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PVCフリーTPE電線被覆とEV急速充電ケーブル柔軟性試験

目次
PVCフリーTPE電線被覆の概要と進化するEV急速充電ケーブル
PVC(ポリ塩化ビニル)は長年、電線被覆の主流材料として広く使われてきました。
しかし、環境面や健康面での懸念、加工時に発生する有害物質問題などから、より持続可能なソリューションへの転換が求められています。
この流れの中で、TPE(熱可塑性エラストマー)を使用したPVCフリーの電線被覆が注目を集めています。
自動車業界、特にEV(電気自動車)分野では、充電インフラの拡大とともに、急速充電ケーブルの性能進化が急速に進んでいます。
安全性、耐久性、取り回しやすさなど、多角的な品質要求が高まる中、ケーブル被覆素材の選定も従来の延長線上では解決できない課題のひとつとなりました。
本記事では、長年製造業の現場を歩いてきた視点から、PVCフリーTPE電線被覆の特長や市場動向、EV急速充電ケーブルに求められる柔軟性試験の実際、そして調達やバイヤー目線で押さえておくべきポイントを深掘りしていきます。
PVCからTPEへ――被覆材の時代的転換
PVCの限界とサステナビリティ課題
PVCはコストパフォーマンスに優れ、絶縁性も高く、加工性が高いという理由で多くの電線に採用されてきました。
しかし、廃棄時の環境負荷や、可塑剤に含まれるフタル酸エステル類の健康リスク、燃焼時の有害ガス発生といった課題が指摘されるようになりました。
特にヨーロッパではRoHS(特定有害物質使用制限)指令やREACH(化学物質登録・評価・認可・制限)規則により、化学物質規制の動きが強まっています。
自動車メーカーもグローバル規模での責任調達が求められるようになり、“脱PVC”の動きは競争力の維持、持続可能性の観点から避けて通れなくなりました。
TPE──新世代被覆材の実力と特徴
TPE(熱可塑性エラストマー)は、ゴムのような弾性とプラスチックの加工性を併せ持つポリマー素材です。
主に次のような特徴を備えています。
・非ハロゲンで無毒性のものが多く、廃棄時の環境負荷が小さい
・難燃性や柔軟性、耐候性、耐油性など、用途に応じた配合で物性制御が可能
・リサイクルが容易で、サーキュラーエコノミーにも適合
また、従来のゴム系やPVC系被覆と比べ、低温下でも硬化しにくい、表面仕上げが美しい、色付けも自在など、EVのデザイン性向上にも寄与できます。
EV急速充電ケーブルに求められる性能と柔軟性試験の重要性
急速充電ケーブルの新たな課題
EV(電気自動車)普及のカギを握るのが充電インフラの整備です。
特に公共の急速充電器で使われるケーブルには、従来の家庭用コンセント以上に厳しい性能要件が課されます。
その理由は大きく3点に集約されます。
1. 安全性と耐熱性
短時間で大電流を流すため発熱しやすく、絶縁被覆材の耐熱性、耐アーク性が不可欠です。
2. 柔軟性と取り回し性
ユーザーが屋外で扱うため、寒冷地や高温環境、様々な地面状況で繰り返し折り曲げ・巻き伸ばしが生じます。
柔軟性を保ちながら物理的耐久性も求められます。
3. サステナビリティと規制対応
EV推進政策、環境ラベル、グリーン調達ガイドライン適合などを満たす必要があります。
柔軟性試験の実際と現場が重視する観点
電線ケーブルの柔軟性は、“ユーザー視点の使いやすさ”“現場での施工性”に直結する機能です。
近年は、JISやUL規格、IEC規格などによる定量的な試験の充実が進んできました。
主な試験例を現場目線で解説します。
・反復曲げ試験
一定の半径でケーブルを900度もしくは180度に曲げ、その後元に戻す動作を数千〜数万回繰り返して外被・内部導体の損傷を評価します。
寒冷地仕様では低温環境(-40℃)での試験も必須です。
・耐扁平性試験
荷重をかけてケーブル被覆がどの程度扁平に耐えられるか、また復元性に問題がないかをチェックします。
