調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2025年12月13日

現場の“その場しのぎ対策”が将来の爆弾を作るパターン

現場の“その場しのぎ対策”が将来の爆弾を作るパターン

ものづくりの現場では、日々さまざまなトラブルや課題が発生します。
限られた人数と時間の中で、なんとか製造ラインを止めずに納期を守ろうと、現場は知恵と工夫で乗り切ろうとします。
しかし、その「その場しのぎ」の対策や対応が、将来の大きな問題、つまり爆弾となってしまうケースが決して少なくありません。
ここ数年のDXやスマートファクトリー化の波が押し寄せる中、昭和型のアナログ対応に頼ってきた現場体質が、どうやって今の時代に適応していくべきなのか。
製造に携わるバイヤーやサプライヤー、そして現場の皆さんに向けて、20年以上日本の製造業現場を歩いてきた立場で、実例とともに課題と対応策を深掘りしていきます。

1. その場しのぎが生まれる背景に迫る

なぜ“根本解決”ができないのか

現場には、業務を滞らせず目先のトラブルを解決する「応急対応」が求められることが多いです。
「今やらなければラインが止まってしまう」「納期に間に合わない」という状況下では、理想やルールよりも“目の前の火消し”が優先されます。
特に、古くから運用されてきた工場や、多品種少量生産を行う現場では、システムや設備が最新でなく、突発的なトラブルに柔軟に対応しなければなりません。
そのため、つい「後で直せばいい」「今日はこれで乗り切ろう」と妥協する場面が増えがちです。

人手不足と多忙化が拍車をかける

近年、製造現場は深刻な人手不足に悩まされています。
残されたメンバーで最大限のパフォーマンスを求められる中、「とりあえず回せるように」という文化が根付いてしまっている現場も少なくありません。
そして「いつか直そう」と先送りされた“仮対応”が積み重なり、気付けば生産工程全体に歪みを生み出してしまうのです。

2. 代表的な“将来の爆弾”例

マニュアル未整備、個人ノウハウの属人化

オペレーターごとの経験や腕で乗り切る、といった属人化は、昭和から続く日本の現場の美徳である一方、退職や異動が起きたとたん、情報やノウハウが現場から失われてしまいます。
新たな人材が同じ対応を再現できず、品質問題やトラブルが表面化する――こうして爆弾が“起爆”してしまうのです。

帳尻合わせの在庫管理が招く損失

調達や購買の現場では、急なオーダー変更や遅延に対応するため、見かけ上の在庫を“手元帳”で回避するケースがあります。
これを繰り返すうちに、実際の在庫数とシステム上の在庫数の乖離が拡大し、いざという時に材料不足でラインがストップ、大損失を被るパターンがあります。
また、帳票や記録が紙や手書きで保管されていると、可視化や分析も難しくなります。

不適切な設備補修による劣化加速

機械や設備のトラブル時に「応急処置」を重ねてしまうことで、本来なら大規模修理が必要だった不良が見落とされ、突如として全体停止につながるケースがあります。
モーターの異音を“気合い”で無理やり使い続けたり、制御盤のエラーにアラームカットで対応したり……現場ではこうした話が後を絶ちません。
結果的に、数百万~数千万円規模の設備損傷や事故に発展してしまいます。

ERPや購買システム導入と現場フローの乖離

デジタル化やDX推進が叫ばれる中、「システムだけ先行導入」「現場の運用が追いつかない」現象も多発しています。
結果、現場はシステムが使いやすいように勝手にルールを変え、本来意図した管理精度や効率化が一切進まないまま、むしろ複雑さが増してブラックボックス化……。
いつ誰がどの処理をミスしたか分からず、監査や不正、ミスの温床となります。

3. その場しのぎ→将来爆弾のメカニズム

「問題の見える化」と「事実の記録」不在

応急対応が常態化すると、「なぜそうなったか」「本当に必要だったのか」といった事実が記録されなくなります。
原因究明(トレーサビリティ)もできず、同じ問題が再発しても抜本解決にたどり着きません。
このような現場では、振り返りや改善ループが機能せず、“マンネリ化した危機感”に陥りやすいのです。

