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靴のライニングが蒸れにくい理由と通気孔配置の考え方

目次
はじめに:靴のライニングとその機能性
靴の快適性を語る上で、見落とされがちな内部構造のひとつが「ライニング」です。
一般消費者は中敷やアッパーのデザインを重視しがちですが、実際に足と一番触れ合うパーツがライニングであり、その快適性が履き心地や衛生面に大きく貢献していることをご存知でしょうか。
特に、蒸れを抑えるための設計や通気孔の配置は、現場のプロが積み重ねてきた知見の塊です。
この記事では、なぜ靴のライニングが蒸れにくいのか、そして通気孔はどのような考え方で配置されるのかについて、製造現場の目線と業界の最新動向を織り交ぜて詳しく解説します。
特に、調達購買や開発企画の方、現場の品質担当の方々がサプライヤーやバイヤーとして知っておきたい視点を盛り込んでいます。
これから靴分野に関わる方々には是非読んでいただきたい内容です。
靴のライニングとは何か?
ライニングの基本構造と役割
ライニングとは、靴の内側に施されている層のことを指します。
主な役割は、履き心地を向上させること、足と靴の間に生じる摩擦を軽減すること、そして湿気や臭いを抑えることです。
ライニングに用いられる素材は、合成繊維、不織布、天然皮革など多岐に渡りますが、いずれも「蒸れにくさ」と「耐久性」が重要な評価軸です。
一般的には、安価な靴には合成繊維や不織布が用いられ、高級靴には天然皮革のライニングが採用される傾向があります。
現場で感じるライニングの重要性
筆者が工場現場を取り仕切っていた頃、歩留まりや品質クレームの大半はアッパーや接着不良などに集中する一方で、リピーターやファンからの“快適性”への評価は、その原因がライニングにあることもしばしばでした。
例えば、長時間歩いた後の足の湿度感や、靴を脱いだ後の臭い。
これらの問題を最小限に抑えるのがライニングの蒸れ対策です。
靴のライニングが蒸れにくい理由
素材選定の工夫
靴の蒸れやすさに大きく関与するのが、ライニングの素材です。
昭和期は通気性よりコスト重視の合成繊維が主流でしたが、現代は機能性を追求した複合素材や、吸湿速乾性の高い高機能ファブリックも普及しています。
最近では、吸湿→拡散→速乾の三層構造素材が注目されています。
この素材構成により、足から出た汗がライニングによって素早く吸収され、表面に拡散されることで乾きやすくなります。
つまり、「素材自体が湿度コントロールする」仕組みです。
また、消臭加工や銀イオンの練り込みなど、化学的アプローチで抗菌・防臭効果を発揮する素材もあります。
これらはOEMメーカーやバイヤーが付加価値を訴求したい時にも重宝されるポイントです。
摩擦や肌当たりの設計思想
蒸れ対策としてもうひとつ重要なのが、足に触れる面の肌当たりの良さと摩擦コントロールです。
足裏は運動時に繊細な汗腺が働く部位。
表面がツルツルでは汗によるベタつきが逃げにくく、逆にザラザラだと摩擦で皮膚が擦れる原因になります。
近年は、極細繊維の起毛フリースや「マイクロスエード」と呼ばれる素材が活躍しています。
これらは、適度に汗を分散しながら肌当たりもソフトという、まさに蒸れにくい靴作りのための工夫です。
縫製・圧着工法による通気パス確保
現場目線で語れば「ライニング素材」だけでは足りません。
縫製や貼り付け工法によっても、内部の空気や湿気が逃げる“余地”が生まれます。
昭和から平成初期は「全面接着」が鉄板技法でしたが、現代の機能靴では「間隔を開けた点接着」「通気パイピング挿入」「パンチ穴(通気孔)付きアッパー」などが積極的に取り入れられています。
こうした細かな現場ノウハウの積み重ねが、蒸れにくさを実現しているのです。
通気孔配置の合理的な考え方
通気孔の役割と効果
特に業務靴や作業用革靴、スポーツシューズ分野では「通気孔設計」が重視されます。
通気孔の本来の目的は、靴内部の熱気や湿気を効率よく外部へ放出し、長時間使用しても快適な状態を維持することです。
多くの現場では、単に“穴を開ける”のではなく、“どこに・どの大きさで・いくつ配置するか”が問われます。
表面だけでなく、中底・インソールとの連動設計、さらにはインソール側面への通気スリット等、全体最適化が必要なのです。
通気孔配置の設計理論と現場対応
通気孔配置の基本原則は、「足の屈曲部(ボールジョイント部)」と「最も蒸れるエリア(つま先先端と土踏まず付近)」に重点的に設けることです。
これは人体工学と歩行時の空気圧変化の解析データからも裏付けられています。
例えば、つま先部に小さな孔を均等配置し、土踏まずから踵に向かってはやや大きめの孔やスリット型を設けます。
こうすることで、歩行時に足が曲がるタイミングで空気がポンピングされ、靴内部の熱気が抜けやすくなります。
ヨーロッパの高級紳士靴市場では、実は“通気性の見える化”で付加価値を高めており、通気孔の有無や意匠が直接ブランディングにもつながっています。
日本の製造現場でも今後はこうした見せ方が重要になるでしょう。
現実の現場事情−コストと工程の壁
アナログ業界からデジタル志向に移行しつつある今でも、現場には「多孔=強度低下」「作業工程が複雑化する」「型の調達コスト増加」といった懸念が根強く残っています。
特にOEMで大量受注する際は、工程コストと機能性のバランスがバイヤー・サプライヤー双方でせめぎ合います。
実際、量産現場では孔開け加工はプレススタッフの負担となるため、設計段階で合理的な配置と、後付け加工(レーザー打ち抜き等)も想定したアプローチが重要になります。
バイヤー・サプライヤーが知るべき「通気性」訴求のポイント
調達購買視点の最新動向
市場では「××エア」や「超通気」などのキーワードを前面に押し出した提案が目立ちます。
バイヤーとしては、単なる数字だけでなく、エンドユーザーの“実感”に訴えるストーリー設計が求められています。
「○○分で乾燥」「1日履いてもムレが気にならない」「抗菌防臭テスト済み」といった定量的なデータやエビデンスは、確実に採用率を高める材料となります。
現場で培ったコストダウンのヒント
例えば、ライニング素材の多層化によってベース単価が上昇する場合、現場で培った“ムダ取”ノウハウと組み合わせるのが有効です。
作業工程での共通型の活用、通気孔加工専用治具の内製化、歩留まり低下を防ぐ縫製ガイドの設計などがコストダウンに寄与します。
また、不織布の選定時には、ミクロン単位の目付けバリエーションや韓国・東南アジア系新素材との仕入れネットワーク活用もポイントです。
バイヤーとしては、サプライヤー現場の改善提案や“見える化”データを積極的に引き出してください。
まとめ:快適な靴の裏には現場の工夫がある
靴のライニングの蒸れ対策、そして通気孔設計には、実に多くの現場知恵と新旧テクノロジーの融合があります。
単なる「穴開け」や「高級素材使用」だけでは語り尽くせない、深いロジックと地道な実践の積み重ねが、今日の快適な靴を生み出しています。
製造業の現場で働く皆さん、そしてバイヤーやサプライヤーとしてこの分野に携わる方々には、ぜひ自分の現場や商品に合った“正解”を模索し続けて欲しいと思います。
昭和的な現場知恵と、デジタルデータを駆使した現代的分析の両輪で、今後の競争を勝ち抜ける「真に蒸れにくい靴」を提供していきましょう。
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