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クレーム対策を成功させる品質管理手順と再発防止策作成のポイント

目次
はじめに:製造業の現場で求められるクレーム対策とは
製造業の現場では、常に高品質な製品の提供を求められる一方で、クレーム(顧客からの苦情や不良報告)への対応も重要な業務の一つです。
昭和時代から続く「現場のカンと経験」だけに頼った品質管理では、グローバル化やサプライチェーンの複雑化が進む現代には対応しきれません。
クレームが発生した際、その場しのぎの対応で済ませてしまう事例も多く見られますが、根本的な再発防止策を講じなければ、信頼失墜やリピートクレームにつながります。
そこで今回は、長年の現場経験を踏まえ、クレーム対策を成功させるための品質管理手順と、実効性のある再発防止策作成のポイントを、実践的な視点で解説します。
クレームが発生する背景と業界動向
現場で起きがちなアナログ的なミスとその原因
日本の製造業では、品質に対するプライドや責任感の強さから、小さな不具合でも徹底して是正しようとする文化が根づいています。
一方、作業手順書の更新が遅れたり、伝承的な指導方法による「言った・言わない」のコミュニケーションギャップ、複数部署間の連携不足など、アナログ的なトラブルも根強く存在しています。
背景には「長年の習慣」「ベテランだけが知っている勘所」「デジタル化の遅れ」などが絡み合っています。
これらを放置していては再発リスクが顕在化します。
グローバル化・多品種少量生産時代の新課題
取引先・サプライヤーがグローバル化し、多品種少量・短納期生産が常態化した現代。
部品の規格違い、海外拠点との意思疎通不足、情報伝達のズレやタイムラグによって、従来以上に「未然防止」と「迅速な是正」の両立が不可欠となっています。
また、SNSによる情報拡散の速さもあり、クレーム対応の一手遅れが企業ブランドの致命傷になるリスクも高まっています。
クレーム対応で大切な品質管理手順
1. 第一報の初動対応がカギ
クレーム発生後、もっとも重要なのが「初動」です。
被害最小化と信頼回復を両立させるため、第一報を受けた担当者がすぐに事実確認し、現場・責任部門・上層部へタイムリーに共有する体制が不可欠です。
初動を怠ると、
・不正確な情報が関係者間で拡散
・顧客説明時に言い訳や責任転嫁が発生
・後追いで証拠(現物、不良品、作業記録など)が失われる
といった、「信頼崩壊の負の連鎖」が始まります。
私は現場管理職時代、初動として「現場目線での5W1H記録」「写真付きで工程状況を残す」「関係部門一斉メール」の3点セットを徹底していました。
2. 工程遡り調査と現物確認
次に必要なのは、発生したクレームの「真因究明」です。
現物(製品・部品)を確保し、該当ロットや生産日時、担当作業者、使用設備記録などを漏れなく遡ります。
また、現場へのヒアリングは「責任追及」ではなく、「事実把握」「再発防止のため」と事前に伝えて協力を得ることが大切です。
調査時には「三現主義(現場・現物・現実)」を徹底し、作業指示書や記録類と現物状況に矛盾がないか複眼的に確認します。
3. 原因分析は「なぜなぜ分析」の徹底
原因分析では、「なぜ?」を最低でも5回繰り返し、多層的に掘り下げる「なぜなぜ分析(5WHY)」が有効です。
たとえば、
「不良品が発生」→「検査で発見できなかった」
→「検査基準が不明確」→「基準書の改訂がなかった」
→「改訂担当が異動して業務が引き継がれていなかった」、
というように本当の再発防止ポイントが分かるまで追求します。
同様に、FMEA(故障モード影響解析)、QC七つ道具(パレート図、特性要因図 など)の活用も視野に入れると再発防止の精度が増します。
4. 関係部門を巻き込んだクロスファンクショナル対応
品質管理部門だけでなく、調達・購買・生産管理・現場オペレーターまで部門横断での会議体や報連相ルールを作ることが、迅速解決・情報共有につながります。
