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仕入先のCO2原単位を共通帳票で受領し比較交渉に活かす

目次
はじめに:製造業の新時代、CO2原単位の重要性
かつて日本の製造業現場は「品質・コスト・納期(QCD)」を最優先にしてきました。
しかし、時代は大きく変わりつつあります。
現在、グローバル競争や環境配慮型社会の到来により、調達購買部門やバイヤーにも「CO2排出量(カーボンフットプリント)」という全く新しい評価軸が加わりました。
これは大企業だけの問題ではありません。
サプライチェーン全体、すなわち中小のサプライヤーや部品メーカーにとっても避けて通れないテーマです。
CO2原単位をいかに正確に、かつ共通フォーマットで受領・比較し、コストや品質と同様にバイヤーと交渉材料とするか。
このテーマはまさに、昭和時代に根づいた“勘と経験”主義からの脱皮をうながし、現場に大きなパラダイムシフトを迫っています。
CO2原単位とは?製造業における定義と測定の現状
CO2原単位とは、製品1単位を製造する際に排出されるCO2量を指します。
たとえば、「1kgのアルミ部品を製造するのに何kg-CO2が発生するか」という形で表現されます。
なぜこれが重要かというと、各企業が「脱炭素」目標やサステナビリティ報告書において、取引先や顧客からの厳しい開示要求を受けているからです。
現状、多くの製造業サプライヤーではCO2原単位の算出方法が統一されておらず、
・自社独自の計算式で算出している
・EXCEL帳票や手書き帳票で提出している
・発電所単位の平均値や業界団体のデータをそのまま転用している
という“アナログ”な実態が残っています。
こうした多様性や曖昧さは、バイヤーが“本当にCO2負荷が低い取引先”を比較・評価しにくくする原因となっています。
なぜ今「共通帳票」が求められるのか?
CO2原単位データの共通帳票化には、いくつかの大きな波があります。
1.国際標準化とコンプライアンス強化
海外取引先や多国籍大企業では「GHGプロトコル(温室効果ガス算定基準)」や「ISO 14064」など国際規格への準拠が求められます。
国際標準に沿わないと、グローバルサプライチェーンからの排除リスクもあり得る時代です。
2.バイヤーによる公平な比較・評価
従来のように価格や納期だけでなく、CO2データもフェアに比較し、取引先選定や価格交渉材料としなければなりません。
すべてのサプライヤーに共通帳票を配布し、同一基準でデータ提出してもらうことで、バイヤー側は“見える化”されたCO2コストミックスを構築できます。
3.サプライヤーの持続的競争力確保
「ウチは中小だから関係ない」「帳簿上の計算で十分だろう」という意識では、今後のサプライチェーンから脱落しかねません。
共通フォーマット対応や正確なCO2管理は、新たな競争力源になります。
現場がぶつかりやすいアナログ的課題
共通帳票導入は理屈では「正義」ですが、現実の現場にはいくつもの障壁があります。
1.データの信頼性・正確性の確保
・見積作成や原価計算と同じく、CO2原単位にも“どんぶり勘定”が残る
・小規模工場では「現場間接部門」や「電力購入分」の割り振り根拠が曖昧
このあたりをクリアにしないと、結局「見かけだけの帳票」になってしまいます。
2.一次情報の整備とデジタル化
・アナログな紙帳票や属人的な管理ファイルから脱却できていない
・帳票転記や再計算のミスが発生する
ここにはIoTや工場自動化、ERPとの連携といった“デジタル変革”の動きも不可欠になってきます。
3.現場の「意識改革」
・「CO2なんて本当に必要なのか」「品質じゃダメなのか?」という昭和的な抵抗感が根強い
・実務部門と経営層の間で危機意識にギャップがある
この壁をいかに乗り越えるかが、今後の大きな焦点となります。
本当に使える「共通帳票」とは?現場目線の実践提案
帳票と聞くと「自由記載」「形式自由」と考えがちですが、バイヤー側・サプライヤー側どちらにとっても使いやすいものにするのが大前提です。
共通帳票設計の要件
・CO2原単位の算出根拠(例:購入電力やガスの排出係数、燃料消費量、現場データの取得方法など)を記入欄として明確に用意
・複雑な計算式や公式もあらかじめ条件付与
・手書きや口頭報告ではなく、EXCELやWebフォーム等デジタルで
