投稿日:2025年8月16日

塗装色の近似許容を合意して色替え費用を減らす品質合意

はじめに:なぜ塗装色の許容が問題となるのか

製造業の現場で、塗装色の管理は見過ごされがちながら、実はコストと品質の両面において非常に重要なテーマです。

多品種少量生産が進む中、色ごとにライン洗浄や調色、材料交換が必要となり、色替えのたびに発生するロスや費用が無視できないものとなっています。

もし塗装色の近似許容をバイヤー(発注側)とサプライヤー(供給側)で戦略的に合意できれば、無駄な色替えを減らし、生産性を飛躍的に高めることが可能です。

この記事では、現場視点に立ち、塗装色の近似許容の合意による色替え費用削減と、品質確保の実践的な方法について解説します。

塗装色管理の現場課題と業界の実態

塗装工程で発生する「ザ・昭和的手間」

自動車や家電、精密機器など、多くの製造業現場では塗装工程が製品の最終外観を左右します。

そのため「色違い」「色むら」への消費者の目は厳しく、クレームが起きればコスト・評判両面で甚大なダメージを受けかねません。

一方で発注側は「基本の指定色+微妙なカスタマイズ」を細かく求める傾向が強く、色番号ひとつ違うだけでも現場での色替えや材料残渣、洗浄工数が大きな負担となっています。

この慣習の背景には、昭和時代から変わらぬ「カスタム色=付加価値」という意識があります。

しかし、色ごとに塗装ブースの洗浄、人員の割当て、塗料の段取り替え——これらすべてが、現場の生産効率や歩留まりをじわじわと圧迫しているのです。

色替えコストの定量的インパクト

たとえば一つのラインで、一日に10回の色替え作業が必要な場合、色ごとの洗浄に要する人員は延べ3名、想定3時間。

さらに色替え時の材料ロスや、立ち上げ直後の不良も加味すると、年間数百万円から数千万円単位のコスト増につながることは珍しくありません。

加えて、工程管理・品質管理書類の煩雑化、作業者への教育負担も膨らんでいきます。

この非効率を根本から改善するには、バイヤーとサプライヤー双方が「近似色=合格」という新たな価値観を共有することが不可欠です。

塗装色の近似許容——合意形成の具体ステップ

1. 「絶対色感」から「機能的色感」への転換

発注担当者や設計者は、設計段階で指定色番やマンセル値などで色を指定します。

しかし自動化ラインや大ロット生産の現場においては、「色の許容範囲」をいかに合理的に設定するかが成功のカギです。

まずは「色の違いによる製品の機能やブランドイメージへの影響」を冷静に棚卸しし、大胆に「近似可」の範囲を広げる思考が必要です。

2. 客観的基準の共有(カラーメーター、色差ΔE値)

色の違いは、人間の目では主観的になりがちです。

そこで現場では、カラーメーターや分光光度計による数値管理が標準化されつつあります。

たとえばΔE(デルタE)値を用い、「ΔEが1.0以下なら視認困難」「ΔEが2.0以下は隣接品なら実質的に同一色」といった客観的基準を、お客様と技術的にすり合わせておくことが重要です。

この基準設定こそ、現代の製造業ならではの「数字で品質を合意する」第一歩です。

3. 色見本と実機対比による歩み寄り

とはいえ数値だけで全てを割り切れない場合、実際の素材・形状・使用環境を想定したサンプル部品でお客様と最終確認することがカギとなります。

短納期要求のなかでも、効率的な色見本(サンプルチップ)の提出プロセスを自動化するなどして、「現物に近い形で合意形成」する流れをつくりましょう。

色替え費用削減の現場テクニック

同近似色部品のまとめ生産

近似許容が成立すれば、「ラインで連続的に同系色部品をまとめ生産」できます。

製造工程の段取り替え回数が減り、材料ロスの削減、現場作業の効率化だけでなく、品質リスク(異色混入など)も低減できるのです。

ここでカギになるのは「品番単位」ではなく「色系統単位」で日程調整や調達計画を立て直すというラテラルな発想です。

塗料メーカーとの連携による「色の最適解」追求

サプライヤー側は、塗料メーカーや調色会社と連携し、色違いの塗料を「同一仕様の色調整品」として取り扱うことも有効です。

また「この原材料なら色バラツキが出やすい」「このロットなら安定する」といった経験知を事前にバイヤー側と情報共有し、「リスクを見越した近似許容範囲」の合意を交渉段階で詰めておきましょう。