重要なのは、「サプライヤーも巻き込むこと」です。
下請け・外注先にも迅速な協力要請をし、「貴社製品の品質は我々のもの」という意識を植え付けることで現場力の底上げにつながります。
5. 顧客への適切な説明とコミュニケーション
クレーム対応において、顧客からの信頼を維持・回復するには事実に基づく透明性の高い説明が不可欠です。
原因や今後の対応策、納期への影響や補償内容を迅速かつ誠実に伝えることで、「信頼尊重」の姿勢が伝わり、長期的な取引関係の礎となります。
実効性のある再発防止策作成のポイント
1. 物理的・管理的対策の両立
良くある再発防止の失敗例は、
「作業者への注意喚起」「指導の徹底」「教育の強化」だけで終わってしまうことです。
これは人間系の注意対策に偏り、真の「仕組み化」「自動化」への施策が弱い場合にありがちです。
再発防止策は、必ず
・物理的対策(治具改善、自動化検査導入、誤組立防止のポカヨケ装置など)
・管理的対策(作業指示書・標準書の改訂と定着化、工程内チェック表の新設など)
両方を組み合わせた提案が必要です。
2. 効果検証とPDCAによる持続的改善
再発防止策を講じて終わるのではなく、「その策が実際に効いているか」を定量的データで検証します。
具体的には、クレーム率・不良率・工程内不適合数・作業工数変化などのKPIを数ヶ月単位でモニタリングし、もしも再発可能性が見えたら速やかに対策を追加します。
この「PDCAサイクルを回すこと」が、昭和的な「一度きりの対策」から脱却するための必須要件です。
3. 部門間連携・情報共有の仕組みづくり
バイヤー(購買担当者)がサプライヤーと十分なコミュニケーションを行い、現場情報や改良経緯を分かりやすく共有することも重要です。
仕入先・外注先にも、再発防止策の内容・現場写真・教育のやり方を「見える化」して伝えることで、自社・パートナー双方の品質意識の引き上げにつながります。
アナログ業界で変革を促すためのヒント
現場目線DXのスモールスタート
デジタル化、IoT、AIを活用した品質管理システム導入は大企業中心に進みつつありますが、中小製造業や伝統的工場ではまだまだ壁があります。
まずは、現場で実施している「紙のチェックリストを簡易デジタル化」や「スマホでの不良写真共有」など、身近な仕組みからスモールスタートするのが大切です。
現場からの「これなら使いたい」「記録が便利で役に立つ」という声を拾い上げ、小さな改善の積み重ねが大規模改革への第一歩となります。
多能工・クロストレーニングの推進
属人的な知識や作業ノウハウに依存しがちな現場体質も、クレーム再発防止の障壁です。
若手・ベテラン、多国籍チームで多様な工程をローテーションし、多能工化やクロストレーニングを推進することで、「どこでも誰でも高品質」が実現しやすくなります。
これはしばしば「現場の抵抗感」に直面しますが、小さな成功事例を積み上げてチームを巻き込むことがポイントです。
まとめ:クレーム管理は「攻めの品質経営」への第一歩
クレームは事業活動上ゼロにはできない「必然のコスト」とも言えますが、その対応の質こそが現場の力・バイヤーの力量・サプライヤーの信頼度をはかる指標となります。
従来型の「対症療法」から一歩踏み込み、
・初動の素早い事実把握
・多面的な原因分析
・物理的・管理的な“仕組み”による再発防止
・PDCAを回す組織文化
・現場入り込みによるアナログ改善+スモールDX
を進めることが、令和時代の製造業に求められています。
バイヤー、サプライヤー、現場メンバーそれぞれが「つながり合う品質文化」を醸成し、「クレームの先にある顧客価値創出」をみんなで実現しましょう。
この現場発・実践重視の品質管理手順と再発防止策が、皆さまの日々の現場に少しでもお役立ていただければ幸いです。
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