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端末在庫のABCで低頻度品の発注ロットを再計算し保管費を削減

目次
はじめに
製造業における在庫の最適化は、利益確保の要といえます。
とくに多品種少量生産が進む現代では、端末在庫の管理に頭を抱える方も多いのではないでしょうか。
在庫過多による保管費用の増加や、低頻度品に対する発注ロットの見直しは、昭和時代から残るアナログなままの業務体制が足かせになることも少なくありません。
本記事では、端末在庫(エンド在庫)にフォーカスし、ABC分析を通じて低頻度品の発注ロットを再計算することで、保管費削減を実現するためのノウハウと業界内で実際に根付いている課題、その解決策を現場目線で解説します。
購買担当者やバイヤー志望の方、サプライヤーとしてバイヤーの思考を知りたい方にも参考いただける内容となっています。
なぜ低頻度品が在庫管理のカギとなるのか
在庫管理では、「よく動く品」=A品、「そこそこ動く品」=B品、「たまにしか動かない品」=C品に分類するABC分析が基礎となります。
このうちC品、すなわち低頻度品は、発注頻度が低い分だけ1回あたりの発注量が多くなりがちです。
理由は発注業務の効率化や、最小発注数・ロット制限といった商習慣があるためです。
しかし、C品は需要変動や棚卸減耗のリスクも高く、気づいたら在庫を山積みして保管コストがかさみ、キャッシュフローを圧迫していたという事態に陥りやすいカテゴリーです。
昭和型管理からの脱却が求められる背景
かつては「まとめて発注」「とりあえず在庫は多め」が常識でした。
しかし、昨今のカーボンニュートラルやDX推進、働き方改革の潮流で、倉庫スペースや運用コストの最適化圧力は年々高まっています。
それでも、受け入れ検収や棚卸の手間、ベテラン主導の属人的な判断に引っ張られ、低頻度品の管理は旧態依然とした部分が残っています。
ABC分析で端末在庫を可視化する
ABC分析とは、品目ごとの年間消費金額や数量、または出庫頻度で3つのランクに分類し、重点管理の対象を絞り込む手法です。
まずは端末在庫のデータを用いて以下の手順で現状を「見える化」しましょう。
ステップ1:在庫データを抽出
まずは全在庫品目の年間出庫数(もしくは出庫金額)を抽出し、降順で並べます。
上位20%をA品、次の30%をB品、残りの50%をC品と分類するのが一般的です。
ステップ2:C品(低頻度品)を選定
C品リストの中には、予備品・補修用部品、半ば“捨て在庫”になっている不要在庫が含まれていることも珍しくありません。
システム化が進んでいなければ、紙管理やExcelベースでもデータ集計と現物突合せで地道に洗い出しを行いましょう。
ステップ3:C品の発注ロットと在庫量を調査
C品のうち、とくに「最後に使ったのが半年以上前」「直近1年でほとんど出庫なし」などは要注意です。
発注ロット(MOQ:Minimum Order Quantity)や棚卸残データを確認し、なぜそれだけ在庫が存在しているのか、理由ごとに棚卸することが第一歩です。
低頻度品(C品)が抱える問題の本質
なぜC品がいつまでも残るのか――。
本質的な理由は以下の3点に集約されます。
1.仕入ロットが大きすぎる
サプライヤー側の都合や個別対応不可などの事情から、最小発注単位(ロット)が自社需要より大きく設定されている場合が多いです。
2.業務省力化のため「まとめ買い」
購買発注業務を効率化したい、あるいは発注手数料や運送料節約のためにまとめ買いしてしまい、結果、余剰在庫を抱える悪循環になります。
3.需要予測の不確実性
顧客の仕様変更や設計変更、製品ライフサイクルの短縮化により、突然消える需要も珍しくありません。
リスク回避のため“少し多め”に発注し、その後使い切れずに余るパターンが根強く残っています。
発注ロット再計算の基本アプローチ
これらの非効率の温床を断ち切るには、在庫回転率を向上させるためのロット見直しがカギです。
現場で実施できる実践的な再計算アプローチを紹介します。
1.需要とリードタイムの再評価
