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投稿日:2025年12月10日

工程能力指数だけで品質を語れない理由

工程能力指数だけで品質を語れない理由

はじめに:工程能力指数とは何か

製造業の現場では、「工程能力指数」という言葉が頻繁に使われます。
これは統計的な手法の一つで、製品やプロセスがいかに安定しているか、そのプロセスから得られる製品が設計仕様内に収まる確率を数値化したものです。

代表的なものとしてはCp(工程能力指数)、Cpk(工程性能指数)などが挙げられます。
Cpは工程の幅(ばらつき)と規格幅(許容範囲)を比較するもの、Cpkはこれに加えて平均値が中心に寄っているかどうかも考慮します。

多くの工場や調達部門では、「Cpkが1.33以上ならOK」「1.67あれば安心」といった基準を設けて、客観的な判定基準としているケースが一般的です。

ですが、果たして工程能力指数だけで安全・安心な品質を語ることができるのでしょうか。

なぜ「工程能力指数」だけでは品質を語れないのか

製造業の現場に20年以上身を置いた立場から言えば、「工程能力指数はあくまで一つの尺度」にすぎません。
それだけに頼ると、重大なリスクや本質的な不具合を見逃す危険があります。

その理由には以下のようなものが挙げられます。

1. 工程能力指数の前提は「安定した工程」

工程能力指数の計算で最も大事なのは、その工程が「十分に安定している」ことです。
要するに、異常が起きていない、外乱要因が排除された状態のデータでないと信頼できません。

しかし、特にアナログ色の濃い昭和世代に根付いた現場や、職人の経験・勘に頼る現場では、この前提が成り立たないことが多いです。
本来はデータ収集前に「工程安定性」を管理図などで評価し、変化点管理などの管理活動も徹底する必要があります。
それを怠って、出来合いのサンプルデータで単純に計算してしまう例が多く見られます。

2.「短期能力」と「長期能力」の落とし穴

工程能力指数には「短期能力」と「長期能力」があります。
短期能力(初期のテストやスタートアップ時)は、工程が新品状態、または作為的に管理された理想的状態で算出されがちです。

一方、量産開始後や日々の現場環境下では、設備や治具の摩耗、周囲温度変動、作業者スキルなど多様な変動要因が介在します。
このため、短期の高い指数はすぐに低下し、「長期能力」をみるとスペックアウトしているケースも少なくありません。

多くの現場で、「ファーストロットは問題ないが、数ヶ月後に突如不良が激増した」といった事例が多発するのはこのためです。

3.「見えているもの」しか評価できない

工程能力指数はあくまで測定している「特性値」に対する評価です。
製品が持つ全ての品質特性を捕捉しているとは限りません。

例えば、寸法や質量のように測定が容易なものは統計管理しやすいですが、表面粗度や内部応力、外観や組立適合性など、“見えづらい品質”はデータ化しづらい現実があります。

「検査で測れるもの以外の品質」――これが案外、クレームや市場不良の原因となるケースが目立ちます。
熟練者の目視検査や「違和感」のような感覚値を、工程能力指数では表現できません。

4. 作為的データ、恣意的なサンプリング

本音を言えば、現場には「都合の良い時期だけを集計」「良い区間だけデータを切り出す」といった“作為的データ作り”が日常的に潜んでいます。
これはトップやクライアントの圧力、また工程管理者側の「成績づくり」へのプレッシャーが影響している場合も多いです。

これでは「見せかけの工程能力指数」となり、実態を反映しません。
むしろ、「工程能力指数が高いほど怪しい」と疑うべき場面さえあるのです。

5. サプライチェーン全体ではどうか

調達やバイヤーの立場では、サプライヤーから出された工程能力指数の報告書を信用するかどうかが重要です。
ですが最近は、多拠点展開やアウトソーシングが進み、工程自体の統一が難しい現実もあります。

更に、日本と海外拠点、または協力会社によって管理レベルが大きく異なることも。
供給先の“見えざる現場力”をどう評価するかが、調達戦略の核心となっています。

昭和世代の現場に根強く残るアナログ対応

日本の製造業には、良くも悪くも職人文化や手作業による暗黙知が根強く残っています。
「図面通り=品質良し」「合格マーク=安心」といった“形式美”が現場で今なお通用する部分も多々あります。

しかし、設計開発から現場まで一気通貫のデジタルマネジメントや品質工程の見える化が進むにつれ、「数字だけを取り繕うやり方」の限界も明らかになりつつあります。

現場では、「なぜここだけバラつくのか」「なぜ不具合の波があるのか」を“目で見て・手で触って・五感で感じて”イシューを洗い出すアナログ力こそ、AI・DXの時代にも不可欠です。

工程能力指数「だけ」ではなく、「現場改善」と「全体最適」が要

これまで述べたように、工程能力指数はあくまで「品質マネジメントの一資料」にしか過ぎません。
本当に安全・安心なモノづくり、顧客満足やブランド維持を考えるなら、「データ」と「現場の目」、「サプライチェーン全体のバランス感覚」が必要です。

現場に根ざした改善活動――例えばなぜバラツキが生じるのか、なぜ突発異常が起こるのか――を丹念に洗い出す姿勢、作り込む現場文化こそが、最終的な品質を決定づけます。

また、調達購買・バイヤーの観点では、単なる提出資料だけでなく、実際の現地監査やプロセスチェック、サプライヤー監査を通じ「見えない部分」まで確認する努力が不可欠です。

ラテラルシンキングが導く“真の品質”の追求

『工程能力指数だけで品質は語れない』――それは、視点を横に広げ、時に思いもよらぬところに本質的な改善点やリスクが潜んでいる、という現実を意味します。

工程能力指数は便利な数値である一方、現場の“生きた空気”、そこに流れる工程管理者・作業者・バイヤーのコミュニケーション、作業の癖など、「数字に現れにくい部分こそが本質」になる場合が多々あります。

今後は、AIやIoT、DXの進化で工場データはますます膨大になるものの、それを使いこなす“現場力”、異常やニュアンスを「気づく」能力自体はむしろ付加価値を増すでしょう。

まとめ:これからの品質管理に求められるもの

製造現場のプロの立場から、改めて強調したい点は以下の通りです。

・工程能力指数は「目安」に過ぎず、過信や“数字合わせ”はリスク。
・現場の「安定」「管理活動」「異常検知」など、生きたマネジメントが不可欠。
・全体最適、サプライチェーン全体の品質目線を持つこと。
・現地現物を「五感で感じる力」が、数値では表しきれない価値になる。

バイヤーを目指す方、サプライヤーの方、すべての製造業従事者にとって、「工程能力指数」に頼りすぎない、多角的な改善&チェックの視点を持つことが、これからの製造業の現場力を大きく左右していきます。

本当の「品質」とは、現場現物とデータをつなぎ、全体最適を目指して管理し続ける継続的な改善の中にこそ、息づいているのです。

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