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投稿日:2026年2月6日

施設管理部門で災害対策を進めたいのに合意形成が進まない理由

はじめに

製造業の現場では、日々の生産活動に加え、自然災害や火災などさまざまなリスクへの対応が求められています。
特に施設管理部門においては、事業の継続性や安全・安心を守るため、災害対策は最優先テーマとなります。
にもかかわらず、いざ「災害対策を進めよう」と提案しても、なかなか合意形成が進まず、思うように物事が前に動かない―この現象は昭和から現在にかけて、業界の中によく根付いている「あるある」です。
なぜ現場は腰が重くなるのか。本記事では、製造業で長年経験を積んだ筆者の視点から、その理由と本質にラテラルシンキングで切り込みます。
また、合意形成を前進させるためのヒントも交えて紹介しますので、現場のバイヤーやサプライヤーの皆さんにもぜひご参考いただければ幸いです。

なぜ合意形成が進まないのか?製造業ならではの事情

1. コスト意識と短期的な経営判断が壁になる

製造業現場で最も根強いのが、コスト削減意識です。
災害対策は「投資」ではなく「コスト」と見なされやすく、「今すぐリターンが見込めるわけではない」という経営合理性のもと、後回しにされがちです。
特に昭和的な経営体質が残る企業ほど「壊れたら直せばいい」「起きてから考える」思考がまだ多く、事前投資に消極的な傾向があります。
また、グローバル市場で競争が激化するなか、利益を圧迫しかねない新たな予算要求は受け入れられにくい現実もあります。

2. 既存の業務との兼ね合い、リソース不足

施設管理部門の現場では、日々の突発対応やルーチン業務に追われているのが実態です。
加えて、慢性的な人員不足や属人化が課題となっている企業も多く、災害対策に十分なリソースや時間を割ける体制になっていないことがしばしばです。
こうした環境では、「理想論はわかるけど、現実として手が回らない」という空気が形成されやすくなります。

3. 災害対策の定量化・説得材料の難しさ

災害対策は、「何も起きなければ費用が無駄」「いざという時しか真価を発揮しない」という性質を持っています。
このため、経営陣や他部門へ「なぜ必要なのか」を説明する際、具体的な損失額やリスク軽減効果などを数値で示すのが難しい場合が多いです。
説得材料が感覚的・抽象的になりがちな分、理解と合意を得にくく、議論が停滞します。

4. 部門間の縦割り意識とコミュニケーションギャップ

製造業では、部門ごとに「自分たちの仕事だけを守る」といった縦割り意識が根強く残る企業が少なくありません。
施設管理部門が「災害対策を進めたい」と主張しても、生産部門や経理部門、経営層が自部門の視点のみで判断するため、横断的な合意形成が滞ります。
また、災害対策の必要性や現実的なリスクの共有が不十分だと、「他人事」と捉えられ、当事者意識が生まれにくいのです。

5. 過去の成功体験や前例主義の根強さ

昭和や平成初期に培われた「これまでも大丈夫だった」「前も同じような話があった」という成功体験、あるいは前例主義は、現場にとって安心材料となります。
しかし、想定外の規模や頻度で起きる災害、あるいはサプライチェーン全体に及ぶリスクを前にしても、過去の経験がブレーキとなり、決断や行動を鈍らせてしまうことが多く見受けられます。

サプライヤーやバイヤーにも広がる「災害対策は後回し」マインド

サプライヤーやバイヤーの立場でも、災害対策への合意形成は難しいテーマです。
サプライヤーは、取引先工場のBCP(事業継続計画)評価や監査で災害対策を問われた経験がある方も多いでしょう。
一方、バイヤーは自社の供給リスクを最小化するため、サプライヤーに災害対応や情報開示を要請することが増えています。
しかし、コストアップや現実的な余力不足を理由に、具体的な対策・設備更新が進まない例は今なおたくさん見受けられます。
この背景には「誰かがやってくれるはず」「いざとなれば取引先を切り替える」という人任せの意識、さらに本質的なリスク共有の不足が潜んでいるのです。

合意形成を前進させるヒント

1. 定量データと具体例による「説得力」の強化

経営層や他部門、サプライヤーとの合意形成を図るには、できるだけ「数値」「金額」「具体的な被害想定」に落とし込んだ情報を盛り込むことが大切です。
例えば、過去の自然災害(地震・洪水・台風)発生時の自社・業界での復旧コストや、サプライチェーン寸断で発生した逸失利益額、復旧期間などを分かりやすく示す。
また、近年頻発しているBCP監査の実態や大手取引先の要求例を紹介することで、「よそごと」ではないことも同時に訴求できます。

2. 小さな一歩を設定し、「実績」を作る

大がかりな災害対策投資や全社的な制度導入は、合意を得るのが非常に難しいテーマです。
まずは、現場の「小さな困りごと」や「できること」から着手し、例えば避難誘導路の一時的な整備や、防災マニュアルの改訂から始めてみましょう。
小規模な取り組みであっても、「災害対応を実施した」という実績ができれば、それがステークホルダーの目線を変え、合意形成への一歩となります。

3. クロスファンクショナルなチーム作り

施設管理だけでなく、生産・調達・品質・IT部門など横断的なメンバーを巻き込んで、災害対策推進の専任チームや会議体を創設するのも有効です。
部門の壁を越えてリスクを共有しあうことで、「どの部門の問題か」から「全社の課題」へと意識転換を図ることができます。
また、各部門が抱えるジレンマやボトルネックの理解も進み、現実的で納得感のある施策案をつくることが可能となります。

4. バックキャスティング思考-最悪の事態から逆算して考える

これまで日常的に障害が発生しなかったからといって、「本当に災害は起こらない」と油断してはいけません。
「この地域で大地震が発生し、サプライヤーも含めて物流が分断したら?」「大規模停電でラインが停止したら?」など、徹底したバックキャスティング(未来の最悪から現在を逆算)思考で課題を洗い出しましょう。
そうすることで、必要な投資やアクションの優先順位が明確になり、合意形成の材料として活用できます。

昭和から令和へ、災害リスクとの向き合い方もアップデートしよう

今後も温暖化や地政学リスク、パンデミックなど複合的な災害リスクが高まる時代に、昭和型の「なんとかなる精神」や「根拠なき安心感」は通用しなくなっています。
製造業に求められるのは、現場主導の現実解と、リスクマネジメントのアップデートです。
災害対策は合意形成の難しいテーマではありますが、これに本気で取り組むことで、取引先や社会からの信頼、長期的な事業安定、従業員の安心という「見えない価値」が確実に積み上がっていきます。

まとめ

施設管理部門が災害対策を進めたくても、合意形成が進まない理由は多岐にわたります。
コスト削減意識、リソース不足、前例主義、部門縦割り、定量化の難しさ…これらはどれも業界特有の「深い根っこ」です。
しかし、時代が激しく変わるいま、この壁を乗り越える知恵と行動こそがこれからの製造業現場に求められています。
まずはできることから、現場主導で小さな挑戦を始めてみてください。
そして、自社の災害対策を「攻めの武器」「差別化ポイント」として捉え直してみましょう。
バイヤーやサプライヤーの皆さんも、この視点でパートナー企業への働きかけを強化することで、強い連携とサプライチェーン全体の競争力向上につなげられます。
本記事を通じて、施設管理部門のみならず製造業に携わる皆さんの「災害対策合意形成」の現場に、一筋のヒントが届けば幸いです。

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