投稿日:2025年8月31日

返送・RMA貨物の輸入税還付(ドローバック等)で損失を取り戻す実務

返送・RMA貨物の輸入税還付(ドローバック等)で損失を取り戻す実務とは

はじめに 〜製造業現場の「損失回避」の現実〜

製造業の現場では、不良品や修理対応のため、完成品や部品を仕入れ先や海外拠点から返送(RMA:Return Merchandise Authorization)しなければならない場面が必ず発生します。

商流がグローバル化された今、こうしたRMA貨物の取り扱いは珍しい話ではありませんが、ここには「二重課税」や「余計な税負担」という落とし穴が潜んでいます。

特に、知らずに損失を被っているのが「輸入時に支払った関税や消費税の還付手続き」です。

現場担当者のみならず、調達バイヤーやサプライヤー、経理・税務担当者にとってもこの実務知識は、収益改善やコスト最適化に直結します。

この記事では、製造業の現場で気付きにくい「返送・RMA貨物の輸入税還付(ドローバック制度など)」について、業界のアナログ体質事情や実際の手続き事例も踏まえ、現場目線で実践的・かつSEO観点でも押さえるべきポイントを徹底解説いたします。

製造業の「損失」──なぜ返送貨物で無駄な費用が発生するのか?

海外取引が増えるほど頻繁に生まれる“損失”

製造業で働いていると、「海外から輸入した部品に不具合があり返品」「完成品を顧客から修理のため返送してもらう」など、あらゆる場面で“製品の返送”が起こります。

特に半導体や自動車部品のように精度が要求される分野では、こうしたケースは日常茶飯事です。

ところが、実際に現場で生じている損失は想像以上に深刻です。

多くの会社で、「返品貨物の輸入時に支払った税金が、そのままコストになってしまっている」現実があります。

二重課税・不要コストのメカニズム

たとえば中国から電子部品を日本に輸入した際、通常、関税や消費税が掛かります。

不良品が判明し、メーカー(中国)に返送する場合、本来なら「使っていない商品」なので、最終的な消費は発生していません。

しかし、還付申請しなければ「輸入時支払った関税」がそのまま損失となり、全て会社側の持ち出しです。

さらに、現場担当は「返品」「再輸出」だけで手一杯になりがちで、税金の還付請求にまで手が回っていないケースがたくさんあります。

この損失こそ、「アナログ体質」で根強く残る業界の課題といえるでしょう。

製造業の現場が見落としがちな「還付」可能性

実は受けられる・・・「ドローバック」制度とは?

返送貨物に関する関税の還付制度の代表例が「ドローバック(Drawback)」です。

これは、「一度輸入した後、一定期間内に国外に返送した場合、輸入時に支払った関税分を返金する」という国際的な制度です。

日本でも関税法第53条に規定されており、正しく申請すれば支払い済み関税が(全額または一部)返金されます。

適用範囲は幅広く、不良品・返品・修理後再輸出品などのほか、完成品への加工後でも一定条件で認められます。

なぜ手続きされない? 3つの理由

現場経験から断言できますが、ほとんどの工場やサプライヤーで、この還付制度は「見過ごされています」。

主な理由は三つです。

  1. 現場担当者が「輸入=コスト」と思い込み、還付可能性に気づかない
  2. 手続きが煩雑(書類・証憑の整理、輸出記録・内容要件の確認など)が敬遠されがち
  3. 経理や調達部門と現場・物流部門の情報共有が不十分

たとえば、返品貨物の還付手続きをしたいのに、「税関から証明書を出してくれと言われて諦めた」「輸出と輸入のタイムスタンプが揃わず断念した」など、理由はさまざまです。