・引っ張り試験
導体から被覆が剥離しないか、被覆の破断強度や伸び率を評価します。
これらに加え、実フィールドでの扱いやすさ・施工時トラブルのヒアリングなど“現場感覚”のレビューも製品開発には重要です。
造り手目線で“ユーザーはどんな場面で困るか”を理解し、試験水準を設定する必要があります。
アナログな業界風土に根ざした課題と変革のヒント
昭和的な現場文化とテクノロジーのギャップ
日本の製造業、特にケーブルや電材分野では“長年続けてきたやり方”が当たり前となっている現場が少なくありません。
新規材料や新規JIS等の導入に対して「実際に大丈夫なのか」「コスト増加がネック」といった心理的障壁が根強いです。
また、アナログな検査工程や手作業の多さ、現場のカン・コツに依存した品質管理体制が残されている場合も多いです。
そのため、新材料のテストや柔軟性評価、フィールドレビューからのフィードバックが製品開発・改善までつながりにくいという構造的な課題もあります。
現場との対話が変革のカギ
現場を動かすには、現場目線での“納得感”と“メリット実感”が何より重要です。
・PVCフリー化による健康・安全性の向上
・廃棄/不適合発生減によるコスト適正化
・柔軟性が向上したことで施工/運用トラブルが激減
これらを“数値化”“見える化”し、現場リーダーと直接対話する機会の創出が新しい仕組みを根付かせる原動力となります。
令和の技術革新を、昭和の現場に浸透させるための説得材料を地道に集めていくことが業界全体の底上げに直結します。
バイヤー(調達購買)・サプライヤー双方が押さえるべきポイント
バイヤー視点:競争力と持続可能性の両立
グローバル競争の中で、部材選定の要件は日々厳格化しています。
・納期やコストだけでなく、企業のCSRポリシーや環境適合性の評価
・サプライヤーが柔軟性試験や品質保証、実績などをどこまで“見える化”できているか
・新しい材料採用による長期信頼性リスク、メンテナンス性も考慮
これらを客観的指標と現場ヒアリングを両輪で進めることが信頼できる調達につながります。
サプライヤー視点:顧客ベネフィットの伝え方
サプライヤー側は“自社製品の優位性”を声高にアピールするだけでなく、「現場課題にどう直結するか」「現実の導入効果、具体的なコストメリット」まで可視化した提案が不可欠です。
柔軟性試験データだけでなく、現場からの声やフィールド評価、トラブル減少事例なども積極的に共有しましょう。
新材料への切り替えを促す際は、次のような説明で購買担当者を後押しできます。
・新素材はROHS/REACH/UL等最新の規格要件を首尾一貫してクリア
・耐久性、柔軟性を詳細データで裏付け、実際のフィールド導入で不具合・メンテ工数が劇的に削減
・コストダウンだけでなく、LCC(ライフサイクルコスト)視点の長期メリットも試算
現場見学会やオンライン説明会を通じて、現場担当者と購買担当の“納得体験”を重ねていくことが競合優位のポイントとなります。
まとめ──「現場目線×技術革新」こそが業界の未来を拓く
PVCフリーTPE電線被覆とEV急速充電ケーブルの柔軟性評価は、脱炭素時代の競争力と現場運用性を両立させる新しいチャレンジです。
アナログ風土を大切にしつつも、次世代テクノロジーを現場視点で“納得”し、活用していく柔軟な姿勢が求められます。
調達バイヤーもサプライヤーも、一方通行の主張ではなく、現場課題と技術進化を“対話”と“データ”でつなぐことが次の10年を切り拓くカギです。
すべての現場担当者、モノづくりを支える皆さんへ。
現場で感じる小さな違和感や困りごとの声こそが、次の大きな成長の種です。
旧来の延長線だけでは見えてこない“本質的価値”に気づき、今日から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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