現場作業の自動化と標準化への投資

塗装ロボットやAI外観検査の導入により、従来人手に頼っていた色管理を自動・定量管理へ移行できます。

「色ごとにライン停止→手動洗浄→再立ち上げ」の時代から、「連続切り替え・自動検証OK」の新しい現場へ。

近似許容を前提にすれば、段取り替えの手間そのものが圧倒的に減少するため、「新規自動化投資の回収メリット」が跳ね上がり、現場革新が加速します。

バイヤーとサプライヤー双方がとるべき姿勢

バイヤー側:コスト意識と訴求軸の再定義

調達担当は、品質要求が「コスト高」を招く場合の最適解として、「許容範囲の見直し」を武器にするべきです。

つまり「この範囲まで近似OKなら、調達単価を下げられます」「現場もストレスフリーです」といった、“Win-Win”の訴求軸を社内やサプライヤーに提示しましょう。

さらに近年は、CO2排出削減やサステナブル経営の観点からも、「ムダな色替え=環境負荷増」という説明が説得力を持ちます。

サプライヤー側:現場現物現実の知見で提案力強化

サプライヤーの競争力は「低コスト」「高品質」だけではなく、「現場の困りごとを先回りして吸い上げ、改善案を提案できる」ことです。

たとえば、「この3色は1ラインでまとめ生産可能」「色替え回数を半減させることで原価5%削減」など、具体的数値と現場改善事例をセットで提示しましょう。

現実の現場では「最後は人間判断」という場合もありますが、「客観指標とサンプル確認の二本立て」を徹底することが信頼構築の近道です。

近似許容による業界横断的メリット

1. SDGs・グリーン経営との親和性

色替え回数の低減=資源使用量・エネルギーロスの低減につながり、環境配慮型サプライチェーンへの貢献度も高まります。

グリーン調達や大手グローバル企業からの監査対応(省エネ・廃棄物削減)にも、近似許容の運用実績を「見える化」しておくことは極めて効果的です。

2. 生産リードタイム短縮・多品種対応力強化

着色材や塗装ラインの段取りを最適化できるため、「小ロット・多品種・短納期」という現代のバイヤーニーズにもしなやかに対応できます。

その結果、「納期遅延リスクの低減」や「現場全体の段取り力アップ」という副次効果も生まれます。

3. 現場の人材流動性向上と安全確保

塗装工程の色段取りが複雑だと、どうしてもベテラン職人頼みになる傾向があります。

しかし近似許容が高まれば、段取り作業の標準化・自動化が容易になり、若手や新人スタッフへの技能伝承もスムーズに進みます。

結果的には「属人化解消」「現場の安全・安心意識向上」につながり、多様な人材が活躍できる現場となるのです。

まとめ:ラテラルな合意形成が現場未来のカギ

塗装色の近似許容を巡る合意形成は、単なるコストカット技術の一つではありません。

現場の効率改善、生産性向上、多品種対応力の強化、そしてサステナビリティ推進まで、製造業全体を底上げする知恵そのものです。

重要なのは「前例主義」「昭和的手作業」と決別し、客観指標と現場経験の両面からバイヤー・サプライヤーがフラットに話し合い、新たな価値観の地平を切り拓くことです。

製造現場の実態を知り抜いた者同士が力を合わせ、時代の変化に即した品質合意スタイルを実践する。

それが、これからの製造業の未来を創り上げる最大の武器となるでしょう。

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