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購買部門が取り組む環境対応とコスト削減の両立事例

目次
はじめに
製造業がグローバル展開を加速させる中で、調達購買部門の役割は年々重要性を増しています。環境への配慮が企業価値の核となる一方、コスト削減のプレッシャーは依然として厳しい状況です。特に、日本の製造業は「コスト=品質」と言わんばかりに削減一辺倒の時代から、持続可能性に舵を切る企業が増えてきました。しかし、昭和から続くアナログな体質や、古い価値観が根強く残る現場も多々あります。本記事では、20年以上現場を経験してきた私の視点から、環境対応とコスト削減の両立を実現している購買部門の実践事例を紹介します。
購買部門に求められる環境対応の現状
グローバルトレンドとサプライチェーンの変革
近年、ESG投資やSDGsが注目され、サプライチェーン全体の環境負荷低減が企業に求められています。国際的にはCO2排出量削減、有害物質の排除などが必須条件となりつつあります。調達購買部門は製品や部材選定、サプライヤー管理の入り口として、その影響は計り知れません。
取引先選定における環境評価
従来の調達はコスト・納期・品質(QCD)が最優先事項でしたが、近年では「環境」の項目も重視されています。ISO14001認証の有無、環境リスク評価、サプライヤーの省資源化活動など、評価指標は多様化しています。
コスト削減が重視される背景
バイヤーの現場感覚と経営層の期待
現場に根付く「一円でも安く」は、製造業のDNAとも言えます。購買部門担当者は調達価格低減の目標数字を常に追いかけます。「昭和のコスト至上主義」から脱却しきれず、「初期費用が高いグリーン資材は後回し」という声も聞かれます。
自動化、省人化によるコスト構造の変化
最近では工場の自動化やDXといった流れから、人件費より設備投資のウェイトが増え、購買部門でも新しいスキルが求められるようになりました。従来の価格交渉一本槍に加え、サプライヤーとの協働による原価企画、ライフサイクルコスト視点の重要性が高まっています。
両立を実現するためのマインドセット
部分最適から全体最適へ
各部署ごとに最善を尽くしても、全社最適にはなりません。調達購買部門は「調達コスト」だけでなく「環境リスク」「LCA(ライフサイクルアセスメント)」など全体最適で判断する必要があります。
昭和マインドを超えるためのラテラルシンキング
「安い原材料を大量に仕入れれば良い」という価値観から、「素材そのものの見直し」「サプライヤーとの長期関係構築」「再利用・リサイクルとの統合」など、発想を横に広げるラテラルシンキングが鍵を握ります。
環境対応とコスト削減を両立させた実践事例
1. リサイクル素材の活用と全体コスト低減
ある自動車部品メーカーでは、樹脂部材で廃棄コストが課題となっていました。調達部門がサプライヤーと交渉し、リユース可能な樹脂ブロックの循環スキームを設立。初期費用こそ増えたものの、廃棄コスト削減・運搬費削減・新素材のCO2排出量低減によって、2年でトータルコストが15%減少しました。
2. 電力使用量可視化によるサプライヤー支援型コストダウン
ある電子部品メーカーでは、購入部材のうち、加工プロセスで大量の電力消費が問題となっていました。調達部門がサプライヤーと連携し、現場の電力使用量を可視化。製造条件の調整や不良品低減活動を共同で行い、サプライヤーの生産性向上を支援しました。その結果、原価低減とCO2排出量削減の両立が実現しました。
3. 調達先の多元化と地方創生の両立
サプライチェーンのリスク分散は、2020年以降の大きなテーマです。ある大手メーカーでは、環境負荷の低い地域中小企業と連携し、調達先を分散。地方の地場産業と共同で環境対応品を開発し、結果的に物流距離も短縮できたことで輸送コストの削減にも成功しました。
4. グリーン調達ガイドラインの共同企画
複数社で構成される自動車業界サプライチェーンの中で、「グリーン調達ガイドライン」を業界横串で策定。購買部門が旗振り役となり、個社ごとに依存していた環境管理基準を統一。結果的に重複する監査や対応コストが削減され、サプライヤー全体の環境負荷低減も進みました。
購買部門の成功事例から学ぶポイント
トップマネジメントのコミットメント
環境投資は目先の利益には直結しないことも多く、現場の巻き込みにはトップダウンの意思決定が不可欠です。成功している現場は経営層・購買・現場の縦横連携がスムーズです。
サプライヤーとの真のパートナーシップ
購買部門が一方的にコスト削減を求めるのではなく、サプライヤーと一緒に改善サイクルを回し、現場課題を共有する姿勢が必要です。この関係構築がESG課題にも直接効きます。
データ活用による意思決定の高度化
多様なデータを活用した意思決定力が問われます。CO2データ・エネルギー消費・原価構造など、デジタルを活用した可視化が、旧来の属人的な購買活動を変革します。
昭和型バイヤーとこれからのバイヤー像
長年、購買部門は「値引き交渉」「納期調整」「取引先管理」といった実務重視でした。しかしこれからは「地球環境まで考慮したサプライチェーン設計」「企業のサステナビリティ推進」といった視座が不可欠です。
特に昭和の成功体験に縛られているベテランも、若手も、「調達=単なるコストセンター」ではなく「企業競争力の源泉」だと発想を広げることが重要です。環境対応を無視してコストダウンだけを追いかけては、いずれ市場や社会から見放されかねません。
サプライヤーとして購買部門の思考を知る意義
サプライヤーの立場から見ても、これからは自社の環境対応力(製造プロセスの省エネ、新素材の提案、LCAの導入など)をプロアクティブに提案することが競争優位となります。
購買部門が重視する「環境」と「全体コスト」の考え方を理解し、単なる価格競争から一歩脱却した関係づくりが、長期的な取引継続につながります。
まとめ:購買部門は製造業の未来を創る
購買部門が目先の価格交渉を超え、環境対応とコスト削減の両立を見据えることは、製造業の持続的な発展と競争力向上に不可欠です。昭和から続く価値観を超え、サプライチェーン全体で知恵を出し合い、共に新しい地平を切り拓いていくことが重要です。
これからも現場とバイヤー、サプライヤーが三位一体となり、日本のものづくりをさらに進化させていくことを期待しています。
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