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改善結果が数字に出ず評価されにくい品質保証のジレンマ

目次
はじめに
製造業の現場では、ミスが許されず、品質の安定が何よりも重視されます。
しかし「品質保証」は、その重要性に反して会社の業績やKPIに直結しにくく、数値での評価や貢献度の見える化が難しい部門でもあります。
この記事では、20年以上にわたり現場で管理職も務めてきた筆者が、昭和から続くアナログ業界特有の文化や現場感覚を織り交ぜながら、品質保証部門が抱えるジレンマについて解説します。
バイヤーや調達担当、またはサプライヤーの立場からも共感できるポイントを交え、「改善活動」が正当に評価されるためのヒントを考察します。
品質保証とは何か ─ 現場目線で捉え直す
「不具合ゼロ」への終わりなき挑戦
品質保証部門の使命は、不良品を社外・市場へ出さないことであり、潜在的なリスクをつぶし、顧客からの信頼を守ることです。
現場には、「大きなトラブル・クレームを未然に防いだとしても、評価や数字には現れにくい」という難しさが常につきまといます。
例えば、不良率1%を0.5%に改善しても、そのまま売上や利益へ直結することはまれです。
成果が「問題が起きなかったこと」としてしか表現できず、定量的なKPI設定が困難です。
これが、営業や生産管理のように数値化しやすい部門とは大きく異なる点です。
アナログ文化の影響
昭和から続く製造業の現場では、品質保証の仕事が「クレーム対応係」もしくは「現場へのプレッシャー係」として矮小化されがちです。
改善が進んでも「そもそも問題が起きていないのが当たり前」とされ、現場の努力が目に見える形で認知されにくいため、やりがいや誇りの醸成が難しい現実があります。
また、紙ベースの記録や属人的な知見への依存もいまだに根強く、DXや自動化による業務改革の恩恵を受けづらい部署でもあります。
なぜ「品質保証の成果」は数字で表しにくいのか?
未然防止は表彰されない定め
品質保証が力を発揮した時、「重大な不具合が未然に防げた」「不良ロットの出荷を阻止した」といった成果は、可視化されません。
結果的に、市場や顧客に迷惑をかけていないことが“当たり前”とされ、「よくやった」の評価どころか、「品質保証はコストセンター」「仕事が目立たない」と捉えられがちです。
この構造上の問題が、「品質保証のジレンマ」を生む根本にあります。
コスト削減と表裏一体の評価基準
会社全体から見ると、品質保証活動にかかるコストは大きな投資です。
「検査コスト」や「仕損・手直しコスト」が予算オーバーになれば、経営層から厳しい視線が注がれます。
逆に品質トラブルによる損失を“防止した額”を数値で算出するのは困難で、基本的に「ゼロリスク=目立たない状態」が最良評価となります。
サプライヤーからしても、「クレーム対応が増えると評価は下がり、何も起こらなければ変化なし」という、消去法的な評価しか与えられないのが現状です。
品質保証部門の役割が変わりつつある業界動向
トレーサビリティとデータ重視へのシフト
ISO、IATF、FSSCといった国際規格の台頭により、品質管理の姿勢も徐々に変わりつつあります。
全工程のトレーサビリティや不良の根本原因分析が従来以上に重視され、デジタル技術を活用した検証やモニタリングの導入も始まっています。
しかし、アナログ時代の風土が根強い企業では、データ分析と現場力の融合までには至らず、帳票の電子化や不良品画像のAI識別などは、まだ一部の先進企業に限定されています。
サプライチェーン全体でのリスク感度向上
世界的な供給網の環境変化も、品質保証の役割拡大に影響を与えています。
自動車・半導体産業では、単なる内部の「検査部門」からバイヤーとの窓口や、サプライヤー監査を担うハブへとアップデートが進行中です。
これにより、購買や開発といった他部門との連携、コミュニケーション力がより一層重視され、「全社最適」の観点で品質保証の職能が再定義されています。
現場から見た「改善活動」とその摩耗
小さな改善の積み重ねが生み出す価値
品質不良は突発的に出るものだけではありません。
「なぜこの部品で微妙な寸法バラツキが出るのか?」
「なぜ夜勤帯でだけ不良が多発するのか?」
といった、地道な分 析と改善の積み重ねこそが、本質的な品質向上を支えています。
現場では、「数値上の効果は見えないが、今後のリスク減に繋がる」といった泥臭い改善がほとんどです。
それにも関わらず、本部や経営層からは「売上や利益貢献が不明確な業務」と見なされやすく、過度なコスト削減要求や人員削減が押し付けられがちです。
なかなか進まない業務の自動化・DX推進
検査工程の自動化やDX化は、労働人口減少・技能伝承問題が深刻化する中、業界全体の課題です。
しかし、現場では「標準化が難しい」「例外対応に限界がある」「自働化設備の投資コスト回収が見込めない」などの理由から、紙記録や目視検査が主流のままというケースも少なくありません。
このため、改善結果が評価されないまま「非効率な仕事を続けている」と誤解される場面すらありますが、現場の担当者は品質文化の最後の砦として、責任感と使命感を持って日々の業務に取り組んでいます。
評価される品質保証部門へ─ 課題解決のヒント
「見えない効果」を見える化する
品質保証の仕事を適切に評価するには、「見えない効果」を定量化する努力が欠かせません。
たとえば「不良流出防止率」「要因別の改善件数」「市場クレーム抑制による損害回避額」など、自社に合った新たな指標を創設し、評価制度へ組み込むことが重要です。
また、「SQC(統計的品質管理)ツールの導入面数」や「FMEA実施件数」を増やすなど、現場の知見が活かされた指標であれば担当者のモチベーションも向上します。
こうした可視化努力が、社内外からの理解や信頼の醸成につながります。
部門横断コミュニケーションで役割を再発見する
品質保証は、営業や設計、生産管理、サプライヤーと密接に関わる「ハブ機能」も果たします。
現場からは「改善要望」を多方面へ発信し、バイヤー目線のコスト意識や、サプライヤー現場の実態といった異なる観点を統合する役割が求められています。
このため、日報・月報の発信や定例会の場で、「どんなトラブルが防がれたのか?」「どんな改善活動が進行中か?」を発表し、社内広報や勉強会などによって全社の意識変革を促すとよいでしょう。
業界全体でのベンチマークと連携強化
先進事例を積極的に情報収集し、自社の現場へ導入する取り組みも効果的です。
他業界や同業他社とのベンチマーク、外部トレーニー派遣、専門会議への参加などで、最新のトレンドや成功事例に触れることで、現場の発想が広がり、働き方や評価基準のアップデートにもつながります。
また地場サプライヤーの教育や、協力工場との相互監査を通じて「業界全体の品質底上げ」にも品質保証部門が寄与できる新しい可能性があります。
まとめ
「改善結果が数字に出ず評価されにくい」という品質保証のジレンマは、昭和的アナログ文化や、属人的な評価習慣が根強く残る製造業界で長年解決が難しい課題です。
しかし、トレーサビリティやデータ活用といった業界の変化、働き方改革やSDGsへの意識など、新しい潮流が今まさに品質保証部門の役割を再定義しつつあります。
現場で日々泥臭い改善活動を続ける担当者は、決して裏方ではありません。
サプライヤーやバイヤー、管理職、現場担当者の垣根を越え、「見えない価値」をいかに可視化し、正当に評価するかが、これからの企業競争力に直結します。
「品質保証の次の地平線」をともに切り開きましょう。
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