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調達改革を掲げるほど社内調整が増えていく現実

目次
はじめに:調達改革はなぜ必要とされるのか
調達部門の最前線に立つ皆さんや、これからバイヤーを目指す方、そしてサプライヤーとしてバイヤーの思考を知りたい方に向けて、この記事では現場目線かつ最新動向を交えながら「調達改革」の本質に迫ります。
日本の製造業は長年にわたり、独自のアナログ文化と緻密な現場力とで競争力を培ってきました。
しかし、グローバル競争が激化し、リードタイム短縮やコストダウン、SDGs対応など新たな社会的要請も高まっています。
こうした潮流の中、調達部門にもデジタル化やプロセス改革が叫ばれ、「調達改革」が合言葉のように掲げられるようになりました。
ところが、その掛け声とは裏腹に、実際の現場では社内調整が増え、かえって仕事が煩雑化するケースが多発しています。
なぜ「改革」が現場に混乱や過大な負担を生むのか。
本記事では、その実態と背景、そして真に進化する調達部門へと成長するための指針を考察します。
昭和のアナログ調達と「調達改革」のギャップ
現場に根付くアナログな調達プロセス
現在も多くの製造業現場では、エクセルや手書きの発注書、電話・FAXによる情報伝達が根強く残っています。
この昭和流アナログ調達プロセスは、現場の“肌感覚”や経験値に依存しており、業務の「属人化」を生みやすい土壌です。
一方で、案件ごとの臨機応変な対応力や、相手(サプライヤー)との長年の信頼関係に支えられた「その場の機転」もまた、現場力の源泉でした。
この感覚が「昔ながらのやり方」での調達を継続させています。
改革の掛け声が示す理想と、現場の現実乖離
サプライチェーン全体の効率化や調達コストの削減、トレーサビリティ確保、BCP強化など、経営視点での改革目標が高まり、ERPやSCP、電子調達システム導入が推進されるようになりました。
しかしながら、「システムに業務を合わせる」ことの負荷が急増。
慣れ親しんだアナログ業務からの変更に対する現場の抵抗感や、全社的な帳票・承認フローの複雑化、IT部門・法務・経理など他部門の巻き込みによる調整業務の増加といった現象が多発しています。
「調達改革」実施後に起こる業務実態
システム導入で増える社内調整の連鎖
調達管理システムの導入により、受発注や見積もり依頼のプロセスが明文化・標準化され、データ管理が向上する一方、「例外処理」への対応や運用上の「グレーゾーン」部分で判断が求められる場面が増えました。
従来であれば現場で即座に判断・対応できていた内容が、システム化によって「ルール外の対応」となり、企画・システム管理・現場の三者間で調整会議や書面稟議、特例申請が発生します。
それは調達だけでなく生産・品質・物流の担当者全員を巻き込むこととなり、結果的に調整作業が過大化してしまうのです。
属人化からの脱却か、現場力の喪失か
改革の中で最も大きいのが、「個人の経験知による対応」が制限されることです。
新人バイヤーはシステム標準操作に沿って作業することで最低限の品質は担保されますが、一方で半世紀続くサプライヤーとの阿吽の呼吸や、「この人にだけは直接電話で調整できる」といった現場力が失われていきます。
属人化からの脱却と標準化が叫ばれますが、現場で鍛えられた“暗黙知”が失われ、多様なイレギュラー案件に弱くなる場合も少なくありません。
なぜ調達改革は「調整業務」を倍増させるのか
現場と管理層の認識ギャップ
調達改革の掛け声を出すのは、多くの場合経営企画やIT推進の管理層です。
彼らはコスト削減や「見える化」のKPI達成を重視します。
一方、現場の購買担当やサプライヤー営業は、受発注の遅延や品質トラブルなど「リアルな現場トラブル」に日々向き合っています。
KPI達成やルール遵守より、トラブル火消し・納期厳守・現物対応を最優先せざるを得ない現実がそこにあります。
