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投稿日:2025年12月10日

品質保証の要望が開発スケジュールを圧迫する現場の本音

品質保証の要望が開発スケジュールを圧迫する現場の本音

はじめに―現場のリアルな葛藤

製造業に携わる皆さまなら、品質保証部門の厳しい要求が開発スケジュールを圧迫し、現場とバックオフィスの板挟みに頭を抱えた経験は一度や二度ではないはずです。

私自身、20年以上にわたり調達購買・生産管理・品質管理、そして工場長として多くの製品の立ち上げに携わってきました。
今回は現場目線で、なぜ品質保証の要請が開発スケジュールに大きな影響を及ぼすのか、その本質と組織を横断して進めるべきポイント、そして今後の製造業が目指すべき方向性を深掘りしていきます。

なぜ品質保証の要求が開発スケジュールを圧迫するのか

日本のものづくり文化は、”お客様至上主義”に基づく徹底した品質志向に支えられています。

この文化が生み出した厳しい品質保証基準は、開発工程での抜け漏れを最小化し、顧客の信頼を勝ち得る最大の武器といえます。

しかし一方で、その要求があまりにも厳格化すると、現場ではこうした声が上がります。

「どうせまた品質保証から新たな要求が追加されるに違いない…」
「要求事項を全部満たせるなら開発期間を倍にしてほしい」
「今回の案件、リリース日に間に合う見込みが立たない…」

この現象の背景には、大きく二つの構造的な問題があります。

ひとつ目は、顧客の期待に合わせて品質保証項目が“積み上げ式”で増えていく傾向。

ふたつ目は、昭和から続く「現場にしわ寄せが行く文化」です。

また、昨今ではサプライチェーン管理の複雑化やリスク想定、自動車業界で必須のIATF 16949や、顧客ごとの独自品質管理ルールなど、多様な外部要求が重なっています。

品質保証部門の立場と開発現場のギャップ

品質保証部門の役割は、顧客の信頼を維持し企業価値を守ることにあります。

納入後の不具合はブランド価値や取引停止といった甚大なリスクにつながり、その意味で「万全な品質確保」は譲れない一線です。

そのため、開発や生産現場に対して「厳しい壁」として立ちはだかることも避けられません。

一方、開発・調達・製造現場では「現有リソースでいかに早く・低コストで製品を立ち上げるか」が最大のミッションとなります。

新技術の導入や、多様化する顧客ニーズ・短納期化の流れなど、現代の製造現場はかつてなくスピード重視です。

この両部門が対立的になれば、負のスパイラルが生じます。

品質保証が要求を追加し続け、開発現場は「どうせまた…」とモチベーションが下がり、リードタイムが伸びて顧客納期を守れなくなる―。
悪循環は会社全体の業績や信用に直結する深刻な問題です。

昭和的アナログ慣習と業界特有の「阿吽の呼吸」

日本の製造業、特に重厚長大な分野では、帳票や書面ベースのやりとり、口頭での確認、属人的な知見といった昭和的なアナログ文化が根強く残っています。

この「暗黙知」に頼った運用はベテラン人材が多い時代には機能していましたが、現代の多品種・少量・短納期化には不向きになっています。

たとえば、
– 顧客仕様変更の伝達漏れ
– 上長の一声でルールが一時的に無効化
– 進捗やリスクをExcelファイルで都度手入力
– 品質問題の原因究明がなかなか定量化されない

こうした非効率さが、開発工程全体のフローをより複雑にしてしまい、結果として品質保証要求がさらに「保険」のつもりで増加していくという悪循環が生じます。

強まるグローバル化とサプライチェーン全体での品質保証

近年の調達購買・開発分野においては、グローバル化・外注化・マルチサプライヤー運用が当たり前となりました。

バイヤーや生産管理担当者にとっては、社内だけでなくサプライヤーとも品質保証の基準や運用を合わせこむ必要があります。

このとき、日本流の「現場のカン・コツ」や「阿吽の呼吸」に頼りきっていると、海外サプライヤーや新規参入メーカーとの連携に齟齬が生まれます。

「なぜこの品質基準が必要なのか」「どこまでデータでエビデンスが必要か」といった基本認識を含め、オープンな対話・標準化されたプロセス設計が喫緊の課題となっています。

