投稿日:2025年11月25日

ブランド初期におすすめのOEMパーカー生産フローを解説

はじめに:OEMパーカー生産における基本的な考え方

ブランド立ち上げや初期のアパレルビジネスにおいて、OEM(Original Equipment Manufacturer)によるパーカーの生産は、リスクを抑えつつオリジナル商品を展開する有効な手段です。
特に製造業のバックグラウンドを活かして、調達購買や品質管理の観点からも、無駄の少ないサプライチェーンを構築することができます。
本記事では、OEMパーカーの生産フローを、現場目線のリアルな実務ノウハウと、これからの製造業やバイヤーの視点も交えて詳しく解説します。

OEMパーカーとは何か

OEMとは、自社ブランドで商品を販売したい企業が、商品の開発・設計を外部の工場に委託し、自社ブランド名で販売するビジネスモデルです。
パーカーの場合、デザインや仕様は依頼主が決め、実際の物づくりは専門の縫製工場やアパレルメーカーが行います。
この形態は、初期投資や在庫リスクを抑えられることが大きなメリットです。
特にブランド初期は生産ノウハウや製造設備がなくても、独自性のある商品展開が実現できます。

パーカーOEMの生産フローを分解する

1. 企画・設計フェーズ

OEMパーカーの生産フローの出発点は、商品の企画と設計です。
アパレル業界ではこの工程を「マーチャンダイジング」と呼ぶことが多いですが、製造業の現場で言えば「要件定義」「仕様明確化」です。
ブランド側(依頼主)は、以下のポイントを明確にします。

– 目的:ターゲット層、市場ニーズ、用途
– 仕様:生地、サイズ展開、デザイン(色・ロゴ・パターンなど)、付属品(ジッパー、紐など)
– 必須機能:吸汗速乾、防風、加工有無など
– 販売戦略:小売価格、数量、販路
具体的なアウトプットとしては、デザイン画(イラストレーター等で作成)や仕様書、参考画像などが必要となります。
このフェーズでの曖昧さが後工程の手戻りやコストアップにつながるため、細部まで詰めることが重要です。

2. サプライヤー選定・見積もり

次に重要なのがOEMを依頼するサプライヤー(縫製工場や商社)の選定です。
製造業で培った目線を活かすなら、単なるコスト比較だけでなく、品質保証体制や納期遵守率、実績など複数の観点で評価しましょう。

– どの工程を自社で担い、どこを協力工場に依存しているか
– ISO認証やQC体制、過去のリコール履歴
– 最小ロットや短納期対応などの柔軟性
問い合わせの際は、仕様書やイメージサンプルを提示し、詳細な見積もりを取得します。
製造原価だけでなく、サンプル費、型紙作成代、物流コストなども忘れず算出しましょう。

3. サンプル作成・仕様確定

見積もり・条件交渉で合意したサプライヤーと共同で「サンプル(試作品)」を作成します。
ここで、デザインやサイズ感、素材などの実物確認が可能になります。
特にパーカーのような衣類では、生地の風合いや縫製品質、プリントの発色など、写真や仕様書だけでは分からない要素が多くあります。

この工程で何度も修正依頼が入ることは珍しくありませんが、調達購買の現場でよくあるトラブルは「言った・言わない」のコミュニケーションギャップです。
修正箇所は全て書面(メールや文書)でやり取りし、合意記録として残すことが品質トラブル防止につながります。

4. 本生産・納品前検品

サンプル確認後、量産に進みますが、この工程が最も「昭和アナログ」の雰囲気が残る部分です。
国内外問わず、多くの工場では今なお職人の手仕事やアナログな段取りが多いのが実情です。

納期や生産数量の管理には、製造業の生産管理手法(納期管理表、進捗会議、現場訪問)を取り入れることが大切です。
最近はIoTや生産管理ソフトの導入が進んでいますが、小ロット・スポット生産では口頭やFAXが主流の現場も多いため、リスクを読んだ上で人間による直接確認も併用しましょう。