直近の実績値(予測ではなく現実出庫データ)をもとに、サプライヤーとのリードタイム(発注から入荷までの期間)を正確に把握します。
需要が1か月で10個、リードタイムが2か月であれば、必要な在庫は原理的に20+α個となります。
αは安全在庫です。
2.サプライヤーとのロット交渉
これまで“言われるがまま”だった最小発注数や梱包単位について、サプライヤーに「使用実績データ」を提示して交渉しましょう。
サプライヤーにとっても、過剰発注による返品や未払いリスクを防ぐため、合理的な交渉は受け入れてもらえるケースが増えています。
3.ロット拡大or縮小の判断基準
安易に現状維持したい気持ちもわかりますが、在庫回転の悪いC品は徐々に「都度発注」「受注生産」「ミニマムストック」へのシフトが有効です。
また、サプライヤー側の設備・生産制約も加味しながら、真に必要な数量だけを仕入れる仕組みが大切です。
保管費削減~現場での実践ノウハウ
C品の発注ロット縮小による保管費削減を現場で進めるための、具体的なアクションと失敗しない進め方を解説します。
1.在庫スペースのコスト明示化
倉庫管理費や土地賃料、光熱費、人件費など、1か月あたり1棚(パレット)ごとのコストを「見える化」し、上層部も巻き込んで削減目標を共有します。
これにより「この棚に半年動いていないC品があるのは非効率」という意識変革が起こります。
2.定期的なC品リストのレビュー会議
現場担当者と購買担当、設計・技術部門を交え、低頻度品リストを月次・四半期単位でチェックし、「なぜ残っているのか」「今後どれだけ使う見込みか」を棚卸する時間を設けます。
ここでは忖度なく現状把握することがポイントです。
3.発注&補充の標準化マニュアル化
C品の発注は「何となく多め」「今年も同じ」など属人化しやすいため、ロット算定のロジックや根拠を標準化・マニュアル化します。
現場の判断基準を全社で共有し、バイヤースキルの底上げにも繋げましょう。
4.サプライヤーの協力も得る
サプライヤー側としても、客先在庫が溢れ、突然のキャンセルや返品対応に振り回されるデメリットがあります。
サプライチェーン全体で在庫最適化の利害一致を図り、「持たない=悪」ではなく「最小限がベスト」という共通認識を醸成しましょう。
現場目線のちょっとした裏技・工夫
昭和型のアナログ管理が色濃く残る工場でも実践できるちょっとした工夫を紹介します。
・カンバン発注とポカ避け
補充が必要なC品の箱に「発注カンバン」を仕込んでおき、最後の1箱開封時に購買へ自動連絡が入る仕組みを使えば、欠品も過剰も防ぎやすくなります。
・「特売」「無償譲渡」で在庫圧縮
永久に使わなさそうなC品は、グループ他工場や関連会社への在庫譲渡を積極推進したり、ネットで中古販売するケースも増えています。
・DXツールの簡単活用
高額な専用システムでなくても、Excelのピボットやバーコード管理アプリを使えば、属人的な在庫表記入のエラーや見落としが減ります。
地道でも着実な仕組み作りが肝要です。
今後の展望と“脱・昭和”のために
IT・DX時代と銘打たれる今、製造業の在庫管理も今一度原点回帰し、現場目線の効率化を進める必要があります。
昭和型の「発注は多め」「在庫は安心」という感覚から脱し、論理的なエビデンスとサプライチェーン全体視点で最適化に挑戦しましょう。
低頻度品こそ“目につきにくい無駄”の温床です。
ABC分析の定着、標準化・共有による現場力の底上げ、サプライヤーとも連携した新発注体制の構築で、製造業の地力強化が進むことを願っています。
まとめ
端末在庫のABC分析を用いた低頻度品(C品)の発注ロット見直しは、地味ながら工場経営のムダ取りに大きく貢献します。
属人的管理・まとめ買いから脱却し、標準化、サプライチェーン全体最適の考え方を持つことが、現代の製造業では一層求められます。
本記事が「在庫は減らせない」「昔からこうしてきた」に縛られている現場の皆さまにとって、新たな一歩となるヒントになれば幸いです。
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