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複合材を採用したものの想定外の破壊モードに悩まされる実話

複合材を採用したものの想定外の破壊モードに悩まされる実話
はじめに:複合材導入の現場は「夢」と「現実」の狭間
近年、航空機・自動車・産業機器などさまざまな分野で複合材(CFRP、GFPRなど)の採用が進んでいます。
強度・軽量化・耐食性などメリットは現場でも大きな期待を集めていますが、一方で「思いもよらぬ破壊モード」に頭を抱える現場管理者や技術者が急増しています。
私自身も工場長として20年以上現場に身を置き、「これは画期的な材料だ!」と導入を急いだものの、想定外のトラブルに手をこまねいたことが何度もありました。
この記事では、実際に複合材導入で起こりやすい失敗や、その本質、さらには最前線で取り組む現場の施策や業界動向までを現場目線でお伝えします。
複合材が魅力的な理由―現場の期待と業界動向
従来の金属材料に比べ、複合材には圧倒的な軽量性と高強度、耐食性、設計自由度などさまざまな利点があります。
リーマンショック以降のコスト削減・エネルギー効率化の波、そしてグローバル市場の激化により、2010年代からは日本の製造業現場でも積極的な導入が進み始めました。
現場では次のような声が聞かれます。
・製品軽量化による省エネ、CO2削減効果への期待
・長尺ものや複雑形状での一体成形による部品点数削減
・塗装や防錆処理が不要になり、工程短縮やコスト安定化
こうした利点が経営陣から評価され、アナログ色濃い現場でも「複合材こそ未来だ!鉄にこだわるな!」と変革機運が醸成されてきました。
現場で直面する「想定外の破壊モード」
ところが、数回の試作―量産立ち上げフェーズで、現場管理者の「期待」は「困惑」へと変化します。
なぜなら複合材は、金属系に比べてまったく異なる「破壊モード」を持っているからです。
代表的なトラブルには次のようなものがあります。
- 予期せぬ方向で割れる(層間剥離)
- 応力集中でクラック発生→徐々に進展し抜け落ちる(遅延破壊)
- 締結部分から粉砕状に崩壊(バルキング、剥がれ)
- 落下・衝撃による内部損傷(外見では判別できない)
私の現場でも、試験片ではうまくいっていた製品が、実際の稼働現場で想定外に壊れるケースが頻発しました。
例えば、製品の端部のボルト取り付け箇所で何気なく締付トルクを上げただけで層間剥離。
あるいは明らかな過荷重を受けた後、しばらくしてから徐々にクラックが成長し、数ヶ月後に使用中の機械からバタバタと複合材部品が脱落。
従来の「金属疲労」の粉砕や塑性変形とは異なり、一見健全に見えるまま進む損傷――。
検査で見抜くことも難しく、顧客やユーザーの現場では「何が原因なのか?」とパニックとなることも珍しくありません。
「金属の常識」が裏目に出る―アナログ現場が陥る落とし穴
事故・トラブルが多発する現場の共通点は、「従来素材(金属)の延長線上で複合材を扱っている」点です。
アナログ業界では、古くから受け継がれてきた経験則が重視されます。
しかし複合材は、その「暗黙の約束事」を根本から覆す材料です。
①締結部が弱く、点荷重に極端に弱い
金属材料ではある程度の高トルク締め、再締付けでもまず破壊に至ることはありません。
しかし複合材では、点荷重・応力集中部から「剥離・クラック」がスタート。
些細な打痕や締付ミスが、数百時間後に重大な破壊につながります。
②破壊進展が見えにくい
複合材は、微細な損傷が外観では判別できないことが多いです。
振動や衝撃で内部クラック(デラミネーション)が起きても、使用者には分かりません。
周期点検や分解整備で初めて「ここまでクラックが進行していたのか」と冷や汗をかく場合も多いです。
③「限界をみる」という従来の習慣がリスクにつながる
金属の場合、限界設計でもある程度の余裕があり、先輩方の経験則による「だいたい大丈夫」が通用してきました。