納品前の検品では、サンプルと同一品質・仕様で仕上がっているか、抜き取り検査や全数検査を行います。
検品記録を取り、トラブル発生時の証拠とする習慣も重要です。

5. 入荷・検収・販売準備

商品が倉庫や店舗に入荷したら、数量や破損・汚損の有無を確認し、検収処理します。
この段階で万一問題があった場合、原因調査や再生産・返品交渉などの対応が必要です。
現場では、伝票の管理やバーコード管理など、製造現場のシステム連携が課題になることもあります。
オリジナルブランドの立ち上げ時は「どこで・誰が・何を」把握できるよう、工程ごとの管理台帳やトレーサビリティの仕組みをできる範囲で作るようにしましょう。

OEMパーカー生産現場における要注意ポイント

コミュニケーションの質が現場品質を左右する

OEMの場合、現場との情報のキャッチボールが繰り返されるため、「伝えたつもり」「分かったつもり」で進むと、イメージ違いや品質事故が発生しがちです。
特に、職人文化が根強いアパレル分野では、阿吽の呼吸や慣習的な工程説明が多く、論理的な仕様伝達や記録化の弱さがトラブルの温床になります。
現場経験者としては、「現物・現場・現実(3現主義)」を徹底し、仕様確認や立ち会い検査など実際に触れて確認することを強く勧めます。

各工程で起こりやすいトラブル事例

– 見積もり・契約時:「含まれていると思った項目が抜けていた」「口頭での変更依頼が反映されていない」
– サンプル確認時:「生地ロットが違って色味が微妙に異なる」「プリント位置が数ミリずれている」
– 生産時:「繁忙期で納期が遅れる」「下請け工場への再委託で品質が落ちた」
– 検収時:「サイズ違い・タグ誤表示・個装方法の食い違い」

これらは全て、「仕様が曖昧」「コミュニケーション不足」「チェック体制不備」に起因します。

これからのOEMパーカーづくりが目指すべき方向性

昭和の“どんぶり勘定”から脱却し、デジタルデータやエビデンスで管理する手法への移行がこれからの製造業、特にOEM生産現場のトレンドです。
しかし、まだまだ現場には「経験とカン」を頼る人材や慣習が強く残ります。
ブランド初期の段階では、最新テクノロジーとアナログ現場を橋渡しする“ハイブリッドな現場マネジメント”を意識しましょう。

IoTやAI技術を活用した生産管理は、量産OEMでは大きな効果がありますが、小ロットや初回生産では「最終的に現場で手を動かす人」の意見を直接聞くこと。
また、定期的な現場訪問や現物サンプル確認、柔軟な仕様変更対応など、臨機応変なコミュニケーションが成功の鍵になります。

OEMパーカー生産フローまとめ:成功のポイント

– 企画・仕様設計を丁寧に行い、書面で明確に伝える
– サプライヤーの選定は値段だけでなく品質・柔軟性・トラブル時の対応力も見る
– サンプル段階で妥協せず、合意した内容を必ずエビデンス化
– アナログ現場に合った進捗&品質管理手法を設計する
– 問題発生時は3現主義(現場・現物・現実)で原因を特定し、再発防止
特にブランド立ち上げ初期は、現場との信頼関係構築や、スモールスタートでPDCAをまわすことが大切です。
決して「安易な丸投げ」「安値勝負」には走らず、現場を尊重しつつ、理想のOEMパーカー生産体制を育てていきましょう。

おわりに:製造業流バイヤーの心得

OEMパーカーの生産に挑む際は、価格やデザインだけでなく「現場でどんな人が、どんな想いでモノづくりをしているのか」をぜひ知ってほしいです。
アナログで泥臭い現場も、積み重ねてきたノウハウや技術があります。
自らも現場に足を運び、相手の立場や実情を理解したうえで、共創していくこと。
バイヤーにもサプライヤーにも「選ばれる存在」として成長していく姿勢こそ、すべての製造業の持続的発展につながります。

OEMによるパーカー生産を通じて、ぜひものづくり現場との深いつながりと新しい価値創造への一歩を踏み出してください。

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