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デザインレビューを成果につなげるQFD活用設計FMEA運営管理手法と事例演習

目次
はじめに:日本の製造現場とデザインレビューの重要性
日本の製造業は、長きにわたり緻密なものづくりと細やかな現場改善で世界をリードしてきました。
しかし、バブル崩壊後の構造変化やグローバル競争、デジタル化の波の中で、依然として「昭和的」な手法から脱却できない現場も多いのが実情です。
特に設計段階でのリスク可視化や、部門横断での合意形成を行う際に「デザインレビュー(DR)」は今なお重要であり、QFD(品質機能展開)の導入や設計FMEA(故障モード影響解析)の活用が注目されています。
この記事では、デザインレビューの現場的な課題を踏まえつつ、QFDや設計FMEAという本質的ツールの真の価値と運営管理ノウハウ、具体事例をわかりやすく解説します。
バイヤー志望の方、サプライヤー側のエンジニアや営業の方にも、現場感覚で「なぜ、どう使い、何が成果につながるのか」を伝えます。
デザインレビューの現場課題と“昭和からの脱却”
多くの日本の現場では、デザインレビュー=形式的な会議になりがちです。
たとえば設計図を囲んで、設計部長や工場長、品質担当が「問題はないか?」と問いかけるだけの会議、チェックリストを埋めて“お墨付き”を与えるだけの儀式に陥っている例が少なくありません。
その要因には、下記のようなものがあります。
- 設計と現場、調達・営業など部門間の壁
- 過去の不具合やクレーム情報の体系的活用不足
- 設計思想や顧客要求の「見える化」が不十分
- トップダウンによる“やらされ感”の横行
- そもそもレビューで何を議論すべきかの共通理解不足
これらを打破し、デザインレビューを“成果につながる現場知への転換点”とするために、QFDと設計FMEAを基軸とした運営管理手法が注目されています。
QFDとは——なぜ今、改めて品質機能展開なのか
QFDの基礎と本来の意義
QFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)は、顧客の声(VOC:Voice of Customer)を設計・工程・品質管理の各段階で論理的に展開する手法です。
「顧客要求事項」と「製品機能」「設計仕様」「管理点」などを対比構造(いわゆる“品質の家”形式)で可視化します。
QFD本来の目的は「設計思想や顧客ニーズを、社内外の関係者(開発、製造、調達、営業など)で共通認識し、最適解を合意形成すること」に尽きます。
これは、部門の壁を越えた「現場の声」と「経営意思」の橋渡しの役目を担います。
特に、日本型ものづくりにおける“暗黙知(職人技)”を“形式知(標準知)”に昇華させる大きな力を発揮します。
QFDはなぜ持続的な業務改善につながるのか
QFDを導入することで、下記のような効果が期待できます。
- 顧客の要求品質と設計仕様・製造工程を論理的に結びつける
- 部門間の情報断絶を解消し、コミュニケーションを活性化する
- 見落としがちなリスク・盲点を早期抽出、未然防止する
- 設計変更・機種展開時もスピーディかつ低コストで展開できる
- 新任担当や異動者でも「知の見える化」で即座に問題把握ができる
設計FMEAとQFDの融合が成果を生み出す理由
設計FMEA(Design FMEA)の基本
設計FMEAは、設計段階で「どのような故障モード(不具合・失敗)が発生しうるか」を系統立てて洗い出し、発生要因・影響度・検知性などからリスク評価し、優先順位の高いリスクへ対策を検討するプロセスです。
単なるリスクリストの作成に留まらず、「設計思想そのものの質向上」「将来の製品群展開に向けたノウハウ蓄積」に資する点が本来の狙いです。
ここでも部門と役職を越えた知恵の結晶・伝承が欠かせません。
QFDとFMEAの連携——知識経営と現場力強化
QFDで「顧客要求→設計機能→部品/製造工程→管理点」までのロジカルな因果を“見える化”し、FMEAにより「どんな不具合が起きるのか、未然防止策は何か」を深堀りする。
この両輪が回ることで、設計と生産の現場が本当の意味で連携し、「設計変更やコストダウンでも品質を落とさない」ものづくりが成立します。
経験上、QFDとFMEAをうまく運用する事例では、以下のようなメリットも生まれています。
