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抄紙機部材の標準化が進まない理由

目次
はじめに
抄紙機(しょうしき)の部材は、製紙業界において非常に重要でありながら、なかなか標準化が進んでいません。
私自身、長年製造現場で調達購買や生産管理に携わってきましたが、標準化の壁の厚さを何度も実感してきました。
この記事では現場目線で、なぜ抄紙機部材の標準化が進まないのか、その理由や背景を深く掘り下げて解説します。
また、標準化に関心のあるバイヤーや、それに携わる方々が抑えておきたい業界の動向や今後の課題についても考察していきます。
抄紙機とは何か
抄紙機とは、紙の原料となるパルプを繊維シート状に形成し、乾燥・巻取りまでを一貫して行う大型機械のことです。
抄紙機の規模は非常に大きく、多くの部材やパーツが複雑に絡み合っています。
抄紙機一台だけで、構成する部品は数万点に上るとも言われています。
装置のラインナップや各パーツの仕様は、製品の品質や生産効率、ランニングコストに直結します。
そのため、サプライヤーやユーザー企業双方が、抄紙機部材の標準化には高い関心を持っています。
標準化が進まない主な理由
1. 製品仕様と顧客ニーズの多様化
製紙メーカーごとに、抄紙機で作りたい紙の種類や特性は異なります。
用途も段ボール原紙からコピー用紙、特殊紙まで多岐にわたります。
紙の厚みや密度、表面の触感や透け感など、ほんのわずかな違いが製品価値に大きく影響します。
このため、抄紙機には顧客ごとの要求仕様が細かく反映され、必然的に使われる部材も一律にはなりません。
部材メーカーも顧客ごとの「特注」や「カスタマイズ」に応えざるを得ない状況が続いています。
結果、標準品よりも個別仕様の部材や設計がバラバラになりやすいのです。
2. 老舗メーカー文化と「匠の技」への依存
日本の製紙業界は、長い歴史を持つ老舗企業が多く存在します。
独自の生産方式やノウハウ、伝統的な設計思想が強く根付いています。
例えば「この工程では、この会社のこの部材でないといけない」というような暗黙のルールが出来上がっています。
歴史や現場力、経験を尊重する風土が、標準化という流れに対してブレーキとなっているのは否めません。
また現場の「匠の技」があまりに重視されすぎ、客観的な評価基準や共通仕様の策定が後回しになりがちでした。
このような伝統的な体質が、結果的に部材の標準化を遠ざける要因となっています。
3. 技術進化へのリアルタイムな対応
近年、抄紙機もIoTやデジタル制御など最新技術の導入が急速に進んでいます。
センサーや自動化パーツなど、比較的新しい部材カテゴリがどんどん誕生しています。
新技術採用時には、まず各メーカーが独自仕様でテスト導入し、実績を積み重ねていく流れになります。
これにより、一定の実績・標準ができるまで「各社バラバラ仕様」が増えます。
その結果、同じカテゴリの部品でもメーカーごとに寸法やコネクタ形態が違い、共通化が進みません。
新旧技術の移行期は、標準化がかえって遠ざかるという現象が現場でよく起きます。
4. 設備の長寿命と更新サイクルの違い
抄紙機は一度導入すると、基本的には30~50年以上にわたって稼働し続けることが多い設備です。
そのため、メーカーや工場によって導入時期や世代が大きく異なります。
何世代も前の旧機種が混在している現場も少なくありません。
このような事情から、「古い規格に合わせた部材」への需要が根強く残ります。
新機種の仕様に合わせて部材を標準化しても、既設機に適合しない部材は販売できません。
今ある抄紙機の多様性自体が、標準化推進の足かせとなっているのです。
5. サプライヤー間での競争プレッシャー
サプライヤー側にも、標準化推進に積極的になれない事情があります。
自社の独自技術やスペックでマーケットシェアを維持したい、という思いが強いからです。
もし部材が完全に標準化された場合、コスト勝負になりがちです。
また、購買側としても、標準品だけで大口の購買力が発揮しづらくなることも現場で言われます。
調達購買の視点からみても、標準化によるコストメリットと、柔軟な個別対応のバランスをどう取るか。
このジレンマが、なかなか解消されていません。
現場から見た標準化推進の難しさ
現場に根差した視点で標準化の難しさを振り返ると、現場担当者の意識やスキルギャップも無視できません。
たとえば、標準品切り替えに当たって「生産ラインを止めたくない」「不測のトラブルを避けたい」といった心理的抵抗が働きます。
調達担当者と現場オペレーターで情報量や危機感に差があり、合意形成が進みづらい点も現場ならではの課題です。
また現実問題として、「カタログ上は同じ規格でも、実際に現場条件で100%機能するか」は試験してみるまで分かりません。
小ロット多品種、短納期生産の現場では、標準化部材導入のチャレンジ自体が業務負荷になることも。
このような現場独自の事情が、標準化推進の大きな制約となっています。
昭和から抜け出せない業界動向
製紙業界を含む日本のものづくり業界は、効率化や自動化による変革の波が到来する一方、未だに「昭和のやり方」が根強く残っています。
たとえば、現場とオフィスの連携不足や、紙の伝票やFAXによる発注が続いているといった状況です。
このようなアナログ文化は、部材の情報集約や標準化推進に決定的なブレーキとなります。
サプライヤーとの長年の付き合いに依存することで、新規参入が難しくなり、仕様固定化が進みません。
一方で、DX推進担当や若手購買バイヤーからは「もっとスピーディーな調達・標準化を」との声も増えています。
こうした世代間・意識のギャップも、部材標準化推進の壁になっています。
標準化を加速させるためのヒント
標準化が進まない状況を打開するヒントは、いくつかの方向性が考えられます。
1. 業界間連携による規格共通化
ユーザー企業・部材メーカー・学会などが横断的に連携し、「抄紙機部材の標準仕様ガイドライン」を策定する。
既存のJISやISO規格の枠にとらわれず、実務現場に即した標準基準を検討することが肝要です。
2. 現場主導×データ主導の部材選定
実際の運用データや稼働実績を共通のデータベースに集約し、「どの部材が最も効率的か」客観的な分析に基づく部材選定を行う。
これにより「なんとなく昔から使っているから」という惰性的な部材選定を見直せます。
3. サプライヤーとの開発パートナーシップ構築
仕様共通化が進めばサプライヤーと“敵対的価格交渉”ではなく“共創型パートナーシップ”が実現します。
標準部材の改良やユーザー現場への適合性改善など、長期的ベネフィットをバイヤー・サプライヤーが協働して追求できる時代へシフトしましょう。
4. アナログ脱却×DX推進
見積依頼・発注・納入情報などもオンライン化し、標準仕様のデータベース管理を徹底する。
現場の経験値とデジタル技術を組み合わせて「人×データ×現場力」で標準化を加速させる環境を整えることも大切です。
まとめ
抄紙機部材の標準化が進まない理由は、単なる業界の慣習や意識の問題だけではありません。
製品仕様の多様化、老舗メーカー文化、技術進化と設備の長寿命、サプライヤー間の競争など複合的な背景が存在します。
その一方で、業界内外の連携強化、現場主導のデータ活用、サプライヤーとの共創、そしてデジタル技術の活用といった新たな地平線も見えてきました。
20年以上現場で汗を流した立場から言わせていただくと、「標準化の壁」は決して超えられないものではありません。
現場の声・実績データ・業界連携、そして一歩踏み込んだ勇気が、製紙業界が次の時代に進化するカギとなります。
この記事を読んでくださった皆さまが、自部門の標準化推進に少しでも前向きになっていただければ幸いです。
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