一方、複合材は「規格を少し超えた時点」で急激に損傷が進みます。
ヒューマンエラーや運転ミスが即座に深刻な破壊へ直結します。
現場での実際の試行錯誤:アナログからの脱却
私の経験した現場でも、複合材導入は決して順風満帆ではありませんでした。
最初の数年間は、従来技術の流用と応急処置の連続。部品交換頻度も想定以上で、品質クレームも後を絶ちません。
そこから脱却するため、「現場目線での深化」と「技術交流によるリスク共有」を徹底しました。
1)現場スタッフへの材料教育の徹底
複合材の特徴・弱点(例:点荷重NG、衝撃厳禁、締付規格の厳守)を現場スタッフに徹底教育。
自分の言葉と図解で説き、疑似破壊や損傷品を実物展示して安全感覚を叩き込みました。
2)従来とは別次元の受入検査・非破壊検査技術の活用
目視で異常が分からないことを前提とし、超音波や赤外線などの非破壊検査のノウハウを現場が主導で共有。
コストはかかりますが、現場の「納得感」と安全意識が大幅に向上しました。
3)設計段階から工程部門が参画
設計部門には「図面優先・理論優先」ではなく、現場組立やユーザー使用実態まで踏み込んだ検討会議を開催。
「この形状では、現場が壊しやすい」「この締結では不安が残る」といったフィードバックをダイレクトに設計へ伝達。
設計だけでなく生産管理、品質管理、購買、サプライヤーまで巻き込む体制をつくりました。
サプライヤーとして、バイヤー(購買)の意図を知る重要性
今後、複合材を納入するサプライヤーに求められるのは「材料特性を深く理解し、現場での想定外事故を未然に防ぐ」姿勢です。
バイヤー(購買)は単純なコストや納期の安定化だけを見る時代は終わりました。
- 材料起因の品質トラブル・リスクをプロアクティブに開示できるか
- ユーザーの使用実態まで把握し、提案型サプライヤーになれるか
- 万が一の破壊発生時も根本原因を共に究明し、再発防止策を盛り込めるか
バイヤーの立場に立ってみれば、「貴社が納入する複合材、現場では本当に安全・安心なのか?」という問いへの回答こそが、今後のビジネスの価値を左右します。
見直したい3つのアプローチ―昭和的アナログ業界を変革する視点
現場主導での複合材活用を進めるうえで、今こそ見直したい3つのアプローチがあります。
(1)設計手順そのものの見直し
今までの「金属前提」で設計を進めるのではなく、「複合材特性ありき」のCAE解析やベンチマークテストを実施。
設計者・現場・品質管理者が三位一体となる組織内タスクフォースの編成がカギを握ります。
(2)現場オペレーターの“肌感覚”とデータ活用の融合
まさにDX推進の時代、IoTセンシング等による現場データ収集の仕組みを作り、異常検知・予知保全へ。
一方で、「熟練者による異音や振動の肌感覚」も組み合わせることで、アナログ現場の知恵もDXの武器へと転換できます。
(3)サプライチェーン全体での品質文化醸成
調達・設計・生産管理・現場・サプライヤー、全員が「同じ言葉とリスク感度」で情報共有し続けること。
万が一の異常発生時、「隠す」「なかったことにする」ような昭和的体質からの脱却が急務です。
まとめ:変わる現場、変える現場―製造業の“現実主義”で複合材を活かす
複合材の導入・定着とは、「未来志向の材料ポテンシャル」と「現場主義による失敗と改善サイクル」のせめぎ合いだと言えます。
期待と不安のなか、想定外の破壊モードを乗り越えるためには、昭和の常識から一歩踏み出し、材料・設計・現場・バイヤー・サプライヤーが一体となる「地に足のついた対応力」が不可欠です。
この記事が、現場で同じ悩み・失敗を抱えるすべての方にとって、問題解決へのヒント、新たな創意工夫の糸口となれば幸いです。今後も現場目線での実践的な知恵を発信し、製造業全体の底上げへ貢献していきます。
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