エスカレーション文化の希薄化

「上司や管理部門に報告しても無駄」「現場がなんとかするしかない」という風土が強いと、小さな違和感や異常値が共有されず、気付かぬうちに累積的な問題に発展します。

前例踏襲主義がもたらす本質把握の欠如

過去に成功(もしくは大きなトラブルにならなかった)事例を、とりあえず真似する“前例踏襲主義”。
新しい視点や、真因追及の思考が弱くなり、同じ轍を何度も踏みやすくなります。
特にサプライチェーンの変化や、外部要因(天候異常や世界情勢の激変)が激しい時代には、この思考停止が致命傷となることも。

4. 強い現場が“爆弾”を抱え込まないために

シンプルな情報共有・記録ルールへ

現場が無理なく続けられる形での“事実の記録”を徹底しましょう。
「紙✕手書き」でOKです。
ただし、現場の誰が、いつ、どんな応急対応をしたか、必ず時系列で情報を残します。
Excelや簡易なスマホ入力でも構いません。
この小さな積み重ねが、本質的な問題の俯瞰や振り返りを可能にします。

「なぜなぜ分析」の徹底と素早い改善提案

出た問題の本質を分解していくためには、現場が「なぜ?」「本当にこれが原因か?」と掘り下げていく文化が不可欠です。
品質管理やTPM(Total Productive Maintenance)活動で広まった“なぜなぜ分析”を、現場の日常業務でも活用しましょう。
「今日はこれで応急処置したが、なぜこの問題が起きてしまったのか」。
小さな「なぜ」を面倒がらず積み重ねることが、将来の“爆弾”退治の基礎になります。

現場も巻き込むシステム最適化

ERPやSCMなど大規模なシステム導入は、「現場不在」で進めると、やがて使われなくなります。
現場のキーマン(リーダーや主任、現場歴の長いオペレーター)を巻き込んで小さな提案や運用改善を繰り返し、「使いやすさ」や「自分たちごと化」を意識しましょう。
“現場にシステムを合わせる”寄り添いと、“現場がシステムを理解して歩み寄る”両輪が不可欠です。

失敗体験の共有と評価制度

その場しのぎがなぜ起きたかを、責任追及でなく「ナレッジ」として全体に共有する仕組みづくりが重要です。
ミスや失敗が評価減やペナルティになる文化だと、“隠す”選択をしがちです。
それより、「よくぞ気付いた」「事実をオープンにできた」ことを評価して、ポジティブ・フィードバックにつなげる必要があります。

5. バイヤー・サプライヤーの視点で見る“その場しのぎ”

バイヤーから見た応急対応のリスク

調達部門にいると、サプライヤーや現場の一部が応急対応を連発している事実を見逃しがちです。
「納期だけ守ってもらえればよい」という短絡的な姿勢は、ロット不良や重大クレームの隠れたリスクを招きます。
バイヤー自身が現場やサプライヤーを訪問し、現場で何が起きているか一次情報を得ることが重要です。
サプライヤーにも“将来の爆弾”を抱えていないか、ともにチェックする姿勢が不可欠です。

サプライヤーがバイヤーの本音を理解するには

サプライヤー側も、「納期厳守」と「コスト最適化」だけがバイヤーの関心事ではないことを理解する必要があります。
特に高品質・安定供給が求められる自動車業界などでは、応急対応や現場のリスクが納入先全体に波及します。
赤信号になる前から事実を共有し、今後の対応や改善策を一緒に話し合う「オープンな関係性」が、長期的な取引安定につながります。

6. その場しのぎ体質から、攻めの現場改革へ

“その場しのぎ”は決して楽をしているわけではありません。
むしろ、現場のみなさんが日々奮闘し、なんとか会社を守っている証でもあります。
ですがそれが“未来への爆弾”として積み重なったまま放置されるのは、誰も望んでいないはずです。
失敗を恐れず、現場での小さな気付きや工夫を仕組みに変え、情報共有とナレッジ化を積み上げていく――それこそが、これからの製造業に求められる現場力です。

昭和から続く“現場頼み”だけでは、グローバル競争に勝てません。
「なぜ今これが起きているのか」「本当にこの対応でいいのか」と問う習慣を、現場で、管理で、調達で、みんなが持つべき時代です。
その延長が、より安全に・より安定して、明日のものづくりを支えていく。
失敗も、応急対応も、知恵と知見に変える。
これが「強い現場」が“爆弾”を作らない、新しい一歩だと考えています。

ノウハウ集ダウンロード

製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが重要だと分かっていても、 「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」 そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、 どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを 一緒に整理するご相談を承っています。 まずは現状のお悩みをお聞かせください。

You cannot copy content of this page