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穴あけ後ロールかロール後穴あけかの永遠の議論

目次
はじめに
製造業の現場で頻繁に巻き起こる「穴あけ後ロール」か「ロール後穴あけ」か——この議論は、決して新しいテーマではありません。
むしろ、昭和の時代から令和の現在にいたるまで、多くの現場を悩ませ続けてきた永遠の論争です。
生産効率、品質、コスト、安全性、設備投資など、あらゆる観点から語られるこのテーマですが、一概に「これが正解」と断じることはできません。
この記事では、現場経験20年以上の筆者が、最新の自動化傾向やアナログな現場事情も踏まえ、実践的かつ多角的に「穴あけ後ロール」と「ロール後穴あけ」のメリット・デメリットを掘り下げます。
これからバイヤーやサプライヤーを目指す方にも、両者の本音や背景が伝わるよう、現場目線で解説します。
そもそも「穴あけ後ロール」「ロール後穴あけ」とは
用語の意味とプロセスの全体像
多くの日本の製造現場では、シート状の金属やフィルム素材(例えばアルミ・ステンレス・樹脂フィルムなど)を連続的に加工する際に、「穴あけ」と「ロール巻き」の工程がセットで登場します。
「穴あけ後ロール」とは、まず板もしくはフィルム素材に所定の穴あけ加工を行った後、それをロール状に巻き取る方式です。
一方、「ロール後穴あけ」とは、まず大きなシートやフィルムをそのままロール巻きにして保管・運搬し、後工程で必要に応じて穴あけ加工を行う方式になります。
どちらが先かで生産プロセスやその先に待つ課題、利点が大きく変わります。
なぜこの議論が絶えないのか
このテーマが長年議論され続けるのは、工場ごとに事情が違うからという単純な理由だけではありません。
生産する品種や数量、設備の歴史、品質要求、安全基準、さらには「人」のスキルや社風にまで関わる深いテーマだからです。
とくに、属人的でアナログな要素を多く含む現場が多い日本では、「慣例」による根強いオペレーションがザラに見られます。
では、それぞれの方式の特徴と現場に与えるインパクトを掘り下げましょう。
穴あけ後ロールの特徴
メリット
まず、「穴あけ後ロール」の最大の利点は、一貫生産による工程短縮と品質の安定です。
以下の2点が特に現場で重宝されます。
1. 位置精度の安定
穴あけとロール巻きが同一ラインで連続的に行われるため、パンチ穴の位置や形状がバラつきにくく、製品精度を確保しやすいです。
特にフィルム材やシート材でリピート間隔・精度が厳しい場合には必須となる方式です。
2.トータルコスト・リードタイムの短縮
工程をまとめてしまうため、中間在庫や運搬の手間・コストが激減します。
また「穴あけ工程」と「ロール工程」の間で仕掛品を保管する必要がなく、現場の5Sや省人化にもつながります。
デメリット
便利に見える「穴あけ後ロール」ですが、万能なわけではありません。
1. トラブル時の影響範囲が大
連続一貫加工のため、一部の穴あけ不良や異常が発生した場合、そのままロールに取り込まれるリスクがあります。
金属や樹脂系の素材によっては、異物混入やバリ発生が原因で全ロールNGとなる事態も想定されます。
2. 装置コストと機器保守の複雑化
高精度の連続穴あけ機とロール巻き機を同期させる必要があり、設備投資コストが大きくなりやすいです。
消耗部材・メンテナンスも専用ノウハウが必要になります。
ロール後穴あけの特徴
メリット
「ロール後穴あけ」は、ロールの状態で必要なタイミング・場所で穴あけ加工を行う方式です。
この方式の主な利点は次の2つです。
1. 多品種・小ロット対応力の高さ
製品ごとに異なる穴寸法・位置・数量に柔軟に対応できます。
最近の多様化する市場・バイヤーの要求に即応しやすいスタイルです。
2. 不良発生時のリカバリが容易
ロールそのものは未加工のため、穴加工時に不良発生があれば、その区間だけ差し戻しや廃棄で済みます。
大きな材料ロス・作業ロスを最小限に抑えやすいのが特徴です。
デメリット
「ロール後穴あけ」にも課題は存在します。
1. 位置精度の管理が難しい
