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在庫回転率を高めて消耗品の資金拘束を防ぐ購買戦略

目次
はじめに:在庫回転率と資金拘束の関係を知る
ものづくりの現場では、原材料や部品、消耗品の確保が命綱です。
「必要なモノが必要なタイミングで届く」
この理想を目指し続けてきた日本の製造業ですが、近年その在庫管理、ひいては資金拘束に由来するリスクの高さが再認識されています。
在庫回転率が下がると、膨れ上がった在庫分の資金が拘束され、キャッシュフローが悪化します。
特に消耗品のような回転が速いはずの品目でも、持ちすぎが常態化している現場は多く見られます。
この記事では、調達購買や現場管理の実務に携わってきた経験から、消耗品の在庫回転率を高め、資金の無駄な拘束を防ぐための購買戦略について解説します。
昭和から続くアナログな習慣が根強い業界事情にも触れながら、現場がすぐに実践できるノウハウ、バイヤーの視点、サプライヤーに知ってほしい“バイヤーの内心”まで掘り下げます。
在庫回転率とは何か、なぜ重視されるのか
在庫回転率の基本
在庫回転率とは、「一定期間の出荷・販売数量を平均在庫で割った数値」です。
年間の出荷量が10,000個、平均在庫が2,000個なら、回転率は5回/年となります。
消耗品の場合、多品種少量・安価だけに“つい”多めにストックしがちですが、
実は下記のようなデメリットが潜んでいます。
・会社資金が、回転しない在庫に固定される
・保管スペースの占拠、増設コストの発生
・残存リスク(陳腐化・経年劣化・棚卸時の廃棄増加)
・管理工数・棚卸コストの増加
回転が悪い=必要以上に持っている、ということです。
この無駄をどこまで削れるかが、工場全体の収益性に直結します。
なぜ今、在庫回転率が重視されているのか?
近年、世界的なサプライチェーン寸断(コロナ禍や地政学リスク等)を背景に、“持つ在庫は最小限”の方針が再注目されています。
かつては「足りなくなる心配」に備えて“多めに持つ”ことが現場正義でしたが、余剰在庫による資金拘束が経営の柔軟性を削いでしまう時代です。
また、EV・デジタル化の潮流で製品ライフサイクルはどんどん短くなっています。
余分な消耗品には「使うチャンスすら来ない」リスクも含んでいるのです。
消耗品で資金拘束が起きる典型パターン
「現場の声」で増える在庫、実はリスク要因
特に昭和的な管理が残る現場では、「前回トラブルで足りなかったから多めに」という積み重ねにより、適正値を大きく上回る在庫が維持される傾向が続きます。
・使い切り前提のペーパータオルや手袋
・間違って注文しがちな工具小物
・なにかと余分に発注される潤滑油や清掃用品
これらの品目は、現場への安心感とのトレードオフで過剰になりがちです。
バイヤーの困りごと「在庫削減は責任不安」との板挟み
購買部門は「在庫を減らしたい」が、減らし過ぎて現場が停まるのは絶対に避けたい。
このジレンマが、「最低必要量に“安全マージン”を大きく上乗せ」の慣習を生んできました。
棚卸で余剰が続いても、「いざ」という時の安全弁としてなかなか削減に踏み出せないのです。
在庫回転率向上のためにバイヤーが取るべき購買戦略
1. 在庫適正化のためのデータ分析と見える化
まず始めるべきは、現行在庫の可視化です。
・各消耗品の出庫履歴、発注頻度と実需のギャップを洗い出す
・ABC分析等、優先して管理すべき品目を明確化する
・年間ピードと異常値をデータで管理する
・購買・現場スタッフと毎月“適正在庫会議”を設ける
これによって、感覚や習慣による「なんとなく多め」がどれだけ損失を産んでいるかがハッキリします。
2. 発注ロットとリードタイムの再設計
「まとめ買いでコストが下がる」という思い込みが業務用品にも強く残っています。
ですが、昨今の物流コストや置き場事情を考慮すると、
多少単価が上がっても“必要最少ロット”で回転数を増す方が資金効率的には有利です。
・リードタイム短縮(緊急対応力UP)
・在庫金額ダウン(キャッシュフロー改善)
・置き場スペースの最適化
サプライヤーと協議し、定期補充(VMIや直納契約)も視野に入れるとさらに回転率UPが見込めます。
3. サプライヤーとの戦略的パートナーシップ
消耗品は「選んで買う」より「安定的に使い続ける」という性質上、仕入先と信頼関係を築くことが何より大切です。
・月次での発注計画共有
・突発需要時の緊急納入体制づくり
・“まとめ契約”で価格と納期の両立
規模の小さな消耗品でも“戦略物資”と捉え、Win-Winとなる契約条件や取り組みを模索しましょう。
サプライヤー側の心得:バイヤーが本当は考えていること
サプライヤーは「急な発注」「都度の値下げ要求」に頭を悩ませがちです。
ですが、バイヤーとしては、
・最小限の在庫で現場の安心を維持したい
・急な需要変動や品質トラブルも避けたい
・資金効率を最優先したい
という切実な事情を持っています。
ですので、サプライヤー側からも
・定期配送、緊急納入など柔軟な納品形態を提案
・消耗品のライフサイクル管理、期限切れ時の交換サービス
・類似品・より高コスパ品への置き換え提案
など、バイヤーの負担や在庫リスクを解消する視点でアプローチすることが、長く選ばれ続ける条件となります。
デジタル化・自動化と在庫回転率の未来
最新トレンド:「アナログ脱却」+「現場密着」の両立
工場現場では未だにエクセルや手書き台帳での在庫管理が多いのが実情です。
ですが、バーコード・RFIDによるリアルタイム在庫監視や、発注自動化、AIによる需要予測が急速に普及しつつあります。
デジタル化によって
・人的ミスの削減
・棚卸工数の大幅減少
・異常消費の早期発見
・在庫回転率の可視化とさらなる最適化
が実現できます。
ただし、現場の生の声がシステムに反映されなければ“使われないシステム”になりがちです。
現場スタッフの声を聞きつつ、IT部門・調達購買・物流と三位一体で進めることが大切です。
今後求められる「人とデジタルのハイブリッド購買」
消耗品は「ただ安く仕入れれば良い」というフェーズから、
予測精度・在庫回転率・資金効率を高め「利益創出する購買部門」へと進化する時代です。
その全ての軸で肝となるのは、「業務全体のプロセスを繋ぐ俯瞰力」と「現場の声を否定しない柔軟性」です。
昭和から続く慣習をリスペクトしつつ、デジタルと人の知恵を掛け合わせた在庫回転率向上の購買戦略こそ、これからの現場で求められるスキルといえます。
まとめ:在庫回転率向上から始まる現場価値の最大化
在庫回転率の改善は、単なる資金拘束対策に留まりません。
キャッシュフローの健全化
工場スペースの有効活用
調達~生産~納品の一体最適化
デジタル活用によるミス削減・業務効率化
バイヤー、現場、サプライヤー全体でのWin-Win構築
これら全ての価値創造の入り口となります。
本記事を参考に、ぜひ自社・自部署の現場で「在庫回転率」というレンズを改めて見直してみてください。
未来志向の購買戦略で、製造業全体の底力アップに貢献されることを心より願っています。
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