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現地生産と国内品質を両立させる日系中小企業の品質マネジメント事例

目次
はじめに:現地生産と国内品質の狭間で奮闘する日系中小企業
製造業を取り巻く環境が大きく変化する中、国内のみならず海外での生産拠点を構える中小企業が増えています。
グローバル化に追随し、コスト競争力を高めるためには現地生産は避けて通れません。
しかし「現地生産=品質低下」のリスクと直面するのが現実です。
本記事では、私が20年以上にわたり現場で見てきた実態、そして実際に効果を上げている現地生産と国内品質を両立させる品質マネジメント事例に焦点を当てます。
昭和から抜け出せないアナログな現場でこそ根付く知恵や工夫も交え、“日本品質”を海外でも実現するためのヒントを提供します。
サプライヤー、購買担当者、現場エンジニアにとっても実践的な内容となっています。
現地生産で陥りがちな品質リスクと現実
なぜ現地生産は品質が落ちやすいのか
現地の工場で生産を始めると、日本国内では当たり前だった「きめ細やかな気配り」が通じないことがよくあります。
背景には文化・言語の違いだけでなく、“仕事観”そのものの違いがあります。
「不良が出たら報告する」というより「不良が出たことは隠したい」と思う現地スタッフも少なくありません。
指示しても曖昧な理解で作業が進む、日本の“阿吽の呼吸”が通用しない。
特に設備のメンテナンスや検査工程の徹底度に差が出やすく、バラツキ・不良が増加する傾向があります。
ローカルスタッフの定着課題と教育の壁
現地スタッフは人の入れ替わりも多く、せっかく教育してもすぐ辞めてしまうという悩みもよく聞かれます。
会社のビジョンや品質方針を深く浸透させるには数ヶ月、数年かかるものです。
短期の駐在や現地任せの運営では「日本人と同じ品質意識」を根付かせることは難しいのが実情です。
日系中小企業が現地生産で国内品質を実現するためのポイント
徹底した現場観察と「現場・現物・現実」の重視
私が現場の工場長として駐在していた時も、「現地に丸投げ」することの危うさを強く感じていました。
現地スタッフやオペレーター、検査員と“同じ目線”に立ち、ともに現場を巡回します。
どんな小さな不具合や違和感も指摘し、“一緒に”解決策を考えるスタンスが信頼関係に繋がります。
現場から遠ざかるのではなく、「現場・現物・現実(3現主義)」を徹底し続けることが重要です。
“昭和のやり方”の再発見〜目視+アナログ工程表の活用
最新のIoTや自動化に目を奪われがちですが、海外現地工場ではまだまだ「アナログな工程管理表」や「朝礼での品質唱和」が力を発揮します。
特にチェックシートやダブルチェック体制は、誰にでも分かりやすく、人的エラーを防ぐのに有効です。
余計な投資をせず、「守りの仕組み」を作ることが現場力向上に繋がります。
現地スタッフの“なぜ”を言葉で紐解く
「これはこうやるものだ」「品質は大事だ」という押し付けでは、現場は動きません。
現地スタッフそれぞれの“なぜその作業が必要か?”“不良はなぜ出るのか?”という根本的な疑問に対し、対話の中で時間をかけて説明することが大切です。
教育やOJTのカリキュラム作成時も、「手順」だけでなく「意味」「背景」まで丁寧に伝えることで、自律的な品質向上意識が芽生えます。
品質指標の“見える化”と、現地の成功体験の積み重ね
品質不良率、納期遵守率など、KPIをシンプルに“見える化”することは大前提です。
ただし、グラフや数字だけ並べても現地下では動機づけにつながりません。
小さな改善が実現したとき、例えば「不良率が3ヶ月連続ゼロ」など、現地メンバー全員で称賛する文化づくりの重要性も経験から痛感しています。
成功体験の積み重ねが“誇り”へと変わり、国内品質の再現に不可欠なモチベーション源となります。
実践事例:アジア現地工場の品質を変えた日系企業の取り組み
ケーススタディ1:現地自主管理チームの組成