現場目線で見直したい!品質保証と開発工程の橋渡し

最も重要なのは、「品質保証」と「スピード・コスト」の最適バランスです。

現場目線で、今すぐ取り組みたいポイントを整理します。

1. 要求事項の「なぜ?」を徹底追求
品質保証部門からの要求に“ひとつひとつ”根拠や目的を確認することで、「やるべき品質保証」と「やらなくていい追加負荷」の選別が可能になります。

2. 初期段階での部門横断コミュニケーション
初期フェーズ(企画段階)から、開発・調達・品質管理・生産技術など多部門が一堂に会し、「要求事項リスト」「リスクポイント」「顧客満足の定義」をすりあわせましょう。
これにより手戻りや要求追加の発生を抑えられます。

3. アナログ業務のデジタル化促進
帳票の電子化やワークフロー自動化、品質トラブルのデータ共有体系を整備し、属人的運用からの脱却を目指します。
自動化や見える化は、開発リードタイム短縮のみならず客観的な品質保証にも直結します。

4. 外部サプライヤーとの品質認識ギャップの解消
数値基準と具体的期待値を文書化・共通理解し、リスクアセスメントやレビュー機会を増やしましょう。
グローバル化時代には「言った・言わない」を未然に防ぎます。

5. トラブル発生時の迅速対応フロー
品質異常が発生したとき、現場での一次対応権限を明確にし、かつ原因究明と再発防止がワンセットとなるPDCA体制の定着を進めましょう。

バイヤー・サプライヤー視点での「開発×品質保証」最適化

バイヤーを目指す方や調達担当者にとって、品質保証部門との連携は利益確保の観点からも無視できないテーマです。

コストダウンや短納期化を進めたい一方、品質問題が起きればサプライヤーへの是正要求・取引停止など厳しい局面にもつながります。

そのため、
1. サプライヤーには「品質保証要求の目的」まで丁寧に説明する
2. 設計段階・量産前・量産後の品質管理スタンダードを常に再点検する
3. 新規サプライヤー採用時は、必ず品質マネジメントシステムの成熟度を評価指標にする
4. 異常発生時も「なぜ起きたか」「どうすれば再発防止となるか」をサプライヤーと共に構造化して考える

このような姿勢が長期的な競争力と信頼性構築のテーマに直結します。

昭和的アナログ現場だからこそ、イノベーションの余地あり

日本の製造業には、古き良き現場主義が根付いています。

その強みは“現場の責任感と粘り強さ”“やり抜く現場力”にあります。

しかし、グローバル競争の激化・少子高齢化による人手不足・DX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、この伝統的現場力だけではカバーしきれない時代となりました。

品質保証部門と開発現場が本音でぶつかり合い、“どうすれば顧客と現場のWin-Winを実現できるか”を常に問い続ける姿勢が求められます。

新たな地平線を開拓する、ラテラルシンキング的視点で見るなら「現場の知恵×デジタル×グローバル基準」融合の余地はいくらでも広がっています。
失敗もリスクもそのまま現場力に変換していく、そんなダイナミズムこそ今後の製造業の発展ドライバーとなるでしょう。

まとめ

品質保証部門の要望が開発スケジュールを圧迫する現象は、長年の業界慣習や現場文化、多様な顧客要求が絡み合った複雑な課題です。
しかし、部門間の「なぜ?」を深ぼりし、初期コミュニケーションから全体最適を目指す姿勢を持つことで、必ず打開策は見つかります。

昭和的なアナログ現場でも、今こそ新たな視点を持ち、品質保証×スピードの両立による製造業のさらなる飛躍を一緒に実現していきましょう。

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