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冷凍食品の霜付きを防ぐ急速凍結と包装環境の湿度管理

目次
はじめに:冷凍食品での「霜付き」問題とは
冷凍食品業界は、ここ数年で目覚ましい進化を遂げています。
共働き世帯や単身者が増えたことで、冷凍食品の需要は拡大を続け、品揃えも多様化しています。
しかし、この業界に長年根深く残っている課題が「霜付き」です。
消費者が冷凍食品を手にしたとき、袋の中や商品表面に霜が目立つと品質への不安や、美味しさの劣化、返品やクレームにつながる恐れがあります。
この霜付きの発生を本質的に防ぐには、急速凍結技術と包装時の環境湿度管理、この2つの要素をいかに現場で徹底できるかがカギを握ります。
この記事では、昭和期から続く現場の「常識」から、最新技術導入まで、現場経験者ならではの視点で深掘りしていきます。
霜付きのメカニズムを知る:なぜ生じるのか
冷凍食品に霜が付く主な理由は、食品内部や表面に存在する水分が、凍結や解凍の過程で昇華・再結晶化することで発生します。
ここで重要なのは、「急速凍結」と「包装環境の湿度管理」が、いかにこのメカニズムに影響を及ぼすかという点です。
冷凍時の水分挙動と氷結晶の形成
食品内に含まれる水分は、凍結速度が遅いと大きな氷結晶になりやすくなります。
この大きな氷は食品の細胞壁を破壊し、解凍後のドリップや食感低下を招くだけでなく、包装内部に昇華しやすい=後に霜となりやすい水分も発生させます。
また、包装工程や保管時の相対湿度が高ければ、外部から新たな水分が混入・凝縮します。
この水分が温度変動などをきっかけに一気に昇華→再結晶化すれば霜付きが顕在化します。
「作業現場」目線でよくある落とし穴
昭和から続く現場では、「とりあえず冷凍庫で凍らせて出荷すれば大丈夫」という意識が根強く残っています。
しかし、これだけでは不十分です。
包装時に湿った空気が混入していたり、冷凍前に十分な脱気・脱水がされていなければ、いくら冷却温度が低くても霜は発生します。
こうした現場での「慣習」こそ、見直しが必要なのです。
急速凍結の重要性とそのポイント
急速凍結とは何か?
急速凍結とは、食品の中心温度を急激に-1℃から-5℃付近を通過させ、氷結晶の形成速度を高めて大きな結晶が生成されるのを防ぐ技術を指します。
具体的には、ブラストチラーや液体窒素・エタノール系冷媒を用いた急速冷却装置が挙げられます。
従来の静置式フリーザーよりも数倍~数十倍のスピードで凍結工程が進むため、氷結晶が微細化。
これがドリップ流出や霜付きリスクを大幅に抑えます。
現場導入のハードルとその突破手法
最新の急速凍結装置の導入には、初期投資の高さや既設ラインとの整合性が課題となります。
また、現場作業員の「慣れ」や「手順変更への抵抗感」もバリアになりやすいです。
現場での導入を円滑に進めるには、例えば次のようなアプローチが効果的です。
・既存設備の一部を急速凍結対応型に更新し、段階的に導入する
・省スペース型や多品種対応型の設備を選定し、「投資効果」を現場に可視化して伝える
・サプライヤーやメーカーの協力を得て、試作品・テスト生産で現場を徐々に慣らす
急速凍結の現場定着は、管理職や現場リーダーが主導権を持ち「なぜ必要か」「何がどう変わるのか」を、現場の声を吸い上げながら浸透させることが成功のカギとなります。
事例:急速凍結で霜付きクレームが激減
ある大手冷凍食品メーカーでは、手作業でのプレ冷却→静置式フリーザー凍結という昭和型プロセスから、急速凍結装置+プレチラーの2段階凍結へ切り替えました。
結果、霜付きによる返品・クレーム件数が前年比80%減少。
現場の作業負荷も大幅に低減され、品質・効率双方でメリットが得られました。
