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OEM製品でブランド価値を落とさないための“品質保証ライン”

OEM製品でブランド価値を落とさないための“品質保証ライン”
はじめに:OEM製品の急増とブランド価値の危機
近年、国内外の多くの製造業がOEM(Original Equipment Manufacturer)製品の活用を積極的に進めています。
コスト削減やリードタイム短縮、市場拡大の“切り札”としてOEMは非常に有効です。
しかし、OEM商品がブランドイメージを毀損するリスクもまた現場では切実な課題となっています。
OEMは自社工場での一貫製造に比べて品質コントロールが難しく、ひとつのクレームがブランドの信用を大きく揺るがすことも少なくありません。
本記事では、20年以上現場で培った調達・品質・生産管理・工場自動化の知見をもとに、「OEMでもブランド価値を落とさない品質保証ラインの現場作り」について深堀りします。
OEMの本質と、今なお根強い“昭和的アナログ調達”の現状
OEMと言えば、デジタル化やグローバル化が進む現代においては当たり前のビジネスモデルですが、多くの現場では旧態依然とした見積依頼、図面送付、電話ファックス依存の調達プロセスが根強く残っています。
日本の“ものづくり”の強さは丁寧さ、現場密着、熟練技能にある一方で、属人的・アナログ的な管理は「見えないリスク」を増やします。
こうした現場のリアルを踏まえつつ、OEM時代の“品質保証ライン”の在り方を、現実的に考えていきます。
なぜOEMでブランド価値を損なうのか? 品質トラブルの実例
多くの工場長や生産管理者が経験してきた課題の一つが「OEM先での品質トラブル」です。
同じ図面、同じ仕様でも、委託先の設備や工程管理ノウハウ、さらには担当者の意識と技能で仕上がりが大きく異なります。
たとえば、ある自動車部品メーカーでは、海外OEMに切り替えた直後、トルクレンチの設定不足による不具合品が一気に市場に流出し、サプライチェーン全体の混乱を招きました。
OEM先の作業標準(いわゆる“黒板に貼った作業指示書”)が日本ほど徹底されておらず、現地担当者が「現場流解釈」をした結果です。
こうしたトラブルは一度発生すると、信頼の回復には膨大なコストと時間がかかります。
OEM先選定で失敗しない「バイヤー」の力量
OEMでブランド価値を守るには、バイヤーの選定・育成が重要です。
価格面だけを優先する調達では、品質リスクが高まります。
優秀なバイヤーは、以下の観点でOEM先を評価しています。
- 過去の納入実績と品質トラブル履歴
- 生産現場の見える化状況(5Sや工程管理の徹底度)
- 技術者や現場担当者の力量(属人化の有無)
- QC(品質管理)活動の定着度合いと実効性
- 改善提案、イレギュラー処理の対応スピード
これは表面上の書類だけでは見抜けません。
バイヤーとして現場に足を運び、「同じ空気を吸い」「現場の異音や微振動に気づく」現実感が大切です。
昭和的アナログに見えて、実は本質的な“現場力”の見極めが重要となります。
OEMでも“統一品質”を担保する3つの具体策
OEMでブランド価値を守るためには、次の3点を実践することが現場目線で有効です。
1. 現場標準化の「鬼徹底」
OEM先に任せきりにせず、自社の標準作業書や検査工程指示などを詳細に作りこみ、しかも日本語・現地語の両方で徹底します。
さらに、作業訓練も現地で直接行い、現地スタッフが「自分ごと」として理解するまで徹底的に現場入りすることが肝心です。
工程写真や動画、IoTを活用した現場の遠隔“見える化”も積極的に導入しましょう。
2. 二重三重の検査強化(バイパスチェック)
OEM先での全数検査を基本とし、要所では自社や第三者機関による抜き取り検査を追加します。
万が一、工程内で見逃しても最終的に市場への流出が食い止められるよう、「出口検査」の仕組みも重ねます。
これを「検査・保証の多層化」と呼びます。
3. 是正・改善サイクルの高速化
不良やクレーム発生時、OEM先に丸投げせず、自社の技術者・品質管理担当が現場入りし、即座に本質原因分析(なぜなぜ分析、QCストーリー等)を主導します。
そして、結果だけでなく「なぜそのミスが起こったのか?」という現場マネジメントの構造的な見直し(研修不足、人の入れ替わり、工程順守意識の希薄化など)まで踏み込む必要があります。
改善策はCG(コンピュータグラフィック)や動画解説、標語掲示などデジタル・アナログ両輪で現地に浸透させるのがコツです。
“工場自動化”でOEM品質はどこまで高められるか
IoTやロボティクスの進展で、OEM先の工場も自動化システムを導入しやすくなりました。
特に画像検査、トレーサビリティ(追跡可能性)、作業ログの自動記録などは、現地スタッフのばらつきを抑え、品質可視化を飛躍的に高めます。
昭和時代は「人の目と勘」が頼りでしたが、これからは“デジタルの目”で異常検知、AI解析による傾向予測も導入できます。
ただし、自動化の過信は禁物です。
「最後の品質保証」はやはり人の感性、異変への直感力です。
バイヤーや工場管理者が、一定間隔で現場を見回り、「なにか変だ」「こんな音は初めてだ」「微妙に作業手順が違うぞ」と微差に気づくアナログ力も必須です。
OEM調達でサプライヤーが心掛けたいバイヤー目線
OEM提案や受注活動を行うサプライヤーの立場でも、「バイヤーの品質保証目線」を深く理解することが重要です。
バイヤーは“安心して任せられる相手”を求めています。
サプライヤーは下記5点を徹底してください。
- 品質保証体制を文書だけでなく行動(現地工場見学、実演など)で示す
- トラブル発生時はまず先手を打ち、真摯な情報開示とスピーディな是正を約束
- 各種認証(ISO9001他)の取得状況だけでなく、日々の現場改善事例を伝える
- 現場担当者・作業者の教育体制(入社後の教育→フォローアップ)も具体的に示す
- リモートで現場視察や工程確認ができるデジタルツール・IoT化も積極導入する
これらは、サプライヤーがただ受け身になるのではなく「共にブランドを守るパートナー」としての自覚が求められるポイントです。
まとめ:OEM時代の品質保証は“現場の地力と先端テクノロジー”の両輪で
OEM活用は今後ますます普及し、グローバル競争の波も一層激しくなります。
ブランド価値を落とさずに生き残るためには、「見えない品質」を見える化し、現場の標準化・多重検査・スピード改善の3点を徹底することが本質です。
この実践のためには、バイヤー・調達は“現場に通じるアナログ感覚”を失わず、サプライヤーは“品質保証でアドバンテージを構築”し、デジタルと現場力の両輪で強いものづくり体制を築く必要があります。
昭和・アナログから令和・デジタルへの過渡期、OEM品質保証ラインを着実に強化し、消費者が納得する価値を提供し続けましょう。
それこそが、日本の製造業ひいては自社ブランドを未来につなぐ、たしかな道となります。
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