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品質工学の基礎ロバスト設計の有効活用による品質向上設計段階における品質工学の活かし方

目次
はじめに
製造業は常に効率化と品質の向上を求められる厳しい世界です。
特に日本の製造業界では、「良いものを、より安く、より早く」という価値観が昭和の時代から根付いてきました。
しかし、グローバル競争が激化し、顧客ニーズが複雑化する中で、従来型の“気合と根性”だけでは高品質を保つことが難しくなっています。
そこで今注目されているのが、品質工学の考え方です。
なかでも“ロバスト設計”は、設計段階から製品品質を安定させる強力な手法として、多くの現場で導入が進んでいます。
本記事では、現場経験20年以上の視点で、品質工学の基礎、ロバスト設計の実践的な活かし方、アナログ感の残る業界の動向などを交えながら、実際の現場でどう役立てるかを解説します。
バイヤー志望の方やサプライヤー側でバイヤー視点を知りたい方にも役立つ情報を盛り込みます。
品質工学とは?現場目線で解説
品質工学の基本的な考え方
品質工学は、故・田口玄一博士によって体系化された「品質を科学的に設計・管理するための技法」です。
単なる検査や規格遵守ではなく、設計や生産の初期段階から“ロス”(無駄・不良)を最小限に抑えることに重点を置いています。
その基本原則は
– 品質は最初の設計段階で決まる
– ロス(品質のバラツキ)を事前に見える化する
– 管理しやすい技法で“標準化”しやすくする
にあります。
例えば、昭和の現場では「不良が出たら直して納期を守る」が一般的でした。
しかし、現代では“不良自体を出さない設計”が求められています。
そのための手法が品質工学です。
ロバスト設計とは何か?
ロバスト設計とは、環境や条件が多少変動しても安定した高品質が保てる設計のことを指します。
「ロバスト(robust)」とは「頑健な、揺るがない」といった意味があります。
たとえば、ある自動車部品を設計する際、気温や湿度、作業者や設備の違いが影響しても不良が出にくい設計にしておく、ということです。
ロバスト設計は、特にグローバル展開や多拠点生産が加速する中で、その真価を発揮します。
ロバスト設計の有効活用と実践
なぜロバスト設計が求められるのか
現場でよく聞く悩みの一つが「調達先によって不良率が大きく違う」「同じ設備・人でやっても不良が出る時と出ない時がある」という声です。
従来であれば、こうしたバラツキを「現場の腕」でカバーしてきました。
しかし、設備の老朽化や熟練者の減少、国際分業拡大(ローカルベンダーの活用)などで、現場対応だけでは限界を迎えています。
だからこそ、最初から「誰がやっても、どこで作っても7割は合格」という頑健な設計、つまりロバスト設計が必要なのです。
ロバスト設計の基本手順
1. 設計対象(製品・工程)のユーザーニーズと求める品質特性の明確化
2. 外乱(ノイズ)要因の抽出
3. パラメータ設計(最適化)
4. 検証・標準化・水平展開
具体的には、「温度」「湿度」「材料ロット」「作業者」などのノイズを洗い出し、その影響が最小になる設計・条件・手順などを、田口メソッド(直交表実験やS/N比といった統計技法)で追求します。
現場で使えるロバスト設計のノウハウ
– サプライヤー評価にも威力を発揮
新製品の部品開発などで、どのサプライヤーが安定した品質かを見極める時、ロバスト設計の考え方を適用できます。
実際に意図的に“悪条件(ノイズ)”で試作品を作ってもらい、どこまで品質を安定させられるかを見ます。
調達先が変わっても通用する部品や、バイヤーから高評価を得られるサプライヤーになるためには、ロバスト設計の実践がカギとなります。
– 設備更新・デジタル化との連携
古い設備や人の勘頼みだった工程も、ロバスト設計と設備データの可視化を組み合わせることで、デジタル化・自動化への地ならしができます。
AIやIoT導入が進む今、現場データ×ロバスト設計で“設計品質”を強化することができます。
品質工学の導入で変わる現場の姿
昭和的アナログ体質からの脱却
今なお多くの現場で「帳票は手書き」「不良解析は経験者頼り」が根強く残っています。
しかし、ロバスト設計を現場で導入してみると、手順が明確になり再現性が高まるため、デジタル時代の標準化や多能工育成にも好影響をもたらします。
“いつも同じ失敗パターン”“気温が変わると不良が頻発”と言った課題も、品質工学で数値化・整理することで、本質的な解決へとつながるのです。
バイヤー視点で見るロバスト設計の強み
– 複数サプライヤーの製品で品質安定性を比較
– コストだけでなく「納入リスク」「保証コスト」減にも直結
– 改善提案型サプライヤーとして選ばれやすくなる
ロバスト設計を導入・実践しているサプライヤーは、バイヤー側から「信頼性が高く手間もコストも少ない」と評価されます。
バイヤーを目指す方なら、ロバスト設計的観点で部品仕様や工程設計を見る目を養うことは大きな武器になります。
現場に根付く品質文化とこれから
なぜ設計段階で品質を見るべきなのか
現場経験上、設計段階で「ちょっと不安だが現場でなんとかなるだろう」と流してしまった設計変更が、量産後の大不良やリコールにつながった事例は少なくありません。
設計段階でのロバスト設計は、品質トラブルの未然防止、サプライチェーン全体のコスト最適化、顧客満足度向上にも直結します。
これが今、製造業サイドでもっとも注目されている理由の一つなのです。
業界動向と今後の展望
グローバル化・多拠点生産・内製から外注へのシフトが加速する中、ロバスト設計を軸とした品質工学の活用はますます重要になっています。
また、カーボンニュートラルやSDGsといったESG対応が強まる時代、ムダな不良やリワーク・返品を減らせる“環境配慮型品質づくり”としてもロバスト設計に注目が集まります。
AIやIoT・クラウドシステムの進化で、データから因果関係やノイズ要因を簡単に解析できるようになってきました。
今後は、現場力(アナログ)×品質工学(ロバスト設計)×デジタル(AI・データ解析)のハイブリッド展開が“これからのものづくり”の標準になるでしょう。
まとめ
品質工学、とりわけロバスト設計は、昭和時代から続くアナログな現場文化にも着実に浸透しつつあり、現場の“新しい品質スタンダード”になりつつあります。
サプライヤー・バイヤー双方の視点で見ても、設計段階からのロバスト設計はリスク低減、コスト競争力強化、持続的成長につながる“攻めの品質戦略”です。
昭和の「現場力」に、平成の「標準化・データ化」、そして令和の「デジタル・AI」を掛け合わせ、設計から生産、調達に至るまでロバスト設計を武器に、ぜひ競争優位を築いていただきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、現場を変えたいと考える製造業従事者、バイヤー志望の方、サプライヤー目線からバイヤー心理に迫りたい方のヒントになることを願っています。
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