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OEMトレーナーで避けたい“納期短縮による品質低下”の実例と対策

目次
はじめに:製造業で増大するOEMトレーナーへの需要
昨今の製造業界では、商品の多様化や市場のグローバル化に伴い、OEM(Original Equipment Manufacturer)による生産体制が一般化しています。
とくにトレーナー(スウェットシャツ)といったアパレル製品では、短納期・小ロット・高品質が求められる一方、国内外サプライヤーの多重連携や膨大なオーダー管理が必要となります。
OEMトレーナーのビジネスにおいて、バイヤーや工場担当者が常に頭を悩ませるのが「短納期要求」と「品質維持」のせめぎ合いです。
納期短縮の背景には、EC市場の台頭やファストファッションの拡大もあり、業界全体で「早く・安く・大量に」の圧力が強まっています。
しかしその一方で、「納期を守るために品質低下を招く」という“あるある”現象も後を絶ちません。
本記事では、OEMトレーナーの生産現場でよく起こる納期短縮と品質低下の実例を挙げ、課題を整理しながら、具体的な対策方法を現場視点で解説します。
OEMトレーナーの納期短縮による品質低下の典型的な実例
1. 不十分な素材検品による繊維不良の発生
OEM生産における工程短縮でまず削られがちな工程が「素材検品」です。
実際に私が経験したケースでは、発注元から「工場到着から3日で縫製開始」を求められ、通常実施していた生地ロットごとの抜き取り検査を省略しました。
納期通りに納品はできましたが、後日エンドユーザーから「トレーナーの一部に目立つ織りキズがあって再販できない」とのクレームが。
原因を調査したところ、輸送中に生地表面にピリング(毛玉)が多数発生しているにもかかわらず、事前検査を省いたため発見できなかったことが判明しました。
現場では「検品工程はコスト増・日程圧縮の敵」と見なされがちですが、工程短縮=検査省略のリスクは非常に大きいと言えます。
2. 縫製工程での“つなぎ”や“段取り替え”の省略による縫い目不良
OEM先のアパレル縫製工場では、多品種少量・短納期が相まって、各現場で工程の省略が頻発する傾向にあります。
特に熟練工の中には、納期ギリギリの場面で「段取り替え」の必要な製品を、あえて変更せず既存段取りのまま作業を続行する例を目にしてきました。
その結果、袖の縫い目に糸ほつれや歪みが生じ、再検査のたびに手直しが発生。
結果的には納品遅延にまで発展し、クライアントとの信頼悪化を招いた苦い経験があります。
俗に「段取り八分、仕事二分」といわれるほど段取りは重要です。
しかし短納期化の流れに押される現場では、「一見ムダに見える段取り替え」を省略することで逆に品質リスクを高めてしまうのです。
3. 加工・検品の外部委託先での工程管理不足が引き起こす異物混入
納期短縮の指令を受けると、自社だけで工程をこなすことが困難なため、外部協力工場(サブコン)に一部工程を委託するケースも増えています。
私の職場では、繁忙期に急遽プリント加工を協力業者へ委託しました。
ところが、先方では「前工程でのゴミ除去(ブロー作業)」を省き、短縮命令どおりスピード優先でプリントへ。
納品されたトレーナー1000着のうち、約5%にプリント面に異物(糸くずやホコリ)が混入しており、クレーム・返品対応に追われる羽目になりました。
外部委託先まで含めた全プロセスの品質管理が、納期優先の号令の下で緩みがちになるという典型的な失敗例です。
4. 測定記録の省略や検査サンプル点数減による基準逸脱
OEMトレーナーでは、サイズや寸法の規格管理が重要です。
しかし、急激な納期短縮時に「サイズ測定工程のチェックシート記入を省く」「サンプル点数を規定の5着から2着に削減する」など、帳面作業や点検工数を削る方針が出ることもあります。
これでは異常値が見逃され、クレームや返品のリスクが一気に高まってしまいます。
そもそも品質の裏付けとなる記録自体がないと、トラブルの原因追及や再発防止もできないのです。
なぜ“納期短縮イコール品質悪化”の罠に陥るのか
背景には、さまざまな構造的要因が潜んでいます。
1. 上流からの「スピード最優先文化」
大手ブランドや量販店からの発注は、「売り場のスピード感」による要求がとにかく厳しい傾向にあります。
経営層や調達部門からも「競合他社に負けるな」「早く納めろ」という号令が日常的に現場へ降りてきます。