この「現場のリアリティ」と「経営の理想」のギャップが、システム運用開始後に「調整業務」となって一気に噴出し、社内調整コストを増大させる要因となります。
プロセス標準化と例外処理の板挟み
調達システム導入で「業務プロセスの標準化」を狙う一方、大量品・量産品と単品・試作品、国内向けと海外調達、法規制対応など、多種多様な調達案件が混在する現場では、すべてをシステムルールで統一するのは困難です。
運用開始後に「このケースはどうするの?」といった“例外処理”が頻発し、現場担当者が都度上司や関係部門と調整しなければならない事態が発生します。
この「ルール外対応」こそが調整業務を膨れ上がらせる大きな要因です。
サプライヤーの巻き込みと新たなコミュニケーション負荷
調達改革の過程で、サプライヤーに対しても電子化対応や新たな取引ルールの順守、ESG調達アンケート回答など追加業務を要請する場面が増えています。
従来は各購買担当者が「現場レベル」で柔軟に調整してきた内容が、全社統一のプロセスとなり、サプライヤー側でも新たな事務フローやIT対応窓口を設けねばならなくなっています。
この「お互い様」の調整案件が積み重なることで、従来にはなかった調整・説明・折衝の手間が膨大化するのが実情です。
調達改革の本質とは何か――「新たな地平線」を指し示す
単なるデジタル化では本質的な改革は進まない
多くの現場で「調達改革」が形骸化しやすいのは、デジタルツールや帳票を「新しくする」ことがゴールになってしまうからです。
ルールやシステムを入れ替えただけでは、現場が本当に求めている「業務の生産性向上」や「新たな付加価値創出」は生まれません。
むしろ大切なのは、「現場が感じている“痛み”」や「従来培った現場力」を活かした運用ルール設計です。
デジタルツールの活用そのものを目的化せず、現場業務の本質的な価値を守る改革こそが求められます。
業界共通のアナログ文化をどう進化させるか
日本の製造業に根付く“職人技”ともいえるアナログな現場対応力は、決して時代遅れではありません。
その現場力と、「グローバル化・データ化・標準化」のメリットをいかに融合できるかが成功の鍵です。
例えば、調達システム上ではナレッジ共有や例外処理ナレッジベースを蓄積し、「個人のノウハウ」を可視化・共有できる仕組みを導入した企業も現れています。
また、業界団体単位でのデジタルベンチマークや、業界標準EDI/電子契約への歩み寄りといった「業界を跨いだ協調」も今後重要になるでしょう。
調達担当者・バイヤーが持つべきラテラルシンキング
改革の推進においては、「縦割り」や「既存の枠組み」に囚われないラテラルシンキング、すなわち“横断的な発想力”がこれまで以上に求められます。
バイヤーのみならず、サプライヤーも設計・生産・品質・物流部門など、サプライチェーン全体を横断する視点を身につける必要があります。
調達が現場のハブとなり、多様な利害調整を建設的に進めるファシリテーター役を担うことが、今後の製造業バイヤーの価値を高めるポイントとなるでしょう。
まとめ:現場目線で考える「調達改革」の新常識
これまで述べてきたように、調達改革を掛け声だけで終わらせず、本当に現場で根付かせるには「現場の暗黙知」と「デジタル化による効率化」を組み合わせた運用デザインが不可欠です。
社内調整を効率化するには、業務見える化、コミュニケーションのオープン化、SOPやQ&Aの充実、現場の「声」を制度設計に組み込む体制づくりが有効です。
製造業の現場ほど、多くのアナログ知見と複雑な利害調整・現場対応力が求められる場所はありません。
この業界伝統の「現場力」を伸ばしたまま、デジタルツールを正しく使いこなす。
そんな新たな地平線を目指して、調達担当者・バイヤー・サプライヤーそれぞれが一歩踏み出しましょう。
調達改革の本質とは、表層的なツール導入やルール整備ではなく、「現場がもっと強くなるための進化」に他なりません。
今後の製造業の発展のため、皆さんと共に考え続けていきたいテーマです。
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