投稿日:2025年9月6日

OEM工場と進めるペット用品の品質テストと検査フロー

OEM工場と進めるペット用品の品質テストと検査フロー

ペット市場の拡大に伴い、OEM工場へのペット用品の製造委託が急増しています。
しかし、ペット用品は、人間の製品以上に「安全性」「耐久性」「衛生面」など高い品質水準を求められる分野でもあります。
多くのメーカーやバイヤーが直面する課題、それはOEM工場とどのように連携し、確実かつ効率的な品質テストと検査フローを構築するかという点です。
本記事では、現場目線で実践的かつ時代に合わせた製造管理ノウハウを、ラテラルシンキングを交えながら解説します。
OEMパートナー選定前の見極めポイントから、昭和的な工程管理の課題、新たな検査手法の導入まで、バイヤーはもちろんサプライヤー、自社で製品開発を進める担当者にも役立つ内容となっています。

なぜ今、OEM工場とペット用品の品質が重要なのか

市場拡大が意味するもの

ペット用品市場は年々拡大を続けています。
コロナ禍をきっかけにペットとの生活を始める家庭が増え、「家族の一員」としての意識が強まることで、品質への期待値もかつてない段階に引き上げられています。
一方で、OEM委託が当たり前になった現状は「安価・短納期・大量供給」という利点だけではなく、「品質トラブル時の責任分担」「サプライチェーンの透明性確保」といった新しい課題も生み出しています。

バイヤー視点でのリスク

・万一のリコールによるブランド毀損
・「粗悪品=安かろう悪かろう」のレッテル
・消費者クレームの爆発
を避けるためには、「検査フロー」「品質テストの妥当性」「不良品流出防止」の3点セットが絶対条件となっています。

OEM工場選定時から始まる品質づくり

品質意識は最初の打ち合わせから見抜ける

私が経験上もっとも重視しているポイントは、「工場見学」と「打ち合わせ時のQAの質」です。
例えば、製造現場を案内された際に、清掃状況・表示ラベルの管理・作業者の身だしなみ・帳票管理の現れ方、こういった「昭和から変わらない基本」をおろそかにしている工場は、どれだけデジタル化しても本質が改善しません。
逆に、現場が古くても「なぜこの管理をしているのか」をしっかり説明できる担当者がいるなら、そのOEM先は信頼に値します。

アナログ管理からデータドリブンへ変革する兆し

とはいえ、製造業界の多くは未だ帳票や検品結果をExcel・紙のまま管理しがちです。
しかし、近年では「IoTカメラによる自動記録」「クラウド型QCツール」「AI外観検査」など、最新のデータ活用も進みつつあります。
まずは現状チェックリストや検査帳票の電子化からスタートし、徐々に自動化・分析のフローを整えることをオススメします。

ペット用品の品質テスト、何が求められているか

素材・パーツごとのリスク評価

ペット用おもちゃ、ベッド、フードボウル、ケージなど、製品ごとに「想定されるペットの使用状況」を深く分析しなければなりません。
例えば噛むおもちゃであれば「ひっぱり強度」「口に入った際の安全性」「誤飲時の分解状況」など、ベッドであれば「破裂・綿抜け」「洗濯後の復元性」「縫製強度」など、製品×素材ごとのリスクマップを作成することが重要です。

法規制・業界基準を押さえる

日本ではペット用品に明確な法律規制は少ないですが、子供用玩具の基準(ST基準など)が参考になります。
また、ヨーロッパ・アメリカ市場向けの場合、EN規格やASTM規格の知識も必要です。
自社ブランドを守るためにも、「最もシビアな規格値」に合わせたテストをOEMに依頼するのが基本となります。

検査フローの全体像を設計する

入荷前サンプルチェック

OEM工場との「金型サンプル」「量産前サンプル」段階で、社内の基準検査を徹底しましょう。
独自の試験項目(引張り強度、落下・圧縮試験、経年変化、耐腐食・耐熱・耐洗濯性など)を用意し、実使用時を想定したストレステストまで行います。

量産時のライン検査・抜取り検査

量産時には、日々の「ライン内検査」と「最終抜取り検査」を組み合わせることが一般的です。
昭和的な「外観チェックだけ」というやり方を脱し、IoTセンサーや自動カメラを活用した管理体制をOEM工場と構築することで、「見逃し」や「作業員依存」を減らせます。

第三者検査機関やサプライヤーとの連携

国内外の公的な第三者検査機関、またはOEM側の下請けサプライヤーにも、自社の品質基準や検査サンプルを共有し、不良流出防止と情報の透明化を図ります。
特に輸入品では日系商社による現地立会い検査も活用できます。

出荷前検査と市場流出リスク評価

出荷前の最終検査では、「既存ユーザーからのクレーム事例」「市場回収時の原因分析」などフィードバック情報をOEM工場に伝え、実際に起きうる事故対策や見落としやすい箇所を重点的にチェックします。
現場のリアルな声を共有することが、形骸化しがちな検査工程の質を高めるポイントです。

品質トラブルを未然に防ぐために

なぜ現場にトラブルが起きるのか

・「検査項目が形だけ」になりがち
・不良流出後、「お互いの責任押し付け合い」
・「誰がどこまでチェックしたかわからない」
こうしたトラブルの多くは、昭和的なアナログ志向(業者任せ・帳票確認のみ・現場任せ)が根底にあります。

トラブル防止チェックリストの活用

OEM工場・バイヤー双方で日々の
・検査内容の見える化
・誰がいつ何を確認したかの履歴管理
・不良発生時の即時フィードバック体制
を「チェックリスト」や「タブレット記録」などで共有すること、これが最初のステップとなります。

OEM工場への教育・意識づけ

OEM工場に検査機材や規格書を渡すだけでは「やったフリ」になることが多々あります。
月1回のオンライン品質会議、現場のQCパトロール、成功事例の定期共有、外部研修参加など「意識づけ→仕組み化」の両輪が必要です。

これからのOEM×品質管理はどう変わるか

昭和から令和へ、現場の変革の本質

これまでは「人の目と経験」でチェックしていた工程を、これからは「データ」と「トレーサビリティ」を起点に再構築する必要があります。
例えば、AI画像認識で外観不良を即検知したり、全数検査データをクラウドで管理して流出原因を可視化するなど、デジタル時代の新たな品質保証をOEMと一体となって作り上げる時代です。

バイヤーとサプライヤーの心理的距離を縮める

最終消費者(ペット)目線の「何が安全か・何が危ないか」をOEM工場とバイヤーが一緒になって考えるプロセスこそが、令和時代の「ブランド価値」を生みます。
発注側・受託側が「取引関係」を超えた「共創パートナー」になることで、単なるコスト競争から脱却し、「選ばれるOEM工場」「売れるペット用品メーカー」へ成長できます。

まとめ:現場主導で進化するOEM品質テスト体制へ

ペット用品の品質保証は、単なる製品検査にとどまりません。
設計段階から始まる「品質づくり」、OEM現場とのリアルな対話、法規・最新技術を取り込んだ「柔軟な検査フロー」、そして不良発生時のスピーディーな改善サイクル。
「安心して使えるペット用品」を世に送り出すための本質は、現場・管理者・OEMパートナーの三位一体の仕組み化です。
アナログ業界ならではの強みと、デジタルが切り拓く新しい地平、その両方を活かしながら、ペット市場の未来にふさわしい「安心」と「品質」を共に実現していきましょう。

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