しかし、数十万円〜数百万円単位のコストが毎年消えているとすれば、見過ごすのは大きな損失です。

輸入税還付(ドローバック)の実務フロー

1. 対象貨物を明確化する

まずは「どの返送品が還付対象か」を正確につかむことが重要です。

輸入した品目・数量・日付・支払った関税金額を記録した上で、返送(再輸出)した品が「そのまま」「加工後」どの範囲まで還付対象になるのかを特定します。

一部品目だけ再輸出の場合などは、対応する仕入伝票・通関記録が必要です。

2. 輸出記録・証憑の整理

再輸出(返送)時には、「仕向国」「内容物」「輸出日」「送り先」などを明記したインボイス、通関記録や船積み書類(B/L、AWB等)を漏れなく保管しましょう。

これらの書類が揃わないと、還付申請が弾かれてしまうため、物流・調達・経理の3部門での連携がカギです。

現場のアナログ管理では、紙でバラバラ保管されていて後から探索困難な場合が多いため、システム化・台帳管理を推進しましょう。

3. 税関・関係機関への申請

還付申請は、輸出実績・インボイス・関税納付証明などを一式揃え、納付から6ヶ月以内に税関へ行う必要があります。

電子申請も普及していますが、証憑の不備が多いため、必ず「事前相談」を税関窓口でしておくとスムーズです。

不明点は通関業者や貿易コンサルにも相談し、制度要件を確認しましょう。

ドローバック以外の還付制度にも注目

1. 消費税の還付

輸入時には消費税も支払っています。

再輸出した場合、販売が国内で行われていないため、消費税法にもとづき「免税売上」とみなされ、申告することで消費税の還付対象となります。

2. 原材料控除・加工品への還付

輸入原材料を国内で加工し、完成品の一部として再び海外に出荷した場合でも、要件次第で還付が認められる場合があります。

いわゆる「関税の内容要件(同一性証明)」の証憑が必要ですが、SCMツールやバーコード管理での台帳運用があれば、こうした制度活用も十分現実的です。

3. その他特殊制度

AEO認定企業に対する特例措置や、FTA/EPAに基づく再輸出優遇、航空貨物特例なども組み合わせれば、グローバル生産・調達の現場ではコスト改善が可能です。

アナログ商慣習から脱却する製造業のヒント

紙・属人作業から「チーム化」「システム化」へ

昭和から続く多くの製造企業では、現場担当による「紙ベースの管理」が主流です。

「この手続きは○○さんに聞くしかない」「書類は○号ファイル」といった属人的な管理が温存されており、制度変更やメンバー交代でノウハウが消滅するリスクが絶えません。

ですので、還付対応チームを立ち上げ、「輸出入案件ごとの管理台帳」を共有管理することをオススメします。

また、ITツール(Excelや簡易SCM)による書類・証憑の一元管理も強力な武器です。

バイヤー・サプライヤー間の業務連携が明暗を分ける

返送・RMA貨物は、バイヤー(調達側)だけが情報を持っていても十分ではありません。

サプライヤー側も、「何が、どこから、どこへ返送されているか」の情報を把握し、場合によっては「日本側の還付申請」に協力する姿勢が大切です。

グローバル取引が主流になる中、各国税関・税法の変化や輸出入ルールの見直しは日々行われています。

そのため、常に「現場情報」と「税務・通関ルール」の両面を意識した連携体制をつくることが、再現性のある還付業務の実現に直結します。

最後に─現場で失われ続ける「余剰コスト」を見直そう

還付申請は地道な改善の第一歩

返送・RMA貨物の輸入税還付は、日々の現場対応からみると一手間増える仕事に思えます。

しかし、この地道な取り組みが「無駄な損失」を減らし、現場・経営双方に利益をもたらします。

特に、グローバル調達・海外展開の広がりと共に、こうした損失管理の重要性は年々高まっています。

明日から現場で生かせるチェックリスト

  • 返送貨物の「輸入税・関税・消費税」納付履歴を必ず台帳化
  • 輸出時インボイスや通関書類は、6ヶ月以上一元保管
  • 税関HP等で最新の還付要件・提出期限を随時チェック
  • 調達/物流/経理/現場担当で「還付対応チーム」を整備し、ノウハウを現場に共有

まとめ

昭和型のアナログ管理から脱却し、「損失を利得に変える」ためには、返送・RMA貨物の還付制度を正しく押さえ、「見える化」「仕組み化」そして「チーム化」することが近道です。

グローバル化が進む今だからこそ、現場が主導し小さな損失も見逃さない姿勢が、製造業の真の競争力となるのです。

バイヤー志望の方、サプライヤーの皆さんも、新しい発想(ラテラルシンキング)で“明日のコスト管理”に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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