成形を効果的に活用するためには、以下のポイントが重要です。

精密な金型設計

成形品の精度向上のためには、金型の設計段階から精密な作業が求められます。
高精度の金型を製作することで、成形品の品質向上を図ることができます。

材料選定の最適化

使用する材料の特性を理解し、最適な材料を選定することが成形品質の向上に繋がります。
特に、樹脂の流動性や耐熱温度などに注意を払いながら材料を選ぶことが重要です。

技術力の向上

射出圧縮成形の効果を最大限に引き出すためには、技術者のスキル向上が欠かせません。
最新の技術情報やトレーニングを取り入れ、常に技術力の向上を図ることが求められます。

まとめ

射出圧縮成形は、樹脂流動ムラの軽減や寸法安定性の向上といった利点を持ち、製造業における成形技術の重要な一環として注目されています。
この技術を効果的に活用するためには、精密な金型設計や材料選定、技術力の向上が不可欠です。
設備コストや技術者の育成といった課題もありますが、これらを克服することで、より高品質な製品を提供することが可能となります。
射出圧縮成形を導入することで、製品の競争力を強化し、新たな市場の拡大を目指すことができるでしょう。

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