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輸入物流を効率化して日本製品の調達コストを削減する購買部門の工夫

目次
はじめに――グローバル化と日本の製造業が直面する調達コスト
日本の製造業は、長年にわたり「高品質・高信頼」を武器に、世界市場で確かな地位を築いてきました。
しかし、近年では円安、エネルギーコストの高騰、サプライチェーンの分断など、
日本企業を取り巻く調達環境は大きく変化しています。
特に、輸入に頼る部品や資材が多い企業にとっては、輸入物流の効率化とコスト低減が急務です。
それは単なるコストカットの話だけではなく、安定調達や品質維持、ひいては企業競争力に直結する重大なテーマとなっています。
そこで本記事では、実際の製造現場で培ったノウハウと、現場感覚を交えながら、
「輸入物流の効率化で調達コストを下げる購買部門の具体的な工夫」について詳しく解説します。
なぜ今、輸入物流の効率化が求められているのか?
複雑化する調達ルートと国際情勢の変動
かつては、部品の多くを国内サプライヤーから調達していた日本のメーカーですが、
コスト競争力向上のため、中国やASEAN諸国、インド、東欧など、調達先は世界中に広がりました。
一方、政治的な緊張や、パンデミックの発生など、予測不能なリスクも顕在化し、
物流の「モノ・カネ・ヒト」の流れが複雑化しています。
従来型の「昭和から続くアナログ調達」では、こうした変化に柔軟に対応できないのが実情です。
輸入コスト高騰が製品価格に直結
輸入品の調達には、製品自体の価格(FOBなど)に加え、
海上・空輸運賃、関税、保険料、通関費用、国内配送費、在庫コストなどが加わります。
為替変動や燃料高騰も追い打ちをかける中、「何となく契約した物流業者に全て任せている」
という姿勢では、知らぬ間にトータルの輸送コストが膨れ上がってしまいます。
物流ルートやスキームの見直しこそ、購買部門に求められるマストの戦略となっているのです。
物流コストを可視化する――まずは現状把握から
明確な「物流KPI」を設定する
最初の一歩は、輸入物流に関するコストをできるだけ「細かく分解」し、現状を正しく把握することです。
代表的なKPIは、
– 一品あたりの総物流コスト(円/kg、円/個)
– リードタイム(注文~納品までの所要日数)
– 在庫回転率
– 荷役・保管費の比率
– イレギュラー発生件数
などです。
ExcelやBIツール、市販のサプライチェーン管理システムを活用して、
自社の輸入物流コストを「見える化」しましょう。
アナログな属人管理から脱却する
いまだに「購買担当Aさんしか詳細を把握していない」「現場の○○課長の勘頼み」という状況は珍しくありません。
しかし激変する国際物流下では、正確なデータに基づいた意思決定が必要です。
システム導入や、日次・週次・月次でKPIをレビューする体制づくりも、効率化の出発点となります。
調達コスト削減のための物流効率化アプローチ
1.複数の物流業者・フォワーダーを比較し、競争原理を働かせる
最も基本的で効果の高い手法が、「物流サービスの相見積もり」です。
数社から物流見積りを取り、価格、サービス内容、リードタイム、柔軟性、トラブル対応力などを比較します。
とくに、従来からの付き合いや一社依存が強い場合、知らぬ間に条件が不利になっているケースもあります。
RFP(提案依頼書)を活用して各社に公平な条件で提案を依頼し、ベンチマークを作りましょう。
2.コンソリデーションによる「まとめ輸送」活用
複数の部品や異なるサプライヤーの商品を一つのコンテナや航空貨物でまとめて輸送(コンソリデーション)することで、梱包・輸送単価の大幅ダウンにつながります。
とくに小ロットの調達が多い部材や、輸送頻度が高い部品には有効です。
物流業者やフォワーダーに「コンソリ化できる品目・スケジュール」を提案させることで、より合理的な物流設計が可能になります。
3.納入リードタイムの見直し・発注タイミングの最適化
緊急輸送や定期便の利用を使い分け、納期に余裕がある場合はLCL(混載)や船便を使い、コスト低減を図ります。
逆に、工程上どうしても必要な場合のみエア便に切り替えるなど、
発注業務自体も「物流コストとリードタイム」のバランスで設計することが重要です。