中国の某部品メーカーでは、現場リーダークラスを選抜し「自主管理チーム」を結成しました。
日本人管理者は「絶対に主役にならず、黒子役」に徹します。
例えば品質会議でも、主役は現地スタッフ。
不良品発生時の報告・原因究明・対策立案まで「自分ごと」として考えさせる土壌を作った結果、わずか6ヶ月で大幅な不良削減に成功しました。
このような「任せて信じる」体験を現地で積ませることが、品質文化の自走化には不可欠です。
ケーススタディ2:作業標準書のローカライズとアナログ補強
タイの精密機械部品生産工場では、日本語で作成された作業標準書を現地語に翻訳するだけでなく、現地スタッフ撮影の“作業動画”も並行して導入。
さらに「写真入りのミス事例集」「ベテラン現場リーダーによる寸劇」を交えたOJTも実施しました。
最新ICTだけに頼らず、昭和的アナログ発想で現場が分かりやすいところまで落とし込むことで、人為的ミスの激減につながりました。
ケーススタディ3:バイヤー(購買担当者)と現場の橋渡し
ベトナムの協力工場では、日本本社のバイヤーが毎月1回現地に足を運び、「品質・納期・コスト」のバランスを現場と一体で話し合います。
「何をどこまで求めるか」「どこで妥協点を見出すか」を現場スタッフと共に検討。
その場で不良品サンプルを見ながら解説、要望だけを突きつけるのではなく、現場視点に寄り添った“現地化”交渉を行っています。
この取り組みが現場の納得感・やる気を生み、両社ウィンウィンの品質維持に直結しています。
最新業界動向:デジタル時代でも“人”の力は最重要
大手メーカーではIoT・AIの導入が進んでいますが、中小企業では全自動化は予算的にも人材的にも難しい現実があります。
しかし「ものづくり・ヒトづくり」の本質を見失わなければ、“昭和流”アナログ手法と最新技術のハイブリッド運用で、十分に国内品質を現地で再現できます。
むしろ現地下請けで“日本式の現場力”“小回りの効く改善文化”が競争力となり、世界のバイヤーから選ばれる要因になっています。
サプライヤー・購買担当者・現場エンジニアが知るべきこと
サプライヤー側:遠慮せず現場の悩みと課題を共有する
日本本社やバイヤーからは厳しい品質要求を突きつけられることが多いですが、「納期が厳しい」「現地スタッフの稼働が低い」という実情を正直に伝えることで、実践的な改善案や支援策を引き出せる可能性が高まります。
“できる・できない”の率直なコミュニケーションで、無理のない品質目標を目指しましょう。
バイヤー(購買担当者)側:現地“巻き込み型”調達のすすめ
コストや納期も重要ですが、「品質=現場のモチベーション」から生まれることを理解しましょう。
トップダウンで“要求事項”を押し付けるのではなく、サプライヤー現場と一緒に悩みを洗い出し、改善活動に巻き込むことが、結果的に品質・コスト・納期全ての最適化につながります。
現場エンジニア:ローカル流改善と標準化のバランス感覚
現地独自の知恵ややり方も尊重しながら、日本式の“標準化力”で仕組みに落とし込む発想が必要です。
自分たちの当たり前を疑い、「現地で機能する品質マネジメント」を構築しましょう。
まとめ:海外現場でも“日本品質”は作れる
日系中小企業が現地生産で国内品質を実現するためには、マニュアルやICT導入以前に、“人”に根ざしたものづくり文化を伝える工夫が欠かせません。
昭和から受け継いだ現場主義、現地スタッフへの現場密着、教育・見える化・称賛の仕組み。
これらを愚直に積み重ねることで、確実に“現地でも日本品質”の花は咲きます。
サプライヤー、現場エンジニア、調達バイヤーが一丸となり、時代とともに進化し続ける現場づくりを目指していきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
現場で悩む方々の一助になれば幸いです。
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