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品質トラブルは“必ず連発する”という現場経験則

目次
はじめに:現場から見た「品質トラブル連発」のリアル
製造業の現場に長くいると、一度発生した品質トラブルは“例外なく続発する”ことを痛感します。
たまたまの偶発事故だろうと楽観すると、必ず二度、三度と再発します。
これは昭和の時代から令和に至った今も変わらぬ現場の真理です。
本記事では、なぜ品質トラブルは連発するのか、その背景と現場に根付く事情、そして連発を防ぐための実践的なマインドセットや仕組みについて深掘りします。
調達購買、生産管理、品質管理や工場の自動化などの立場からも、現場目線で明日から役立つ「使える知見」を共有します。
なぜ品質トラブルは“必ず”連発してしまうのか
現場でよくある「なぜかまた起きる」の正体
品質トラブルが発生した直後は、現場も開発も一時的に緊張感が高まり対策も講じます。
しかし、時間の経過とともに元の日常へと戻ります。
徹底した再発防止を図ったつもりでも、「同じようなトラブル」がすぐ起きる――この現象は製造業で働く誰もが一度は経験しています。
一見、原因をしっかり取り除けたようで、実は“根っこ”まで解決できていない、このパターンが非常に多いのです。
昭和的な現場文化では「人が気を付けて対応する」や「バラツキは現場の技能で対応する」という属人的な発想が根強く残っています。
自動化が進んできた今でも、現場力に頼りきる傾向は強く残り、「根本的な仕組みの改善」までたどり着かず、同様のトラブルが繰り返されるのです。
“ハインリッヒの法則”が示す品質現場の現実
事故やトラブルには必ず「予兆(ヒヤリ・ハット)」があります。
1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故、300件のヒヤリ・ハットが存在すると言われます。
製造現場も同様で、小さなミスや見過ごしが品質トラブルの前兆です。
これを可視化・共有せず、「運が悪かった」として終わらせることで、“次もまた起きる”の悪循環を繰り返してしまいます。
昭和から抜け出せない「アナログ現場」の現状と壁
現場日報・書類主義に潜む落とし穴
今も多くの工場では、手書きの日報、Excelの手入力帳票、FAXによる連絡が当たり前となっています。
「記録してさえいれば安心」という風土が強い一方、現象や事実が埋もれてしまい、振り返りが機能しない現場も多いのが実情です。
また、「責任の所在を明確にするため」という理由で形式的な報告書が氾濫しますが、肝心の現場の“なぜ起きたか”に迫ることなく対策指示だけが並ぶケースも少なくありません。
伝統的な「現場力」への過信と属人性のリスク
熟練者の経験や勘に頼る「現場任せ」の運用は、多くの日本のモノづくり現場を支えてきました。
しかし、その反面、イレギュラーなトラブルが起きた時に原因がブラックボックス化しやすく、“なぜまた起きたか”の追跡が難しくなります。
また、現場間で「個人のやり方」が異なると、部品の取り違えや仕掛品の混入といったミスが再発する温床となります。
バイヤーとサプライヤーの“品質観”のギャップ
バイヤーが見落としがちな現場のリアル
調達側は「品質を確保して当たり前」「万一トラブルがあればすぐに原因追及と対策実施」と考えがちです。
しかし、実際の現場では「初期流動のバラつき」「工程ごとの引き継ぎミス」「管理のすき間」など多くの不確実性が潜んでいます。
バイヤーもサプライヤーも「ゼロトラブル」を目指しますが、“仕組みそのものが不完全”である限り、一度起きたトラブルは「必ず連発する」傾向があります。
サプライヤー現場が抱える課題
サプライヤーは「納期最優先」「コストカット」「多品種少量生産」といったプレッシャーのもと生産しています。
繁忙期や急な仕様変更時には現場でムリ・ムダ・ムラが急増し、トラブル再発リスクも高まります。
バイヤー側が「トラブルがまた起きた=サプライヤーの管理能力不足」と短絡的に判断しがちですが、現実にはプロセス全体としての仕組み不足や情報伝達の断絶が原因になっていることが少なくありません。
