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電波法・技適の流れ:設計から認証・量産ラベルまで

目次
はじめに:電波法・技適とは何か
無線機器やIoTデバイスが日常に溢れる現代において、「電波法」や「技適マーク」は製造者、調達購買担当者には無視できないキーワードです。
電波法とは、日本国内で無線設備を利用する際のルールを定めた法律です。
そして「技適」(技術基準適合証明)とは、無線設備がこの電波法や関連する技術基準に合致していることを証明する制度です。
これは日本市場で無線機能を搭載した製品を流通させるなら必須であり、設計初期から量産まで一貫した管理が求められます。
この記事では、設計段階から認証、量産ラベルまでの各プロセスの具体的な流れや現場で気をつけたいポイントを現場目線で掘り下げて解説します。
バイヤーやサプライヤー、現場の技術者が知っておくべき、「昭和の習慣」から脱却できていない業界の実情も織り交ぜて、実践的ノウハウをお届けします。
設計初期:電波法対応を考慮した開発の重要性
「とりあえず設計」では済まされない
製品開発でよくあるのが「とりあえず動けばOK」という昭和的な発想です。
しかし無線機器においては、この姿勢は命取りになります。
電波法・技適の要件は、基板設計やコンポーネント選定に直結します。
技術基準に合致しないチップやアンテナを選ぶと、最悪の場合、試験段階で不適合となり、設計の大幅な手戻りが発生します。
このため、以下の視点が必須となります。
– どの周波数帯域を利用するか
– 出力や通信規格は法的要件に適合しているか
– 必要な認証の種別(特定無線設備、微弱無線、など)
初期段階でこれらを押さえ、関係部門(設計、品質、調達)で合意して開発をスタートすることが、後工程のリスク低減につながります。
設計部門と調達部門の連携がカギ
製造現場では、設計部門と調達部門の連携が甘いと、「技適対応していない部品を大量購入してしまった」という事例が後を絶ちません。
部品調達前に、「技適認証取得済」「指定型式番号付与済」などのスペックを調査・確認し、調達仕様書に明記することが重要です。
さらに海外サプライヤーの場合、日本独自の技適要件に対する意識が薄いことも多いので、現場の担当者が積極的にコミュニケーションをとることが求められます。
認証プロセス:成功と失敗を分ける分岐点
電波法適合の試験フロー
設計仕様が固まったら、次は技適認証のための試験です。
流れとしては、
1. 書類審査:設計図面、部品リスト、回路図の提出
2. 電波暗室などでの実機試験:規定出力、帯域、不要輻射等の実測
3. 証明書類発行およびマーク取得
と進みます。
この試験も外部試験機関(TELECなど)への依頼が一般的です。
しかし、端折れない失敗に多いのが「書類不備」や「仕様書と実機の不整合」です。
書類作成時から、現物設計の小さな変更も逐一反映させる管理体制が不可欠です。
部材変更時のリスク管理
開発や量産立ち上げ時によくあるのが「部材の調達難による代替品採用」です。
このとき、アンテナ、無線モジュールなど、電波発信に関わるコンポーネントの安易な変更は技適の再取得が必要になる場合があります。
「前回も同じ型番だったし大丈夫だろう」という油断は禁物です。
各変更時に設計部門・調達部門・品質管理部門が確実に連携し、適合性判定フローを組み込むことを強く推奨します。
量産とラベル管理:現場運用のツボ
技適ラベルの貼付・表示義務
無事に技適を取得した後、量産ラインでは「技適マーク」(指定型式番号、認証番号など)の表示(シール/刻印等)が義務付けられます。
この表示不備は、販売後の抜き打ち検査や小売店でのトラブルのもとになります。
– 量産立上げ時点で「表示仕様書」を明確化
– 部品やユニットの組立工程中で「ラベル貼付チェック項目」を作成
– ロットごとのトレーサビリティ体系(どのロットで技適取得?部材変更は?)も情報管理
地味ですが、この徹底が「市場流出後の回収リスク」を大幅に減らします。
現場でよくあるミスとその防止策
昭和から連綿と引用されがちな「暗黙知」や「職人技」だけに依存した管理体制では、イレギュラー時に対応できません。
よくあるトラブル例としては、
– 部品切替時に技適再取得の必要性判断が抜けていた
– 工場の一部ラインだけが旧仕様ラベルのまま生産していた
– ロット違い部材混入による認証範囲外製品の出荷
これを防ぐためには、現場の標準作業書(SOP)に、電波法・技適対応手順や判断基準を明記し、定期的な教育訓練&監査を欠かさない体制が不可欠です。
バイヤー/サプライヤー目線で見る電波法運用の勘所
バイヤーに求められる「技術×法規」感覚
バイヤー(調達購買担当)は、単にコストや納期だけでなく、製品法規制対応まで視野に入れた「目利き力」が問われます。
特に海外サプライヤーから無線機器をOEM/ODMする場合は、
– 日本の電波法・技適取得経験があるか
– 必要証明書のサンプル提出実績
– ラベル表示や梱包仕様の管理体制
など、現地工場の「適法オペレーション」まで深掘りチェックすること。
契約書の中で「技適取得義務」や「不適合時の責任分担」も明記しておくのが上級者の流儀です。
サプライヤーが知っておきたい「バイヤーの視点」
サプライヤーとしては「価格・納期・品質」だけではなく、
– 技適要件への即応力
– 書類やラベル管理体制
– トレーサビリティ情報の提供可否
これらが製造業バイヤーから信頼されるかどうかの最重要ポイントです。
ともすれば「日本はうるさい」と言われがちですが、このような法規制対応力こそが、長期取引につながる「信用」となります。
昭和流からDX時代へ:業界動向と今後の展望
紙書類・職人技依存からの脱出
かつては現場のベテラン職人の暗黙知と、紙ベースの書類管理が中心でした。
しかし今や製造業現場もDXが叫ばれ、自動化・IT化が進展しています。
技適書類の電子化やERP連携、部材管理のトレーサビリティ化、AI画像判定によるラベル貼付チェックなど、未来志向の現場改善にも目を向けたいところです。
グローバル規制対応の潮流
IoT化や海外市場展開が進む現代では、CEマーク、FCCなど、電波法・技適以外の認証もセットで考える必要が出てきます。
一つの製品を多国対応で設計・承認する“Design for Compliance”の導入が、大手メーカーだけでなく中小製造業にも不可避となっています。
まとめ:電波法・技適対応は現場全体の総合力
製品の安全性・品質・法令遵守、このどれが欠けても現場・顧客・社会を裏切る結果になります。
特に電波法・技適は、設計・調達・品質・生産・物流の各部門が一体となって初めて正しく運用できるプロセスです。
昭和流の「誰か一人に任せっぱなし」から脱し、現場の多層的な視点と、全体最適を志向する仕組み作りが欠かせません。
この記事が、現場で奮闘する皆さんの実践のお役に立てれば幸いです。
今後も、製造業の進化と共に、より質の高い現場運営が日本のものづくりを支えていくことを願っています。
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