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研究開発マネジメントと評価採否判断およびその事例

目次
研究開発マネジメントの基礎と必要性
研究開発(R&D)は、製造業の将来を左右する極めて重要な活動です。
新しい製品や技術の開発は、企業競争力の源泉であり、持続的な成長を支えるエンジンといえます。
しかし、ものづくり大国と称された日本の製造業現場では、未だに「昭和の勝ちパターン」に固執し、研究開発のマネジメント手法や評価管理がアナログ的で属人的なままというケースも多々見受けられます。
現場で日々汗を流す方々や、現場をまとめる管理職の方にとって、「新しいことをやる」ためのR&Dを正しく評価し、判断する方法は悩ましいテーマです。
この記事では、研究開発マネジメントの実践ポイントと、その評価・採否判断のあり方を、最新の業界動向を踏まえつつ、現場目線でお伝えします。
研究開発プロジェクトのマネジメントとは?
研究開発特有の不確実性への向き合い方
一般の生産管理や品質管理と違い、研究開発はゴールや道筋が明確になっていない場合がほとんどです。
成功するか失敗するかはもちろん、予定した期間やコストで進むのかも不透明です。
管理する側は、こうした「見えないもの」にリソースを投下する覚悟と、変化への柔軟な対応力が求められます。
現場でよくあるミスと失敗パターン
「以前はこうだったから」「前例踏襲で大丈夫」という固定観念により、せっかくのイノベーションの芽を潰してしまうことがあります。
逆に、「声が大きい人」や「推進派」の意見に流され、冷静なリスク評価やコスト意識を欠落させることも少なくありません。
マネジメントの進化が求められる理由
海外勢とのグローバル競争が激化しているなか、変革へ舵を切れるかどうかが企業の命運を分けます。
昭和型の職人気質や「どんぶり勘定」から一歩前に踏み出し、科学的・合理的に評価する土壌づくりが急務です。
評価と採否判断の実践ポイント
評価基準の設定は「ゴールからの逆算」で
評価を曖昧なままスタートしてしまうと、いつまで経っても「撤退できない泥沼プロジェクト」に陥りやすくなります。
そこでおすすめしたいのが、ゴールから逆算して明確なKPI(達成基準)を設定する方法です。
例えば、
– 「年度末までに量産に向けた試作を完了」
– 「歩留まり90%以上を1か月以内に実現」
– 「外部評価や市場調査でA以上を獲得」
など、達成度合いを客観的数値や判定基準と紐づけることで、採否判断をブレずに実施できます。
定期的な評価会議で「おかしい」と思ったら立ち止まる勇気
PDCAサイクルに基づき、定点観測で進捗と達成度合いのレビューを必ず行います。
最初は「イケる」と思えたプロジェクトでも、市場環境や顧客ニーズが変化すれば、そのまま突き進むのは危険です。
第三者も交えた定期レビューにより、現場の熱意に水を差すのではなく、現実的な軌道修正や撤退判断を下すことが大切です。
人的評価と数値評価のバランスを取る
日本の製造業現場では「がんばった人」に甘くなりがちですが、最終的には事業性やコスト、品質などの成果物で評価しなければなりません。
努力や情熱だけではなく、数値・データで根拠がある結果を重視しましょう。
業界トレンド~デジタル化と意思決定のスピード
欧米や中国に学ぶ合理的意思決定
近年、グローバル化が進む中で、評価採否のスピードも競争力の源泉です。
特に欧米や中国系メーカーでは、R&D評価のデジタル化、AIによるシミュレーション評価、さらにはオープンイノベーションの活用が進んでいます。
日本で遅れがちなデジタル化の課題
一方で日本では、現場の「勘と経験」に頼る場面がいまだ多く、意思決定までのスピードが緩慢です。
エクセル管理や紙の承認フローから脱却し、管理データの可視化・自動集計・即時判断(ダッシュボード活用など)への移行は、もはや製造業の必須課題といえます。
研究開発評価の具体的事例紹介
【事例1】自動車部品メーカーにおける新技術導入プロジェクト
某大手自動車部品メーカーでは、新電動アクチュエータの開発にあたり、従来の「職人の経験値+勘」に依存した進め方から、各開発ステージごとに「Go/Stop」判定基準を明文化。
例えば、「ラボ試験で1000時間稼働トラブル無し」「量産トライ時の歩留まり90%」など、数値主導型の基準を設け定期的な評価で進捗管理を強化しました。
また、「基準未達時には次フェーズ進出不可」というゲート制を徹底し、「いつのまにか深みにはまっていた」状態を回避。
最終的に、現場の作業効率や品質へのインパクトも高く、担当者の士気向上にもつながった事例です。
【事例2】部門横断型のプロジェクト評価会議
従来、開発部門単独で推進されていたプロジェクトを、購買・営業・品質管理・生産技術といった他部門の意見を積極的に取り入れる形へシフトしたのが某エレクトロニクスメーカーの事例です。
調達部門が「その材料は本当に量産調達可能か?」を現実的視点で指摘したことで、早期に不適切な構成部材の仕様変更に踏み切ることができ、結果として工場へのスムーズな量産移行に成功しました。
このように現場部門の「異なる視点」を生かした評価採否の体制は、昭和型の「開発部主導=偉い」という価値観から抜け出すうえで大きな効果を発揮します。
【事例3】新規事業の採否判断における「撤退」の決断
ある中堅機械メーカーでは、画期的な新規事業として3年に及ぶR&Dを進めていましたが、顧客の要望や法規制の変更により事業化難しいことが判明。
「せっかくここまでやったのだから…」という心理もありましたが、トップによる明快な撤退判断を下し、損失最小化に成功。
R&Dの成果やノウハウは次の開発テーマへ再活用する形でフィードバックを行いました。
これにより、プロジェクト責任者やメンバーの失敗に対するメンタル的な負担を減らし、「失敗を恐れず挑戦できる」風土が醸成されました。
サプライヤー/バイヤー視点で意識すべきポイント
バイヤーは「リスクの先取り」で評価を吟味
バイヤーとして研究開発への投資判断をするとき、単に「革新的か/既存延長か」だけでなく、調達リスク(部品調達の可否や量産スケールの持続性)、市場状況、価格競争力の有無を徹底的に分析します。
案件の初期段階から購買部門も関与し、「サプライチェーンに組み込めるか?」という視点を持つことで、絵に描いた餅を避けられます。
サプライヤーは「なぜそれが必要か?」を説明できる力を持つ
一方、サプライヤー側は、「他社との差別化・なぜ自社の技術や提案が必要とされるのか」を具体的数字や根拠とともに説明し、バイヤーの社内稟議を通りやすくする努力が重要です。
研究開発型サプライヤーは、「夢」や「技術力」だけでなく、市場における実現可能性・コスト・バリューチェーン全体への波及効果を併せて提案することでバイヤーの信頼を得やすくなります。
まとめ:これからのR&Dマネジメントを考える
製造業が直面する市場変化や顧客要求は、年々スピードアップし多様化しています。
研究開発のマネジメントや評価採否の正しいあり方は、もはや選択肢ではなく、業界を問わず生き残るために必須のスキルです。
ゴール逆算型の評価手法、部門横断的な議論、数値による客観的判断、デジタル化の波を乗りこなす意思決定力。
そして、「撤退も英断である」と捉えるポジティブな風土醸成。
これらが実践できれば、たとえ昭和から続くアナログな現場でも、新たな時代の勝者となれるはずです。
本記事が、現場力を武器に持つ製造業従事者、バイヤー、サプライヤーのみなさんの実務や組織変革のヒントとなれば幸いです。
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