包装環境の湿度管理が果たす役割
湿度コントロールの基本原理
冷凍食品の包装工程では、外気との接触や作業者の体温・呼気などが、水分付着を引き起こします。
現場の相対湿度が高いほど、包装内部や商品表面に微細な水滴が付着しやすくなり、これが霜付きの直接的な原因となります。
湿度管理のポイントは「低温・低湿」を維持することです。
-ドライルーム
-除湿機・空調システムの徹底運用
-作業工程の短縮とパッケージ直前までの冷却管理
これらが組み合わさることで、霜の根本原因を断つことができます。
現場でできる“湿度管理のツボ”
・荷受け・下処理室から包装エリアまでの動線で、温湿度差が発生しないよう仕切りや気流を工夫する
・作業者の着衣や手袋も、なるべく防湿・防結露素材を選定する
・小LOT生産での長時間待機は避け、「包装直前冷却→即包装」を徹底する
・包装機械内も定期的に霜・水滴チェック&除去作業をルーチン化する
こうした「ちょっとした一手間」こそが、結果的にクレームや製品不良率の低下に直結します。
サプライヤー・バイヤー目線での最適化アプローチ
バイヤーから見た「冷凍食品の霜」の評価ポイント
バイヤーは取引先の工場やサプライヤーを評価するとき、書類や数値以上に実際の「現場力」を見ています。
冷凍食品の「霜付き」が目立つと、「湿度管理が甘いのでは」「急速凍結されていないのでは」という印象を持たれ、信頼失墜や値下げ交渉の理由にされることもしばしばです。
つまり、サプライヤー側が霜対策をいかに徹底しているかは、商談時の隠れたアピールポイントにもなります。
サプライヤーとして押さえるべき対策と提案力
・急速凍結やドライパッキング導入の実績・効果を具体的データで用意する
・包装後の物流時温度・湿度変動も視野に入れ、適正な梱包資材・流通温度管理体制を一元的に説明する
・バイヤー見学時は「現場の衛生意識」「担当者の教育度」の高さも見せる
単なる「コストダウン提供」から「品質と価値の提供」へ、自社の立ち位置を引き上げることが、バイヤーからの評価を大きく左右するのです。
昭和からの脱却:デジタル活用と自動化の現在地
IoT・センサーの活用事例
最新の工場では、IoTセンサーを用いた温度・湿度・ライン稼働状況のリアルタイム監視が普及しています。
PCやスマホ上で異常を即座に検出・通知し、現場介入前に自動で補正動作が行われるなど、自動化レベルは飛躍的に向上しました。
また、AIによる不良品判別や、不具合発生時の原因トレースも可能となり、従来の“勘と経験”頼みの運用から脱却しつつあります。
アナログ現場の踏み出す“第一歩”
とはいえ、現場の全工程を一気にDX・自動化するのは現実的ではありません。
まずは「温度・湿度の記録自動化」や「急速凍結設備の部分導入」など、小さな一歩から着手し、現場の納得感・変化の『見える化』を徹底しましょう。
昭和的な「紙記録×点検」から卒業することが、未来の品質向上とクレーム低減の土台となります。
まとめ:現場発の冷凍食品品質革命へ
冷凍食品の霜付き防止は、決してひとつの“魔法の弾”では解決できません。
急速凍結技術と包装工程の湿度管理、さらに現場の根強いアナログ習慣の見直し。
この三位一体で“現場力”を引き上げることが、求められています。
現場で働く皆さん、バイヤーやサプライヤーの皆さん、それぞれの立場で「自社の冷凍品質」をもう一度見直してみてください。
一つひとつの改革で、生産現場の未来は必ず切り拓かれます。
冷凍食品の可能性は、これからもっと大きく広がります。
そのために、今日からできる「急速凍結」×「湿度マネジメント」×「アナログ脱却」への一歩を踏み出しましょう。
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