現場経験則から学ぶ「連発させない」ための工夫
再発を“当たり前”と認識する現場カルチャーの必要性
「一度起きたトラブルは必ずまた起きる」
この現場経験則を基盤とし、再発防止策を「一度で完璧」と高を括らず、常に「二の矢、三の矢」を準備することが重要です。
・初動で対策を講じたら、2度目3度目の再発ケースを想定してさらにプロセスを補強する
・「現場にヒヤリ・ハットを報告した者が評価される文化」を根付かせる
・改善策を「形骸化させず、必ず現場に落とし込み現場指導までセットで完了」とする
現場の再発防止策は、やって終わりでなく「根付くまで続ける」こと。
このサイクルが本当の“再発防止”の入り口となります。
アナログ現場でもできる“再発防止”のテクニック
・同じトラブルが社内、拠点内、グループ各社で起きていないか情報を横展開する
・現象の「発生メカニズム」「不良流出までのルート」を紙一枚で現場全員に見える化する
・トラブル報告書を「再発防止策が定着済みか」まで確認し、定期的に現場実態監査を加える
アナログ現場こそ、“人”の気付きと習慣づくりが再発連発リスクを最小にします。
デジタルツールが導入されていなくても、現象の可視化と現場同士のコミュニケーション促進で「又事故」を防ぐ仕組みを磨けます。
IT化・自動化の時代でも「現場見える化」が最優先
IoTやAIの導入で「現場見える化」は進みつつある一方、トラブル情報が現場外のシステム担当やエンジニアだけでクローズしてしまい、「現場で生きた知恵」として共有されない事例が増えています。
自動化ラインで不良が再発する場合でも、
・不良検知タイミングの見直し
・システムとリアルな現場状況のギャップ分析
・現物検証による“現地現物”主義
この3点を徹底するだけで、再発防止の質は大きく向上します。
現場経験者が伝えたい「品質トラブル連発」を抜け出す3つの視点
視点1:「未然防止志向」にトランスフォームする勇気
目の前の火消し対応に追われがちな日常業務から、
「そもそも未然に防げていたはず」という問題意識に立ち戻ることが現場改革の第一歩です。
“やらかしてから考える”スタイルは、必ず同じ失敗に繋がります。
「この工程で、どんなトラブルに発展する?」「どんな時に判断ミスが増える?」と、現場メンバーと事前に議論し、起こりうる失敗を先回りして潰していきましょう。
視点2:「他社・他現場やバイヤーの動向にも常にアンテナを張る」
部品や工程が異なっても、現象としては“同じタイプの再発トラブル”があります。
自社内の閉じた改善だけでなく、他社の失敗事例や、バイヤーからのクレーム内容、業界でホットな品質動向を常にウォッチし、現場メンバーにフィードバックすること。
サプライヤーの立場でも「バイヤーがどんなリスクを警戒しているか?」を深く理解し、自社産業の仕組みや改善に反映するのが、連発防止の近道です。
視点3:「“起きてしまう前提”で仕組みを磨き続ける」
いくら対策しても、「トラブルゼロ」はほぼありえません。
「必ず起きる」「だからこそ、起きてもダメージが最小になる仕組みにする」と意識をアップデートしてください。
多重防御、異常発見時の即時連絡体制、二重チェック機能など、“連発”しても大災害につながらない多層防御を現場起点でデザインしなおす。
この“しつこさ”を持つことが現場の未来を守るカギです。
まとめ:慣れと慢心が“連発”の最大の敵
品質トラブルは「起こってから対応する」では“必ず連発する”のが現場の冷徹な現実です。
現場の慣れと慢心は、ほんの小さな穴から大きな“又事故”を招きます。
アナログ文化が根強く残る日本の製造業でこそ、「人」と「仕組み」を同時進化させ、経験から学び抜きましょう。
バイヤーもサプライヤーも、「一度起きたら“次も必ずある”」の視点を前提に真の再発防止を追求する。
それが、これからの現場力になるはずです。
最後に、どんなに自動化・IT化が進もうと人の見守り・問いかけが必要不可欠です。
“品質トラブルは必ず連発する”という現場経験則を、新しい世代へしっかりと語り継いでいきましょう。
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