投稿日:2025年12月6日

“積載率改善”が理屈通りに進まない物流の本音

はじめに:積載率改善とは何か?

積載率改善という言葉は、物流現場において頻繁に耳にします。
とくに2024年問題が叫ばれる中、多くの企業が「どれだけ効率よく荷物を運ぶか」を重要指標と捉えています。

一方で、「積載率を上げろ」と上層部が指示を出しても、現場からは「理屈通りにいかない」「思ったほど荷物が載せられない」といった声が聞こえてくるものです。
そのギャップの原因はどこにあるのでしょうか。

この記事では、長年製造業の現場を歩んできた経験から、アナログな慣習や業界特有の事情も踏まえて、積載率改善が理屈通りに進まない本音と、その打開策をラテラルシンキングによって深掘りしていきます。

積載率=効率の指標?数値化の落とし穴

積載率計算の現場的リアリティ

積載率は、単純に「トラックの荷台に対して、積んだ荷物の容積や重量の割合」といった計算式で表現されます。
ただし、多くの現場では、実際のところは“座学で解決するほど単純な話”ではありません。

例えば、同じパレットサイズでも、積む現場や担当者によって、荷姿・積み方・固定方法が微妙に異なります。
混載が絡むと「あと1パレット載りそうで載らない」といった現象もしばしば起こります。
こうした違いは積載率の数値化に乖離を生みます。

平均値と実需の乖離

本社の管理側では「月平均で80%を目指しましょう」と掲げますが、現場は波動性に直面しています。
繁忙期と閑散期、重量物と軽量物など、日々違う条件で積載率は大きく揺らぎます。
現場は「帳尻合わせのプレッシャー」を感じています。

品目・業界ごとに異なる制約

たとえば、食品・化学品・自動車部品など、業界特有の取り決めや規格があります。
軽量でかさばる物は積載重量の頭打ち、逆は荷室容積の上限、といった制約があり、どんなに理論値を追い求めても「現場の物理的制約」には勝てません。

昭和的アナログ物流の“根強い慣習”

伝票文化と現場の職人芸

日本の製造業は、今もいたるところで紙の伝票や手書き指示、口頭確認で物流が回っています。
現場ベテランの“積みの技術”も未だ健在で、「あの人がやれば2割増し載る」といった暗黙の現場力が発揮されます。

積載率改善プロジェクトが、“数字を上げろ”という上からの号令だけで進まない理由の一つは、こうした現場の暗黙知とナレッジが標準化しづらいことにあります。

サプライヤーとの「長年のルール」

物流は自社内で完結しません。
多くの製造現場は、サプライヤーと「20年前から変わらぬ納品パターン」が生きています。
毎週○曜日○時に10パレット、など“慣習”が優先され、新しい積載率シミュレーションや提案が現場で跳ね返される場合も多いです。

理屈通りに進まない本当の理由

現場の“安全・確実”第一主義

積載率最大化を目指すあまり、「荷崩れリスク」「現場作業者の負担増」「ドライバーの積み下ろししやすさ」が軽視されることがあります。

現場では多少積載率が下がっても、「無理をしないほうが短納期トラブルにならない」という実務判断があります。
荷崩れ一発で「1日の効率」が水の泡、これが現場の本音です。

複雑すぎる“荷姿パズル”

異なる得意先の荷物を一台のトラックで運ぶ「混載便」では、荷姿や納品順・パレットサイズ・温度帯・仕分け方法など、現場担当者が瞬時に何十パターンも考える必要があります。

AIや自動計算で積載率向上を狙っても、結局は「急ぎの荷物」や「壊れやすい商品」「検品都合」など、“現場アレンジ”が不可欠です。

現実世界の「不確実性」

雨天や交通規制、積み地と降ろし地での待機時間、突然のキャンセルや飛び込みオーダー・・・。
いくら積載率が理論値で90%出ていても、「実際の運用現場」ではそれが崩れやすいのが日本の物流の現状です。

それでも力強い現場改善の可能性

テクノロジー導入の“本質”

近年、自動積付けシステムや物流DXが進んできています。
ただし、ITソリューション導入“だけ”で劇的に変化することはほぼありません。
本質は「現場ナレッジを見える化し、失敗要因を地道に洗い出す」ことです。

たとえば、ハンディ端末やスマホのカメラで「どう積んだら何%載るか」を画像・動画で記録し、職人技を標準化する。
AI積載シミュレーションの提案を“実際のトラック”で何度も検証し、ギャップを抽出してルール化する。
こうした粘り強さが、アナログ文化の蓄積を失わずにDXへつなげるカギとなります。

サプライヤー&バイヤーが変えられる領域

もうひとつ大事なのは、バイヤー側(調達担当)とサプライヤー側(供給元)が「積載効率がビジネス双方に有利である」ことを互いに理解しあうことです。

たとえば、バイヤーが「毎回の発注ロット・納品指定を柔軟に設計」することで、サプライヤーが“詰めやすい”ようにコーディネートする。
逆に、サプライヤーがパレット化・荷姿規格の工夫・梱包方法の見直しで「より積載しやすい形」へ協力する。
これらは両者の歩み寄りが不可欠です。

現場発の“ラテラルシンキング”で突破する

「今までと同じやり方」への固執から脱却するには、何より“現場目線での優れた仮説”が重要です。

例えば、最終納品先への直行便と営業所中継型の両方を、週単位・月単位で統合再設計する。
「つねに満載トラックより、小回り配送+デポ活用で網羅率優先」に切り替える。
「荷姿・パレット規格の共通化」を周囲の同業サプライヤーと連携して実現する。

こうしたラテラルシンキング(水平思考)が、今までの“当たり前”を疑う第一歩になります。

おわりに:積載率改善を「数字」から「現場力」へ

積載率改善は、単なる数値目標の達成ではなく、現場の知恵と工夫の融合、サプライチェーン全体で「無理・無駄・ムラ」の総量を下げるための重要な活動です。

これからの製造業物流は、アナログ文化の良さ(現場力・職人技・粘り強さ)と、テクノロジーの恩恵(見える化・自動化・AI)をバランスよくかけ合わせる時代です。

バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方、現場で汗を流している仲間たちとともに、「積載率の数字」にとらわれ過ぎず、「どうしたら現場みんながもっとラクになり、品質もコストも両立できるか」を一緒に考え続けていきましょう。

そして、日々の小さな改善の積み重ねこそが、これからの日本の製造業物流を支える新しい力になっていきます。

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