また、「曜日指定」「月初・月末に偏る」発注慣行も、輸送効率を下げる要因です。
定期的に購買部門で発注タイミングや納期パターンを見直しましょう。
4.現地サプライヤーとの連携強化・梱包仕様の標準化
輸送費に大きく影響する要素の一つが、「梱包サイズや重量」です。
現地サプライヤー任せにせず、日本側から「最適な積載効率になるサイズ・形状」
「再利用可能な梱包材」などを指定し標準化することで、空間の無駄を減らしコスト削減できます。
また「バイヤー」としての立場からサプライヤーへ物流改善提案を行い、
双方にメリットがあるスキームを探る姿勢も大切です。
5.SCM(サプライチェーンマネジメント)システム導入とデジタル技術活用
古い体制では、紙の納品書や手書き指示が主流ですが、今やデジタル化は避けて通れません。
入出荷データ、在庫データ、納期進捗、通関情報などを一元管理できるSCMシステムを導入すれば、
「どこでロスが発生しているか」「どこに改善余地があるか」が一目で分かるようになります。
AIやIoTによるトラック位置のリアルタイム管理、ブロックチェーンによる文書管理なども徐々に導入が進み、次世代の効率化へと繋がっています。
バイヤーとして意識したい視点――現場感覚×戦略性
「3本の矢」戦略:価格交渉・品質管理・リスク対応のバランス
バイヤーが「輸入物流効率化」を進める際、最も避けたいのは「コストだけ下げて品質や納期が犠牲になる」ことです。
– 物流会社やサプライヤーと密に情報共有し、リードタイム遅延や品質劣化リスクを防ぐこと、
– 不測の事態(ストライキや天候不順など)に備えて複数の輸送ルートやバックアップ業者を持つこと、
– 調達価格と物流コスト、在庫リスクを総合的に勘案したうえで、
「製品LCA(ライフサイクルアセスメント)」の視点を持つこと
こうした戦略的目線が、「現場の泥臭さ」と両立するバイヤー力だと私は考えます。
サプライヤー視点で知っておきたい:バイヤーは「物流」をどう考えているか?
サプライヤーであっても、「なぜバイヤーが細かく物流コストを比較し、梱包・納期に厳しく指示を出すのか?」の本質を理解しましょう。
工場経営はわずかなコスト変動が利益を大きく左右する世界です。
輸出入に携わる現場では、「作る・売る」だけでなく、「どう届けるか」まで一緒に知恵を出し合うことで、信頼と長期取引を築くことができます。
昭和型アナログ文化を乗り越えるために――現場の抵抗をどう変革するか
「これまで通り」の壁と、現場主義を活かした改革の方法
多くの製造業、特に老舗では、昔ながらの方法や「前例踏襲主義」に根強い抵抗感が存在します。
「昔から○○運輸に任せている」「システムを触るのは苦手」といった声もよく聞きます。
しかし、改革は「現場を否定する」のではなく、現場の知恵や工夫をシステムに取り込む形から始めましょう。
実績データを示して小さな改善を積み上げ、その成果を現場に「見える化」する。
また、現場担当者自身を物流プロジェクトの一員として巻き込むことで、
「自分ごと」として改善策を推進していくことができます。
経営層の理解とボトムアップの両輪が成功のカギ
トップダウンだけでは現場は動きませんし、反対に現場だけで全体最適の判断は難しい。
経営層も購買・SCM部門も現場も、それぞれの視点から意見を出し合い、目標を共有することが
「昭和型からの脱皮」に不可欠です。
まとめ――「物流=コストセンター」から「競争力の源泉」へ
日本の製造業はかつて「モノづくり」だけに注力していれば良い時代がありました。
しかし今や、原材料・部品の供給網が地球規模で広がったことで、
「仕入れ・運び・届けること」自体が、品質同様に事業競争力へと直結しています。
購買部門は「単なるコストカッター」ではなく、自社のサプライチェーン全体を俯瞰し、
データと現場感覚を武器に「付加価値を創出するプロフェッショナル」へと進化すべきです。
物流の効率化という取り組みは一朝一夕ではありません。
数年単位で改善とアップデートを繰り返しながら、「強い日本型製造業」再生の大きな柱となるはずです。
本記事をきっかけに、一人一人の現場から物流改革の第一歩を踏み出していただければ幸いです。
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