緩いロール巻きや気温・湿度の変化で基材が伸縮たりシワになったりする場合、穴あけ位置ズレが生じやすくなります。
高精度な製品には不向きな場合もあるため、設備やオペレーターのスキルが問われます。
2. 工程数と管理コストの増大
穴あけ作業が別工程(多くの場合は外注)となるため、リードタイムが伸び、運搬・在庫・現場間のやりとりが複雑化します。
トータルQCD(品質・コスト・納期)マネジメントの目線が必須です。
業界の現状とトレンド
自動化の波とDXの進行
令和の今、IoT・自動化・DX(デジタルトランスフォーメーション)が業界全体についに波及してきています。
単純な「穴あけ」工程にも、画像処理による異常検出や、自動補正機能付き穴あけ機など先進的な設備導入が増えています。
従来はラインごとに属人化していた「職人技」に頼るしかなかった場面でも、各種センサーやAI異常判定、オンライン監視体制の導入で、再現性・量産安定性が高まっています。
こうした技術革新が、「穴あけ後ロール」でも「ロール後穴あけ」でも実装できれば、従来のデメリットは大きく緩和されます。
アナログの呪縛、昭和から現代への壁
とはいえ、多くの製造業現場では「それでもうちは昔からこのやり方」というアナログな慣習が根強く残っています。
工程ごとに担当部門や個人が細かく割り振られているため、「穴あけ工程」と「巻き取り工程」が別の担当者・仕入先・予算体系となっていることもザラです。
結果、「総合的な現場最適」よりも「自分たちのやりやすさ」や「昔の投資資産の延命」が優先される場合が多く、業界構造改革の足かせになっているのが現実です。
どちらを選ぶべきか?判断のポイント
バイヤー目線:コストとQCDバランス
バイヤーとして重要なのは「求められる品質レベルと納期、コスト」のトータルバランスです。
もし量産かつ厳しい寸法精度が必要であれば、「穴あけ後ロール」が有力候補です。
一方、多品種・小ロット・短納期対応や、現場で即座に仕様変更対応したい場合は「ロール後穴あけ」がリスク管理面も含めて有利となります。
サプライヤー目線:納品条件や設備適性の分析
サプライヤーにとって重要なのは、「自社設備と顧客要求・取引条件が合致するか」「リスク低減の仕組みを持っているか」です。
得意な方式をアピールしつつも、設備増設への投資余力、現場オペレーターのスキル、人材配置も現実的に見きわめる必要があります。
また、バイヤー側のQCD要求が高すぎる場合は、共同改善や設備共同投資など、新しい発想での協業も検討する時代になっています。
ラテラルシンキングで新たな一手を
部分最適→全体最適へ、フロー全体を見直す
「穴あけ後ロール」か「ロール後穴あけ」かという二者択一から脱し、全プロセスの最適化や価値創出をラテラルシンキングで考えることは今後さらに重要です。
一例を挙げましょう。
・デジタル管理を徹底し、「どこで穴あけするか」をリアルタイムで判断切替できるハイブリッド生産ライン。
・AIによる需要予測・工程異常予測を行い、最適なタイミングでプロセス順序や投資配分を自動アジャスト。
・サプライヤー・バイヤー双方が参画し、共同でトータルコストを下げる「コンソーシアム方式」の設計。
これまでになかった「つなぐ」「混ぜる」「自動で分岐」といった価値観が、製造業の新しい地平線を開拓していきます。
まとめ:現場の声と本質的な価値創出を
「穴あけ後ロール」か「ロール後穴あけ」か——この永遠の議論に正解はありません。
最終的に重要なのは「なぜいまこの方式か」「どうやって現場や全体に価値創出できるか」を常に問う姿勢です。
現場で20年以上の経験を持つ筆者として伝えたいのは、「伝統」や「慣習」も大切ですが、それだけに縛られず、技術・人材・現場目線を掛け合わせて次なる一手を模索し続けることです。
歴史ある悩ましいテーマだからこそ、たゆまぬチャレンジと現場の知恵こそが、昭和から令和、そして未来の「強いモノづくり日本」を支える原動力だと信じています。
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