- 購買・サプライヤー選定段階でリスク情報を共有できる
- 顧客要望に対し、設計・製造・調達の三位一体で最適解を創出できる
- 意思決定の条件が「感覚的な説得」から「論理的な合意」に変わる
成果につなげるQFD/FMEA運営管理ノウハウ
実効性ある運営のポイント(3原則)
1.「多機能チームでの進行」を徹底する
設計・製造・品質・調達など多様な立場のメンバーでプロジェクト体制を作ります。
単なる責任者同士の“お飾り参加”ではなく、現場で実務を担う中堅~若手も積極的に起用しましょう。
2.「ワークショップ型」での推進
形式的な会議体ではなく、実際にQFD表やFMEAシートを模造紙・ポストイットで可視化し、その場で議論・修正しながら進める手法が効果的です。
加えて「現場見学や工程ウォーク」など、リアルな現場情報をインプットする工夫も重要です。
3.「マネジメント層による意思決定と経営支援」
形式的な承認だけではなく、リスクや課題をマネジメント層が具体的に評価・指導を行うことが求められます。
最終的な意思決定ポイント(Go/NoGo)を明確にし、必要なリソース・権限を現場に託しましょう。
具体的な運営管理手法例
- 定期的に「強制停止ミーティング」を設け、中間チェック&横やりも許容
- 設計変更や新規サプライヤー導入時は、QFD/FMEA再レビューを必ず実施
- FMEAによる“未然防止策提案”を必ず一項目でも具体化させ、実装後の効果検証をセットに
- リスク箇所の「写真・図面化」で会議参加者のイメージ共有を深める
- 社外(協力企業・サプライヤー)とのFMEA情報共有ワークショップを開催
- 過去不具合を纏めた「失敗知データベース」を常時参照しながら議論する
事例演習:QFDとFMEAを結合した実践例
ここで、実際に私が携わった機械部品メーカーの事例を紹介します。
新規設備投資案件において「調達購買・開発設計・製造現場・品質管理・営業」の多機能チームを編成しました。
まず顧客からの要求品質(例:耐久性UP、コストダウン、納期短縮)をQFD表に落とし込み、「どの設計仕様で実現するか」を関係部門でディスカッション。
次に、選定した重要部位について設計FMEAを展開。
たとえば「溶接部の強度不足」が想定されたため、過去実績やサプライヤーからの現場フィードバックをもとに、溶接条件や検査プロセスを再設計しました。
FMEA上で“リスク優先度が高い”と評価された箇所については、工程設計・外注先の選定に際してもQCD(品質・コスト・納期)の観点で最適解を業界横断議論で熟議。
この結果、過去リピートしていた溶接不良が約70%低減、原価も5%ほど低下する成果を実現しました。
また、このアプローチを水平展開することで、サプライヤー開発品でも同様のリスクマネジメントが可能になりました。
バイヤー目線・サプライヤー目線でQFDとFMEAを活かす
現場バイヤーやサプライヤーがこの活動を強みにするポイントも押さえておきましょう。
- バイヤーとしては、QFDとFMEAを通して「今後起きそうなトラブル」や「設計課題の未然防止策」を把握できれば、社内外調整において圧倒的優位に立てます。
- サプライヤー側も「主体的なQFD・FMEA提案型」になれば、単なる“納入業者”から“パートナー”へと格上げされる確率が高まります。
- 設計や製造現場の失敗事例を自らFMEAに展開し、改善案まで提案できれば、競合他社との差別化に繋がります。
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まとめ:全員参加型「知識経営」を実現しよう
デザインレビューでQFDとFMEAを融合的に活用することは、日本のものづくり現場が“昭和的儀式”から“グローバル競争力の源泉”へ進化する原動力となります。
部門間の壁を溶かし、現場知を最大限可視化し、再現可能かつ全社資産にしていく——
それこそが「全員参加型 知識経営」の真骨頂です。
「設計・調達・製造・品質管理・営業」すべての現場人が“自分ごと”として参加できるダイナミックな仕組みづくりを、ぜひ明日から始めてみてください。
QFD・設計FMEAで成果を生みだし、現場力と競争力の両立を目指しましょう。
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