・一次データやエビデンス(例えば請求書写や検針データ)も添付可能
・取引先への差し戻し・フィードバックループをきちんと設ける
これにより、サプライヤー現場でも再現性・説明性を持ったCO2データが提出できます。
導入の流れ(実務的プロセス例)
1. バイヤーが基準となる共通帳票様式とCO2算定基礎データ(排出係数一覧など)を配付
2. サプライヤーが実地データ(エネルギー使用量、原材料種類、歩留まりほか)を帳票に記入
3. データ検証・内容ヒアリング(疑問点は逐次やりとり、必要なら現場訪問)
4. 各社分を一覧化し、詳細比較ができる形でまとめる
5. 協力会社との継続的な改善サイクルを回す(例:改善指導、改善提案の共有)
このプロセスは、大手サプライチェーンだけでなく中小現場にも無理なく浸透させるのが肝心です。
CO2データを調達交渉に活かす新戦略
CO2原単位の比較は「コスト」「納期」「品質」以外に、調達戦略の新たな武器となります。
1.取引先選定・リスク管理での活用
高CO2のサプライヤーは環境コスト増の時代、大きなリスク要因です。
早い段階から低CO2・高効率なサプライヤーとの関係強化を図れば、自社バリューチェーンの競争力確保につなげることができます。
2.価格交渉・条件交渉の新基軸
「CO2削減策を導入した分は価格に上乗せ」など、新たなコスト交渉の基礎データになります。
QDCに加え、CO2削減実績や今後の削減計画を評価条件に盛り込むことで、より“サステナブルな取引関係”が築けます。
3.グリーン調達・ブランド価値向上
脱炭素経営の実現は、単なる「CSR」や「義務」ではなく企業ブランディングの力にもなります。
公開可能な範囲で自社サプライチェーンのカーボンフットプリント低減を外部発信すれば、BtoB・BtoCどちらでも信頼獲得に直結します。
サプライヤー側から見た「交渉ツール」としての共通帳票
バイヤーがCO2帳票を使うのは当然ですが、サプライヤー自身もこれを強力な“交渉カード”として活用できます。
自社努力の「見える化」=差別化につながる
例えば、最新省エネ設備の導入や工程見直しによるCO2大幅ダウンが証明できれば、価格だけに頼らない取引継続・増加を狙うことが可能になります。
不利条件や特殊プロセスの「説明責任」として
「特殊材料使用のため排出量が高い」「一部工程は外注依存」など、不利条件の“見せ方”や工夫も重要です。
数字の根拠や改善意欲を示せば、バイヤーも価格交渉や取引判断で柔軟な対応をしてくれる可能性が上がります。
サプライヤーチェーンでの「改善提案連鎖」
共通帳票を通じて現場ごとにCO2データを比較できれば、全体のムリ・ムダ・ムラも“見える化”できます。
そこから、より効率的な共同改善や自治体・大学との連携への道も開ける可能性があります。
今後の展望:共通帳票を「未来の現場力」へ
調達購買の現場は、今まさにアナログの壁を乗り越え、「CO2データ」という新たな競争軸を取り込んで大きく進化しようとしています。
このダイナミックな変化の波に乗るには、
・共通帳票を単なる“業務負担”ではなく“現場力+競争力”の源泉と捉える
・デジタル化やIoTツールの導入でデータ信頼性を確保する
・サプライヤー全体を巻き込んだ「共創的」な改善活動を進める
という姿勢が不可欠です。
昭和的なアナログ管理から抜け出し、未来の“現場競争”の土俵に立つためには、皆で「共通帳票」の価値を再発見し、着実に運用していくことがカギとなるでしょう。
まとめ:CO2原単位の共通帳票化で製造業はまた一歩進化する
脱炭素時代の製造業では、CO2原単位の見える化・共通帳票化は不可逆の流れです。
これを単なる義務や「外圧」と受け止めるのではなく、「経営資源拡大の機会」「新たな現場改革のチャンス」として積極的に捉え直すべきです。
私たち現場経験者は、アナログ管理の難しさも、現場の試行錯誤も、そして改善の喜びも知っています。
だからこそ、現場目線で「CO2共通帳票」の実効性を追求し、これを全員の“新たな武器”にしていただきたい。
変化の時代にこそ、製造現場本来の「現場力」が生きる。
このテーマを、一歩深く掘り下げて、皆さまと共により良い未来へ進んでいきましょう。
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