本来、品質と納期はどちらも等しく重要であり、製造業バリューチェーンの両輪です。
ところが「短納期化でコストを抑えろ」というメッセージだけが強調され、品質意識が後景に隠れてしまいがちです。
2. アナログ業界の“昭和的価値観”が根強い
現場では「納期遅延は大罪だが、不良品発生は“仕方ない”」という歳月を経た考え方が色濃く残っています。
また、品質保証に関わるノウハウが“作業者の経験則”や“ベテランの肌感覚”に依存しがちで、再現性ある管理手法が普及しづらい側面も。
デジタル化や工程の自動化が進みにくいアパレルOEM業界ならではの“属人性”が、納期短縮のしわ寄せを品質にぶつけやすくしているのです。
3. サプライチェーンの分業化による責任分散
OEM生産では、生地供給・縫製・加工・検品などを複数の企業で分担するため、「どの工程で何が起きたのか」「誰が責任者か」が曖昧になりがちです。
納期短縮のプレッシャーがかかるほど「とにかく自工程内だけは間に合わせる」という意識が強まり、“部分最適”の陥穽にはまります。
結果、全体最適=最終品質確保への関心が薄くなり、生産全体でリスクが増大します。
現場目線で実践できる納期短縮でも品質低下を防ぐ対策とは
短納期と高品質を両立させるため、OEMトレーナー現場がとるべき具体的な行動を紹介します。
1. 納期短縮時には「最優先で省いてはいけない工程」を意思決定する
現実的には、納期短縮が避けられない場合も多いです。
そんな時こそ、すべての工程を均等に圧縮するのではなく、品質に直結する「外せないプロセス」は何かを現場責任者が明確にします。
たとえば「検品工程」「異物・ピリング除去」「一部段取り替え」「最終検査記録」などは簡略化しないと決定し、絶対に守るルールを作ります。
ここで重要なのは、意思決定の根拠を現場主導で示し、上流のバイヤーや調達担当とも「納期短縮イコール検査省略ではない」と合意形成することです。
2. 上流(バイヤー)と下流(サプライヤー)が“納期短縮の限界”をデータで共有
従来の昭和的な現場では「何日までならいけるか」の根拠を経験則や“勘”に頼りがちです。
しかし、今後は「各工程に何日必要か」「何を省くとどんな不良が発生したか」など、データ蓄積と可視化が必須になってきます。
現場の製造履歴や不良発生率、工程別所要時間などをデータとして保存し、バイヤーとの打ち合わせで「この納期以下では品質リスクが跳ね上がります」と交渉材料に使うことが大切です。
これが「サプライヤーがバイヤーの思考を理解する」本当の活用法となります。
3. 工程自動化やデジタルツールの積極導入
アナログな現場だからこそ、簡易なIoT機器や工程管理クラウドの活用は効果的です。
たとえば、バーコード管理で生地ロットごとの履歴追跡や、作業工程毎の進捗報告を自動化。
また、ウェアラブルカメラや簡易AIを使った検品の効率化も進んできます。
省人化・効率化した分で「絶対に外せない検査工程」に人員や時間を再配分できるというメリットがあります。
4. バイヤー・設計部門との事前すり合わせで品質要求を合理化
生産現場にしわ寄せが行きがちな背景には、バイヤー(調達)と現場のコミュニケーション不足も影響しています。
OEMトレーナーの“細かな仕様変更”や“一部のみ超厳格な検査基準”が思わぬ工数増・品質リスクを招くことがあります。
現場から設計や調達部門へ、「ここは簡素化できる」「この品質管理は合理化できる」という逆提案を積極的に行い、無理・無駄のない仕様設計・流通設計にすることが大切です。
まとめ:品質意識を持続しながら納期競争時代を生き抜くには
OEMトレーナーの生産現場では、「納期短縮」が現場の働き方や品質維持に大きく影を落としてきました。
しかし、「納期短縮=品質悪化」は、決して避けようのない運命ではありません。
現場が主導し、工程ごとに何を省いてよいか・何を死守すべきかを整理し、バイヤーや設計・調達部門と正面からデータをもとに交渉し合うこと。
そして、工程自動化やデジタル活用による省力化と、人の目・手による最終検査との両輪を効かせていくことが求められます。
「急がば回れ」の精神で、短納期プレッシャー時代にこそ現場発のアイデア・知恵が製造業全体の競争力につながるのです。
製造業で働く皆さん、OEMトレーナービジネスに関わるバイヤーの方々は、ぜひ今一度「納期と品質のバランス」を冷静に見直し、共に考え抜くことから始めてみてください。
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