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産業医サービスを使った予防施策が進まない理由

目次
産業医サービスを使った予防施策が進まない理由
近年、製造業界でもメンタルヘルスや体調管理の重要性が増しています。
法令による産業医の設置義務も強化される中、現場では産業医サービスを活用した予防施策が提唱されています。
しかし、実際には「予防施策」がなかなか進展しない企業現場が多く見受けられます。
その背景には何があるのでしょうか。
ここでは、製造業の現場管理職や調達・購買担当者の目線から、業界独特の事情やラテラルシンキングを活かした考察を交えて解説します。
産業医サービスとは何か
法令上求められる産業医の役割
産業医は、労働安全衛生法に基づき一定規模以上の事業場で選任が義務付けられている医師です。
労働者の健康管理や衛生面の助言、健康診断の事後措置指導などが主な業務です。
現代の産業医サービスとそのメニュー
近年は外部委託による「産業医サービス」も拡充され、健康相談、ストレスチェック、過重労働面談、職場改善コンサルティングなど、メニューは多様化しています。
これにより単なる法令遵守から一歩踏み込んだ「健康経営」「予防医療」への活用が推進される流れがあります。
予防施策が進まない主な理由
業界に根付く昭和的な価値観と慣習
多くの製造業現場では、今なお「病気や怪我は“自己責任”」「本人が申告しない限り会社は関与しない」という昭和から続く価値観が色濃く残っています。
特に男社会の場合、「少々の体調不良は気合いで乗り切る」「弱音は吐くな」というムードが根強く、予防施策そのものが敬遠されがちです。
管理職層にも「自分たちの若い頃はそんなサービスに頼らずやってきた」といった心理が蔓延しています。
目に見えにくい“コスト”への嫌悪感
産業医サービスは、見積書で明確に現れる“直接コスト”です。
設備投資や原材料購入のように直接生産性アップにつながるわけではなく、「果たして費用対効果があるのか」と疑問視されがちです。
工場長や経理部門では、予防施策として提案しても「まだ問題が起きていないのに、なぜ今コストを増やす必要があるのか」という保守的な議論が優勢になりやすいのです。
特に日本的経営文化においては“短期的成果主義”の罠もあり、長期的な効果が見えづらい施策は後回しにされる傾向が顕著です。
現場と産業医の間の“距離感”
多くの製造業現場では、産業医が“外部の専門家”であり「現場を知らない医者の話は現実的ではない」と感じがちです。
現場作業特有の体力的負荷や、異常時の対応、交替勤務のしんどさなど、現場スタッフの実態・空気感がなかなか医師側に伝わりません。
一方、産業医からすれば定期的な訪問のたびに形式的なヒアリングや契約上の業務遂行に留まりやすく、“本質的な現場改善”まで踏み込めないもどかしさも存在します。
予防施策を浸透させるためのラテラルシンキング
“予防 = コスト削減”の発想転換
現場のキーマンたちが「予防は将来的なコストセーブにつながる」ことを本気で実感しない限り、消極的な姿勢は変わりません。
実際、メンタルヘルス不調者や過重労働問題、それに伴う離職や採用コストの増加は、目に見える“損失”として現れます。
一人の離職者当たり数百万円の損が発生するとも言われており、「何も問題がない今」からこそ能動的な予防投資をすべきだと現場数字で示すアプローチが有効です。
現場の“困りごと”に寄り添った施策設計
現場に根ざした予防施策は、単なる健康相談や講習会ではなく、日々の勤務実態や悩みに寄り添う形が理想です。
たとえば、心理的ハードルを下げる匿名相談の導入や、有機溶剤・化学物質などの作業リスクの見える化、作業手順改善ワークショップと産業医の連携など、「現場の困りごと」を直接解決に結びつける手法が求められます。
“バイヤー”・サプライヤーにも波及する健康経営の重要性
大手メーカーでは、下請サプライヤーの健康経営や労働環境も評価対象となりつつあります。
調達現場でも、ESG経営や持続可能な取引先選定が進めば、サプライヤー側も「予防施策」「産業医サービス導入」の有無が“採用・選定ポイント”に加わる時代が到来しています。
つまり、コストセンターではなく競争力としての“健康・安全”が調達現場にも波及していくのです。
現場発のリーダーシップで変化を促す
トップの強いコミットメントが必要
どんな立派な制度やサービスがあっても、現場に実際に根付くかどうかはトップの意志次第です。
工場長や現場リーダーが「予防施策」を自ら体現し、正面からメッセージを伝え続けることが不可欠です。
「人は財産」という言葉を単なるスローガンで終わらせず、日常のマネジメントレベルで表現する姿勢が支持を生みます。
“昭和的価値観”とどう向き合うか
価値観の転換には、地道なコミュニケーションと“事例の見える化”も大きな力を持ちます。
過去のヒヤリ・ハットや、実際に起きた健康事故例、あるいは“予防施策を導入したことで大きな損失を回避できた”事例を積極的に共有しましょう。
ベテラン作業員の経験談や、現場のキーマンが前向きに語ることで、少しずつ意識が変わっていきます。
今、現場で求められるアクション
小さな“気づき”から始める
“大掛かりな制度変更”や“全社一斉導入”が難しければ、まず一つのライン、一つの課で“小さな予防施策”をトライアル導入してみてください。
日常朝礼でのストレッチタイム、休憩所の環境改善、産業医への手軽な健康相談窓口設置など、すぐに始められる小さなアクションの積み重ねが大切です。
調達・購買担当者も“健康経営”に目を向ける
バイヤーを目指す方も、単なる価格交渉や納期調整以上に、サプライヤーの健康・安全管理体制やESG施策を評価項目に取り入れる視点が重要です。
サプライヤーの立場であっても、発注元現場の“求めているもの”を理解することが、競争優位に直結します。
まとめ:昭和的思考からの脱却と、持続的成長への第一歩
産業医サービスを使った予防施策が進まない背景には、業界に強く根付く昭和的な価値観やコスト意識、現場と専門家の距離感といった複合的課題が存在します。
しかし、業界全体が本質的な生産性・持続安全性を追い求める時代、現場発のラテラルシンキングとリーダーシップによって変革は十分可能です。
自分たちの現場を守り、さらにはサプライヤーネットワーク全体の底上げにもつながる“予防施策”――。
その最初の一歩は“気づき”と“小さな実践”です。
ぜひ、あなたの現場から新しい健康経営の地平を切り拓いていきましょう。